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 先ずは、窓にカーテン!
 遮光用の薄いカーテンと、清水の舞台から落下する心持ちで貯金を崩し購入した、生成りのベルギーリネンのカーテンを掛けた。 
 やっぱりフンパツしてよかったですねえ。
 リネンを透けて通る光のやわらかさ、風を受けてひらめく姿に、頬が緩む。
 こちらへ来てから、俺の頬は、重力に逆らうことを放棄して緩んでばっかりだ。
 部屋の雰囲気とピッタリ合ったカーテンを、しばらく眺めた。

 それから、ひたすら段ボール崩し。
 クローゼットに服や靴、すぐに使わない私物を収納して、制服は明日、早速必要だからハンガーにかけて扉の前へ吊るした。
 机付近には文房具やCDや本類(大半が料理やインテリア、ライフスタイルに関する、何度読み返しても飽きない宝物の本たち・厳選もの)を収納。
 教科書や資料関連は明日配布されるらしい、そのスペースは十分に空けておいた。
  あらかたの荷物を片づけてから、段ボールをキレイにたたんでまとめて、落ちた埃をホウキで履いて集めた。

 それからウエスを使って、しっかりとていねいに床を水拭きし、更に乾拭きした。
 再びキレイになった床の上、生成りのラグと、鮮やかなブルー地がベースのキリムを、ベッドスペースと机スペースに分けて敷いた。
 続いてベッド。
 備え付けのマットレスの上に、ベッドパッド、十八さんと母さんが以前プレゼントしてくれた、空色のリネンシーツと同じカバーの上掛けと枕、生成りのコットンブランケットをセット。
 自分の私物が着々と収まっていく部屋は、どんどん、馴染み深くなってきて。

 ものすごい、愛着が湧き上がってきた。
 それまで他人の顔だったそっけない空気が、ずっと一緒に過ごしてきた家族のように、親しみやすく変わった、そんな感じ。
 せっせと片付けを進める内、気づいたら窓の外はすっかり夕方の様相を帯びていた。
 慌てて顔を上げ、夕方の眺めを満喫するべく、窓辺へ近寄った。
 淡いオレンジ色の光に照らされた、「学校」という名前の立派な街並み(と言っていいでしょう)が、優しく目に映る。

 静かだ。
 他の生徒さんたちは、まだ戻っておられないのだろうか。
 お昼頃と変わらず、街には人の気配がない。
 やわらかな景色をひとしきり堪能した後、ふと携帯を見て、今日はここまでだなぁと息を吐いた。
 雑貨やら細かい所は、やっぱり週末に回そう。
 このまま片付けを進行していたら、あっと言う間に夜になり、気づけば朝日が昇っていた、というパターンに陥り兼ねない。

 大体片付いたことに満足し、細かなものが入った段ボールは開けずにクローゼットへ収めた。
 カーテンを閉め、窓も閉めた。
 さて、と!

 お次はいよいよ、今日の大本命、キッチンさまだ。

 でも、キッチンの細かい収納も週末に回さなければ。
 美山さんと相談しながら、俺のスペースを決めさせていただいたほうがいいだろうし。
 とりあえず、今晩の献立と必要な道具や食器を、あらかじめ決めて持って来ている。
 その荷物だけ抱えて、俺は部屋を出ようとした、けれど、出入り口でまた振り返って。
 完成間近の自室を眺め、へらへらした後、やっと部屋を出た。



 2010-04-30 22:46筆


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