89.金いろ狼ちゃんの武士道(3)


 う〜ん、なんっか腑にオチねーんだよな〜。
 ちょこまか動いて、朝メシの用意に没頭してるはるとを手伝いつつ。
 一成に悟られねー様に、さっきから俺は首を捻り続けている。
 ま、一成の事は気にしないでいーだろ。
 ヤツは極度の低血圧(世間では寝起き悪ぃのは低血圧の所為じゃねーって説が出回ってっけど、ガチなんだかどうなんだか)、加えて昨夜は楽しくもない集いに拘束され続けた、その疲労が回復しない内に後1時間もしたら再集合、という体育祭鬼進行。

 はるとに俺共々叩き起こされ、身支度まで終わったものの、未だソファーに転がって突っ伏してやがる。
 いきなり喧嘩勃発したり、はるとの身に何か起こらん限り、意識朦朧の超不機嫌状態は解消されねーだろう。
 朝メシは這ってでも食うだろうが。
 一成の朝を知ってるはるとも、起こすだけ起こして後は放置してる。
 俺もどっちかってーと遅寝遅起き派だけど。
 ヤツ程酷くない上、今朝は気になる事があって、結構目は冴えてる。

 いつもと変わんねー元気なはると。
 変わんねーけど、何かおかしい。
 嫌なカンジじゃねーけど、妙に気にかかる。
 昨夜から、ずっとだ。
 全体の打ち合わせが終わった後、遅くなるってメールしてから、3大勢力の隠れ家へ行った。
 何とか帰って来たら、とっくに寝てる筈のはるとは、笑顔で迎えてくれた。
 1度仮眠して待っててくれたらしい。

 感動しながら何で俺だけに向けられる笑顔じゃねーんだ、何でコイツまで一緒に居るんだと想いつつ(ま、一成もそう想ってただろーけどよ)、あったけーメシ食って(天晴親子丼…!)、一服して、ここまでは良かった。
 とうに半分寝かけのはるとを筆頭に、一成、俺の順に風呂入って。
 目ぇショボショボのはるとが上がって来て、一成が入ってる時、もう良いから寝てろって寝室へ連れてった。 
 その時、ふいにはるとが疑問を振ってきた。

 『仁〜…そう言えば〜他の3大勢力の皆さんも、このフロアのどこかにお部屋があるんですにゃ〜?…ふにあぁ…』
 『ん〜?あ〜、そう言やぁ部屋の配置、まともに話してなかったよな。この特寮最上階に各代表上位2名迄揃ってんだ。まともに裏の3大勢力勢揃いってヤツ?また近い内に話すけどさ』
 『なるほろ〜…すご〜にあぁ…』
 『ククク、はると、すげぇ欠伸!猫混じってて面白ぇ!俺独り占め、ラッキー!』
 『ふにに…』

 『面白ぇと言えば、昴の部屋だな〜生徒会長は重責だっつーんで、俺らの部屋が並んでる反対側の棟あるだろ。あっち全面、昴の部屋なんだぜ〜。今度見てみな、本来何戸か並んでる壁の中央に、どーん!と扉が1つだけ付いてっから』
 『それは見物ですにゃ〜…にゃむにゃむ…先輩め…覚悟にゃさい…にゃむ…』
 それきり眠りこけたはるとに、かわいーな〜一成なんか風呂で溺れて永遠に戻って来んなとか想いつつ、頭を撫でて上掛けを掛けた。

 殆ど寝言状態の、『先輩め…覚悟にゃさい…』は妙に耳に残ったが、大して気にせずはるとの隣へ潜った。
 そして、俺らの予定を熟知しているはるとに因って、朝5時前に叩き起こされるまで快眠を貪って、今に至るんだが。
 ぼ〜っとしながら用意して、キッチンへ来て、目が覚めた。
 何時に起きたんだか、はるとの事だから昨日から仕込みは万全だったんだろーけど、朝メシも弁当も殆ど出来上がっていた。

 何よりも、カウンターの上に置かれた、特寮自販限定「ホカホカ・スイート!ベルギー産チョコレート使用・とっておきチョコレートドリンク」に驚いた。
 いつの間に買って来た?
 触れると熱い、明らか今買って来たばっかの缶入りドリンクに、妙に落ち着かねー気分になった。
 はるとに聞いたら、食事の仕度をする内に甘い物が飲みたくなり、俺らを起こす前にずっと目をつけていたコレを買いに出たらしい。

 勝手に出た事を詫びるはるとに、こんな朝っぱらから誰も行動しねーし、ましてここは特寮の最上階だと、笑って話は終わったが…
 何も不審な点が見つからない、ちょっとした事だけに、何故か余計に引っ掛かるものがある。
 ミステリーとか、よくある話じゃね?
 はるとが甘いもん好きなのは知ってる。
 食い物に対して人並み以上に好奇心強ぇのも、知らない場所を探検したがるのも、よく知ってる。

 1年中ほぼ毎日、明け方に起きてさっさと寝る、キチンとした生活が身に着いてんのも。
 けど、何でこんなに引っ掛かんだ。
 はるとボール入り野菜たっぷりスープも、炊きたてのメシで握られた数々のおにぎりも、はると特製の卵焼きもたこウィンナーも、その他の細々としたおかずも、全部美味そうに並んでんのに。
 「………仁さん…?さっきから獲物を狙う獣の目でウロチョロなさってますけど…?貴方にあげるものは何もありません!」

 はっと気づいた時には、まるきり疑いの眼差しのはるとに背後を取られていた。
 「え、ちょ、はるとさん…!ひっで〜」
 いや、そりゃ多少の下心はあるけど!
 はるとに断りなく何かつまみ食いしてやれとか、トンチンカンじゃあるまいし!
 俺はさっきからはるとの心配しかしてねーっつの。
 「さってと!お弁当も包み終わったし〜朝ごはんはホカホカだし〜仁さん、いつまでも寝惚けてる一成さんを起こして来てくださる?」
 「………はぁい…」

 俺を警戒しながらも、鼻歌混じりに弁当を袋へ入れるはるとに、ガックリしてたら。
 「と想ったけどー!サプラ〜イズ!一成さんの分までお手伝いしてくれた、仁にだけ特別ご褒美だよー。今日のお弁当のおまけ、ミニドラ焼きサクランボクリームだよー!」
 「はるとさん…!いや、はると様…!」
 「ふふふ、大急ぎでパクッと食べちゃってね。で、早く一成さん起こして来ちゃって。あなた達、朝からお仕事なんだから急がないとね」
 「はい!」

 うっは〜マジ至福!
 俺、低血圧じゃなくて良かった〜!!
 美味い美味い手作りおやつを急いで堪能しながら、鼻歌を再開してスープを碗によそってるはるとを、横目で窺った。
 今日の弁当、デザート付きって…超嬉しいけど、何か…何で?
 つかはると、若干ハイだよな〜…?

 一成に知れたら厄介だ、今朝の件は全て俺の胸に仕舞って、ドラ焼きは既に食道通過中だし問題ねぇ、ちょっとはるとの動向に気をつけておくとするかね…。



 2011-11-01 23:32筆


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