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「わかったら、手を洗って来てください!!しっかり手を洗ったら、リビングのテーブルの上をそちらの台拭きで拭いていただけたらとっても助かります」
「……ハイ」
ぽかんと立ち尽くしておられた美山さんを追い立てた後、再び加熱ボタンを押して調理再開。
まったくけしからん!
パンで済ますなど…パンって…パンって…パンはどちらかと言ったらおやつ的存在じゃないですか!!
しかし、いつまでもピリピリしていられない。
料理にはその時の己の状態が見事に現れる。
落ち着いて、集中しなくては。
深呼吸をして。
再び温まったフライパンの上に、卵を二つ落として、半熟の目玉焼きを作った。
すぐに焼き上がった、黄身の盛り上がったピカピカの目玉焼きを小皿にあけた。
フライパンをそのまま戻し、今度はタレによく漬けこんでおいた豚肉を広げて並べた。
目玉焼きを焼いた後の油の残りと、豚肉から自然に脂が出てくるから、新しく油はひかなくてだいじょうぶ。
焼いてるスキに、冷水に放しておいたキャベツの水切りをして、すっかり火の通った玉ねぎとじゃがいもの鍋の加熱を切り、合わせ味噌を溶き入れた。
焼けてきた豚肉を裏返し、バットに残っていたタレをかけ、加熱を「弱」に切り替え煮詰めた。
水切りしておいた小松菜と人参ともやしを、そっと手で絞りながらボウルに入れ、塩とごま油で味つけして馴染ませ、大量にできたその半量だけに酢を足して、味を整えた。
さぁ、ラストスパート!!
そうこうしている内に炊きあがったごはんを、しゃもじで底からゆっくりと混ぜ、蓋を閉めて蒸らす。
丼と味噌汁碗と小皿を二つずつ用意し、空いた道具は全部洗う。
お、豚肉も完成だ!
美山さんも戻って来られ、ウロウロと彷徨っていらっしゃる。
「……テーブル、」
「あ、拭いていただけましたか」
「あぁ」
「ありがとうございます!俺が怪我させてしまったお手はだいじょうぶですか…?」
「手…?あー、全く問題ない」
「よかったですー!えっとじゃあ、更にお手数おかけして恐縮ですが、このお皿を並べて来ていただけませんか。軽いのでお手の負担にはならないと思うのですが…」
「ハイ」
「はい、よろしくお願いしますね」
「ハイ」
助かるなぁ。
ぎこちないながらも、ちゃんと動いてくださる美山さんを、頼もしく見守りながら盛りつけに取りかかった。
丼ふたつにごはんをふんわりよそい、キャベツを敷き詰め、その上にタレごと豚肉をのせる。
目玉焼きをトッピングして、一味を振って完成!
お味噌汁を入れ、ほうじ茶と箸の用意をして、美山さんと手分けして運んだ。
すべての調理道具を洗って、終了!!
ん〜〜〜気分爽快!!
テーブルに運び終わって、けれど、ウロウロと彷徨っていらっしゃる美山さんに笑いかけ、座りましょうかと促した。
流石にソファーに並んで腰かけるのは変だし、俺は部屋から椅子を運んで来て、そこへ座った。
「手伝ってくださって助かりました!ありがとうございます!」
「…いや…ハイ」
「では、冷めない内に…いただきます!!」
「ハイ。……イタダキマス……」
手を合わせて、夕食スタート。
本日のメニューは、たっぷりキャベツと豚肉の生姜焼き風丼、あっさりナムル、玉ねぎとじゃがいもの味噌汁。
美山さん、食べてくださるかな…?!
2010-05-03 22:47筆[ 47/761 ][*prev] [next#]
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