92.にぎやかなほうが好き


 ―ココココンコンコンコン!―

 来た…!

 「…合い言葉をどうぞ…?『ヒロさんの初恋は』?」
 「「「「『18才の時、伝説の不良・龍司(りゅうじ)のツレに一目惚れ』…キヒヒ!」」」」
 「こら、笑わないの!『結果は』?」
 「「「「『告る前にツレに殴り飛ばされて惨敗』…ぷぷっ」」」」
 「正解〜!おはよう、トンちゃん、チンちゃん、カンちゃん、よしこちゃん!」
 「「「「わーい、お母さんだ〜!おはよ〜!」」」」

 扉を大きく開けたら、わあっと皆がなだれこんで来た。
 「わざわざごめんね。俺は1人で大丈夫だって言ったんだけど…あなたたちのお兄ちゃん方は頑固で心配性過ぎますねぇ」
 ふうとため息を吐いたら、4人揃ってぶんぶんと首を横に振られた。
 「「「「俺らもお母さんの事、心配〜!だからいいの。送り迎え大好きだからいいの!(勿論お母さん限定だぜ…?)」」」」
 「まぁ…お兄ちゃんたちが心配性なら、皆お揃いで心配性なんだねぇ…俺ってそんなに頼りないかなぁ。だいぶ十八学園の地理も理解しているのに」

 「「「「(そういう問題じゃねーんだけどな…)いいの、いいの。お母さんの事は武士道が守りたいから(他の連中に奪られて堪るかっての!)」」」」
 「え〜?とりあえず、さっきの合い言葉はいい加減変えたほうがいいと想うんだけどなぁ」
 「「「「いいの、いいの。だって面白…いや、他の言葉なんか今更覚えられないんだもの」」」」
 「…今、『面白いから』って言おうとしなかった?」
 「「「「………ゲフンゲフン、言わないヨ!」」」」

 「…そもそもさっきから、なんだか含みあるお話の仕方じゃない?」
 「「「「………ピュ〜ピュ〜」」」」 
 っく、俺が口笛吹けないって知ってて、この子たちは…!
 「あなたたちねぇ…大体、そのお顔は何ですか?!」
 「「「「えっ…!(お母さんと一緒に登校出来るからって、はりきってめかして来たのに何か変?!)」」」」
 「そのお顔は寝てないお顔!ごはんをちゃんと食べてないお顔!よって疲れが滲み出てるお顔!」

 しまった!とばかりに、各々の顔にペタペタ触れているトンチンカンよしこちゃんたち、もうその焦りっぷりで認めたも同然じゃないですか。
 「俺の目をごまかせると想ったの?!下界のホームにいようとも、十八学園にいようとも、俺の目があなたたちの不摂生を見極めないわけがないでしょうが!」
 「「「「はい…ごめんなさいでした…」」」」
 やれやれ、しょうがないねぇ。
 しょんぼり項垂れる4人に、リビング方面を指し示した。

 「早く迎えに来てくれたから、まだ時間はあるし…ありあわせだけど朝ごはんあるよ。もしあなたたちに他に用事がないなら食べて行く?」
 そう言った途端、あんなにしょぼくれていた4人のお顔が輝き始めた。
 お可愛らしいけれども、食べものにホイホイ釣られやすいこの子たちの未来が、俺はなんだか心配です。(作者注:陽大限定だから問題ないです)
 「あ、でも…」
 「副長の部屋だから…」
 「勝手に上がれない…」
 「食べたいけど…」

 おお、親しき仲にも礼儀あり、ちゃんと実践できるこの子たちは偉いなぁ。(作者注:4人共、一成が怖いだけです)
 「大丈夫!あらかじめ2人には了解もらってるから。今日だけじゃなくて、トンチンカンよしこちゃんたちにはいつもお世話になってるものね。大したものはないけど、朝ごはん食べて行って!と言うか朝ごはんとお弁当、作り過ぎちゃってねぇ…食べてもらえると助かるのです」
 「「「「お母さん…!」」」」

 「さ、上がって上がってー。なーんちゃって、俺もしがない同居人だけどね」
 「「「「お母さん、可愛…じゃなくて、それではお言葉に甘えてお邪魔しまーす」」」」
 「どうぞ〜すぐ特製はるとボール入りスープ温めるから、適当に座って待っててね」
 「「「「はるとボール入り…!ゴクリっ」」」」
 早朝から3大勢力関連で集まりがあるからって、大忙しの仁と一成を送り出した後、広過ぎる部屋は静かで、どこか心細かったのだけれど。
 4人のお陰で、あっと言う間にこのにぎやかな空気、ほんとうに安心するなぁ…

 十八学園に来てから、ひとりになると、ちいさな頃みたいに不安を感じるようになっている。

 いつも武士道が側にいてくれるし、他の皆さんもいらっしゃるから、すっかり大勢に囲まれた生活に馴染んでしまったのかも。
 おかしいな、お留守番は得意な筈なんだけれどねぇ。 
 たっぷり作り過ぎてしまったスープを温めながら、今頃3大勢力の皆さんはミーティング中で、だったら時間的にも召し上がって頂けなかったかなと。
 無謀なことはするものじゃないなぁと、苦笑が浮かんだ。
 却ってご迷惑になったかも知れない、申し訳ない限りです。
 
 「はいはい、お待たせー!」
 「「「「わー、いい匂い!」」」」
 俺はやっぱり、特定の1人に対するよりも、大勢の中でわいわいするのが好きだ。

 

 2011-11-04 23:56筆


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