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トンチンカンよしこちゃんたちは育ち盛りで、食べっぷりが威勢よくって、見ていて気持ちがいい。
この子たちも仁たちお兄ちゃんの躾が徹底して、とってもお行儀いいけれども、十八学園で知り合った皆さんが特別お上品さんなのだろう、なんて言うのかな…
4人共、男の子!!って感じ?
ワイルド!!って感じ?
外の世界で遊んだり、腕白っぷりを発揮しているからなのかな。
男の子ってこうじゃなくっちゃあね!って感じ!
無論、きちんとした所作で召し上がって頂けるのも、大変有り難くってうれしい。
でも俺のごはんって、ほんとうにふつうのお家ごはんだから、なんだか恐縮してしまう。
「「「「お母さん、おかわりー!」」」」
「はいはい、そんなに慌てなくっても大丈夫だから!まだたくさんありますよ、順番ね。こらっ、無言で牽制し合わないの!大人しくしてたらいいんだって想ってるんでしょう?!俺の目はごまかされないんですからね!仲よくしなさい、大事な仲間でしょう?」
「「「「はぁい!やっぱりお母さんには敵わないや!」」」」
照れ笑いしているひとりひとりの飯椀を、順に受け取ってごはんをよそいながら、つい頬は緩みっぱなしになってしまう。
元気いっぱいで食欲旺盛なこの子たちを見ていると、俺までつられて元気倍増する。
次に一緒に食べる時は、どんなごはんがいいかなあって、わくわく考えてしまう。
武士道や秀平たちの食事風景は、俺のひとつの理想の形かも知れない。
将来のお店も、こんなふうににぎやかでアットホームな空間にしたいなぁって。
たのしくごはんを食べて頂いて、ごちそうさまー!って明るい笑顔で帰ってもらえたら。
一方で、静かに食事を楽しみたい方々もゆっくりできて、食べ終わったらちょっとでも元気になって頂けるような。
ゆったりと、穏やかな空気が流れるお店を作りたい。
食べることは絶対に必要なことだから、必要不可欠な日常のことこそ、たのしくできたらいいなって想うんだ。
「…お母さん…こぼしちゃった…」
「「「キヒヒっ」」」
「…ん?あらあら、カンちゃんったら…こらっ、他の皆だってうっかりしちゃうことあるでしょ?人の失敗を笑わないの!カンちゃん、大丈夫ですよ。このドイツ生まれの天然洗剤さまの力で、どんなシミもたちどころに消えますからね!やっぱり洗剤はドイツだねぇ!ほうら、もう消えた!」
「「「「おおー…!(お母さんのドヤ顔、可愛いな〜)」」」」
にぎやかな食後は、あったかいほうじ茶と、ミニどら焼きの更にミニミニサイズをお茶うけに、皆でほっと一息。
まったりしたところで連携プレーで手早く片付け、出かける用意をして立ち上がった。
「「「「お母さん、ごちそうさまでしたー!」」」」
「どういたしまして!こちらこそ助かりました。たくさん食べてくれてありがとうね」
あれがおいしかった、これもおいしかったと、口々に一生懸命伝えてくれる感想に耳を傾けながら、玄関へ向かった。
「?よしこちゃん、どうしたの。忘れものか何か?」
ふと足を止めて、お部屋を見ているよしこちゃんに声をかけた。
「いや、大した事じゃないんですけど。副長の部屋にしては、隅々までキレーに片付いてるなと想いまして」
「「「あー、俺だって想ったー!」」」
まあ、武士道ならそう想うよねぇ…
一成は不衛生を嫌うし、お洒落にはこだわるけど、基本的に片付けない人だからねぇ…出したら出しっぱなし、自分の手の届く範囲に必要なものを並べておきたいようだ。
「この俺が曲がりなりにもかりそめの同居人と言え、いっしょに暮らしているんだよ…?片づかないわけないでしょう?」
にっこり笑うと、4人共すぐ納得したみたいだった。
「「「「いいな〜総長と副長はお母さんと一緒で…」」」」
廊下に出ながら、ぶーぶー膨れる4人に苦笑した。
「そう言えば、皆はどこのお部屋にいるの?」
一般寮かなと想ったら、違うと言われた。
「俺らはねー、このすぐ下の階だよ!」
「3大勢力の幹部クラスは皆この下だよ」
「生徒会と風紀も一緒なのがイヤ〜」
「ま、殆ど十八版ホームに居ますが」
あらまあ、すぐ下の階に皆いたんだー!
「「「「基本、正当な理由がない限り、最上階には上がって来れないけど」」」」
なんと、特別寮さんという荘厳なお名前に恥じない、複雑な事情があるようだ…
ほんとうに俺などがここにいていいものだろうか、改めて背中が寒くなった。
それよりもと、エレベーターホールへ向かいながら、皆のお顔がきりっと引き締まった。
「「「「お母さん…今日から俺達とお母さん、敵同士になっちゃったから…」」」」
え?!
2011-11-05 23:25筆[ 431/761 ][*prev] [next#]
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