73.では、チーム一丸となる為に〜
ぽわぽわっとしたまんま、机を窓側や廊下側にざっと寄せて、中央を空けて3方にぐるりと立ち、教卓に注目する形でお話し合いが始まった。
教卓には先生方、一舎さんたち体育実行委員さんが立って、司会進行を務めてくださった。
学年毎に分かれて立つと想いきや、さすが皆さま、幼稚園の頃からずっとご一緒だけあって、それぞれ顔見知りさん同士で固まっていらっしゃるようだ。
大介さんはバスケ部の先輩さんと思しき方々と、合原さんは親衛隊さん関連だろうか、どちらの皆さんも親し気にお声を交わしていらっしゃる。
ちょっぴり、羨ましい…
いいなぁ、長いお付き合いって、幼馴染みって、いいよねぇ。
そりゃあいろいろあるけれども、いろいろあったからこそ今があるわけで、絆も深いわけで。
俺も、ひーちゃんと同じチームだったらなぁ…
幼馴染みの如き旧知の仲とまで想える、武士道の皆が一緒だったらなぁ…
更に言うなら、秀平たちが一緒だったら、もんのすごい気合いと結束固めて優勝狙うところだ。
なーんてね、無いものねだりな空想はストップ、ストップ!
今はここにいるんだから。
今いる場所を、大切にしなくてはね。
俺ったら大幸運なことに、クラスの皆さんはとっても優しい御方ばかりだし、業田先生は面白くて素敵な先生だし、無門さんと同じクラスだって判明したし、同じく高校から入学組の九さんもいらっしゃるし、「成長期さん捕まえ隊」な同志さまもいらっしゃるし。
なんと恵まれていることか。
だから、ね。
なんでか雲の上の存在で在らせられる筈の柾先輩が、俺の隣に気怠そうに立っていらっしゃる不可解な事態は、些末なこととして流しておきましょうね。
…まさかこの御方はご自身の好ルックス高身長アピールの為に、しがない1庶民ながら慎ましく生きる俺の隣に、敢えて立っていらっしゃるのではないでしょうね…?
まさか、ね。
天下無敵の生徒会長さまが、今更そんなちいさなことにこだわりませんよね。
柾先輩の隣には、先輩のご友人さんや仲良し風味な3年生さん方がいらっしゃる。
俺の隣には、無門さんがぴったりくっついていて、九さんもそんな無門さんにくっついていらっしゃる。
そんな九さんの後ろには、益々渋みがましたお顔立ちの美山さんが、距離を空けて立っていらっしゃるようだ(まともにお顔が合わせられません)。
つまり。
この不思議なエリア、非常にキラキラリンと目立っているように想います。
俺もバスケ部に入ればよかったです。
妙に落ち着かない状況下、業田先生が手を打った。
「はいー、じゃ、Aチーム最終調整始めんぞー!いきなり出場競技へ入る前に、恒例のチームテーマを決めまーす」
チームテーマ…?!
実行委員さんが黒板に何やら書き始めた合間に、きょどきょどしていた俺に気づいた柾先輩が教えてくださった。
「結束固める為にいろいろ決めんだよ。テーマカラーまで決めて、バンダナだかゼッケンだかもチーム毎の発注、競技中の応援スタイルまで事細かに合わせて行く。今の段階ではざっくり程度だけどな」
「なんとまぁ…!」
「「「「「っぷ、『なんとまぁ』だって…」」」」」
「「「「「お母さん、面白いネ」」」」」
いえいえ、想わず上げた反応に食いついて来る、類は友を呼ぶな先輩方のほうが明らかに愉快な人種さんかと想いますけど?
口には出しませんが?
「先ずチームのテーマを決めます。アイディアがある方は遠慮なくどうぞ」
実行委員さんがそう言うなり、次々と声が飛んだ。
「正義は勝つ!」
「最後に笑うのは俺達だ!」
「Yes.We Can!」
「出来る出来ないじゃない、やるだけだ!」
「前進あるのみ!」
「打倒!F組!」
「立ち止まるな!走り続けろ!」
「Never Give Up!」
「愛と平和!」
「喧嘩上等!」
「A天の霹靂!」
「A組よ大志を抱け!」
「We Can Fly!」
ほっほう、活発な意見が飛び交いますなぁ。
なるほど、チームのテーマを決めておけば、一致団結も容易そうだものね。
うーん、俺だったら何がいいかなぁと首を捻っていたら。
「「「「「はい!我らが生徒会長様からも意見があるそうです」」」」」
まあ!
先輩のご友人さま方は、なかなかの友だち想いさん揃いのようですねぇ…?
くくくと周りに気取られないように悪どく笑って、柾先輩の肩を押し出していらっしゃる。
まさに類は友を呼ぶというか。
柾先輩はそんなご友人さま方を、にっこりと笑いながら見回していらっしゃるが、俺からはこめかみに浮いた青筋がバッチリ見えました。
教室中がしーんと静まり返って、柾先輩に注目していらっしゃる。
業田先生までもが愉しそうにニヤっと笑いながら、「柾、どうした?遠慮なく言ってみろー」と促されたところ、先輩は一言。
「5ミリ」
はいっ?!
2011-10-11 23:59筆 [ 411/761 ][*prev] [next#]
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