100.親衛隊員日記/心春日和vol.7
心の中はため息だらけ…
これが恋の悩みに因るものならば、悩む程に美しく綺麗に可愛さ倍増なんだけど。
柾様の事を想わない日など有り得ない、でも生憎この頃は同時進行で、別件の悩みが存在感を増している。
いつの間にチャイムが鳴ったんだろう、業田先生が入室されて、朝のHRが始まった。
この合原心春たる者、教室如きで隙を見せるワケにいかないからね。
毅然と教卓に注目して、先生の話を聞いてます!というフリをしながら。
おのずと意識は後方へ流れて行く。
有り得ないよ。
僕の心は、柾様ただ御1人だけのもの。
僕の心の中に存在して良いのは、四六時中考えるべきなのは柾様の事だけ。
幼等部の頃から、ずうっと。
柾様さえ居れば、心春は幸せ。
来るラッブラブな未来予想図を想い描くだけで、想いの成就日を指折り数えてみるだけで、此所で生きて行く覚悟なんて容易に保てた。
障害や苦難は、多ければ多い程良い。
だって人は、簡単に幸せになれないじゃない?
生まれる前から幸福を約束され、恵まれた環境に育ち、何もかもから愛されて、何をやっても望み通り上手く行く、永遠に絶えない笑顔のまま生涯を閉じる…
そんな苦労知らずの王子様お姫様なんて、本当は世界の何処にも存在しないじゃない。
次々と容易に安楽への道が開けた時は、要注意なんだ。
大どんでん返しが待ち受けているものなんだ。
そう決まってる。
いきなり訪れた大きな幸福のすぐ背後には、悲惨な不幸が待っているって。
何の苦労も知らない人間が、笑って生き続けられるハズなんかないんだって。
それはもう、ガキの頃から、此所でも外の社会でも散々目にして来た、聞かされて来た、絶対的な人生の法則だ。
だから僕は、最愛の柾様との恋の試練を、全て甘んじて受け入れられる。
あれだけ全てにおいてハイレベル、パーフェクトな柾様と結ばれてしまうんだよ?
今の今迄、学園内でも社交界でも浮き名を流した事がない、身持ちの固い御方と、だよ?
(まぁ、その辺が唯一の懸念っちゃー懸念だけどね!良いの、心春はとっくに覚悟決めてる…柾様が童貞だってEDだって何のその、全然問題ナッシング!メスしかお好みじゃなかったとしても、心春のこの可憐な美貌と莫大な愛情と小悪魔セックスアピールで「お前だけは特別…」って言わせてみせるから!!)
何だってオッケーカモンだっつーの!!
柾様とのハッピーライフの為なら、何も恐れるに足らん!!
正直、あの微少年が何しようと、今更動じない。
あんな微少年如き、これまでくぐり抜けて来た数々の修羅場に比べれば、ひたすら鬱陶しい蚊と同じ。
何も怖くない。
気色悪い変装の下がビミョーなルックスだったと判明した事が、何よりの強み。
もっと怖い目に遭って来たんだから…
大変だったんだからね!!
此所で問題起こしてくれりゃ、上手く行けばコイツは退学扱いになるかも知れない。
そうなったらラッキーと想って、わざと神経に障る様に刺激してやった、そしたらノって来たのに。
どうして僕を悩ませるの、前陽大。
柾様と急接近中の要注意人物が、何でお母さんなの…?
良い奴だから。
何か、前陽大が困ってたら放っておけない。
子犬がしょぼくれたみたいな顔を見たら、身体が勝手に動いてしまう。
外部生だから守ってやんなきゃ、庇ってやんなきゃって。
誰にも壊させたくない。
前陽大だけは、こんな学園に染まらず、キレイなままで居て欲しい。
だってあいつの笑顔を見ると、何故かホッとするんだもの。
元気だったらこっちまで元気になる。
前陽大は、あったかいから。
まっすぐで歪んでない。
柾様に少し似てる、から…?
だからこんなに気になるの?
家柄は勿論、容姿も性格も何もかも異なっている、正反対の世界に居るのにも関わらず、似ている所があるから不安になる?
取り立てて特別に仲が良い様には見えない、昨日は柾様が前陽大を好き勝手虐げていらっしゃる様にさえ見えた。
それなのに、安心できない。
何故?
前陽大にはそれこそ普通の平穏な人生が似合う、華やかな柾様とは全く異なる人間なのに。
だけど、離れようとは想えない。
前陽大なら、僕の今迄の苦労をわかってくれるんじゃないか。
この恋を応援してくれたら良いのにって、つい願ってしまう。
2兎を追う者は、1兎をも得られないって、僕は知っているのに。
2011-11-12 23:17筆[ 438/761 ][*prev] [next#]
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