66.パーリィータイムだ!
体育祭…!!
そうだ、昨日終わりのHRで業田先生が「明日は体育祭についていろいろ決めるからなー」って言っておられた。
皆さん揃って、「はぁい!」と一際いいお声でお返事していらっしゃったっけ…
十八学園にはどんな競技があるのかなぁ。
俺も走ることは大好きですからね。
クラスに貢献できるよう、足手まといにならぬようにキリキリ頑張りますよー!
のんびりと構えていたら、あちらこちらで体育祭の話題が花咲く中、初心者の俺を見かねたのか、合原さんと大介さんが体育祭の説明をしてくださった。
「前陽大、どーせのんびり考えてるんだろうけど?十八の体育祭を甘く見たら痛い目見るんだからねっ!」
先ず、びしーっと合原さんに言われて、ぽかーんとなった。
「あははっ、合原ハリキリ過ぎー!気持ちはわかるけどなー。何せ年間行事中、1番派手だし、ほぼ全員が楽しみにしてるイベントだから。新歓は言わば体育祭の前座に過ぎねーしな。陽大、新歓で生き残った実績と体育の授業態度から、かっなり皆に期待されてるぞー覚悟しとけよー?」
「なんと…!新歓とか体育の授業とか…チェックされているものなのですか?」
「「当然」」
何を言っているんだと、合原さんと大介さんはおおきく頷かれた。
「同じクラス内の探り合いも厳しいけど、他クラスからのチェックも凄まじいんだからねっ!」
「なんと…!」
ここ最近、体育の度にあちらこちらから感じる視線は、俺が学校をお騒がせしているだけではなく、体育祭絡みでもあったのか。
驚きで目がまんまるになった俺に、大介さんが苦笑している。
「チームの説明からしておかないとなー学年混合のクラス単位で勝敗を競うんだ。つまりウチの場合は2年A組と3年A組で1チームって事。競技は学年混合が多いけど、学年別も幾つかあるから、総合得点で争うって感じ。
先ずクラス代表の体育委員を選出する。その委員を中心に今日、HRと1限まるまる潰して、各種目の出場選手を決める。自薦他薦問わないけど、どこもマジ優勝狙いだからなー個人の能力を吟味して、何が何でも勝ちに行けるようにガチ討論すんの。決まらなかったら放課後まで持ち越す場合もある。
で、終わりのHRで2年3年と折衝して最終調整。特に3年は最後の大イベントだからすげー殺気立ってんだぜ。ここで揉めるのも珍しくないらしい。で、意見が纏まったら、晴れて体育祭実行委員会と言う名の3大勢力様と運動部有志へ提出!最終調整は最悪18時まで待って貰えるけど、毎年ギリギリになるチームが多いんだってさー。
んで、新聞報道部様出現!ご苦労な事だけどねー3大勢力様、親衛隊持ち等々、人気の生徒が出場する競技をどっかからリークして、今夜の内に号外刷り下ろし!寮でバラ撒かれるから陽大も見てみな。
ウチのA組っつかAチームには柾会長と無門が居るし、優勝候補って事で各チームからマークされてんの。Fチームの武士道も大注目されてるけどな」
ほっほう…なんと本格的なスポーツ祭典…!
圧倒されつつ、ふむふむと感心していた俺は、最後の一言に目を向いた。
「え…!ウチのチームには柾会長さまと無門さんがいらっしゃる…?!」
「そぉ〜なのお!!そうなの、そうなのー!!この待ちに待った日、この僥倖を何とする前陽大?!何度夢見た事でしょうか…!!高等部の体育祭で柾様とご一緒出来る日を…!!そればかりか、出場競技について熱い討論を交わせる至福タイムが、後7時間程でやって来るたぁ…!!イヤーン、心春、ぶっ倒れちゃう…!!」
顔を赤くしてよろめいた心春さんを慌てて支えながら、俺も驚きで倒れそうだった。
というか無門さん、1年生さんだから…同じクラス…?!
今まで1度たりともお見かけしなかった…入学式の段階でいらっしゃらなかったし、先生方からもお名前をお伺いしたことがない。
やはり、アイドルさん稼業が激務すぎるのだろうか。
「あ、そっか。言ってなかったよなー皆の暗黙の了解だから。無門はずっと生徒会活動長いし、極度の人見知りで、でも成績優秀だから授業免除なんだよ。生徒会の活動をしっかりやんのと、テストで一定以上の成績保つのと、各イベント出席必須、年間通した最低限の授業出席で優遇されてんの。1学期は生徒会忙しいからなー殆ど出られないんじゃね。2学期後半から3学期辺りで集中して来るだろーな」
まぁ、そうなんですね!
いろいろな仕組みがあるんだなぁ。
「今日もじゃあ、いらっしゃらないんですかねぇ…」
「いや、流石に今日は来るだろー。何せ3大勢力っつか特に生徒会の体育祭参加の影響ってすげーから。1番慎重に出場競技を決めねーと、どエラい事になるからな」
どエラいこと…?
「ふっふっふ…教えてあげようじゃないか、前陽大!生徒会役員さまの出場なさる競技に限ってなんだけどねぇ、必ず全選手コスプレ必須なのっ!生徒会役員さまが出場なさるイコール、それは自然にコスプレ競技になるのっ!こんな素晴らしい事が学校行事で起こり得るなんて…っ!ああん、心春、ぶっ倒れちゃう…!!」
コスプレっ…?!
「そーそー…だから役員の居るチームはすげー慎重になんの。役員が居ないチームも予測立てて動くしな…」
「ど、どういう…?!」
「ふっふっふ…お母さんにはわからないでしょうね…このルールのエレガントさがっ!!去年は見逃した高等部体育祭限定のエレガントでブリリアントでジャイアントな魅力満載イベント!!今年は同じチームでかぶりつきで堂々と…そう、堂々と…誰に気兼ねなく正々堂々とっ柾様の晴れ姿を拝見出来るっ…場合に因っては同じ競技参加?!きゃーんっ、1年間耐え忍んだ甲斐がありましたっ…!!ファンクラブ限定配信の昨年度高等部体育祭における、俺様ホストな柾様ブロマイドもとんでもなくイケてたけれどもっ…やっぱり生…!!柾様はお写真でも神々しいけれども、やっぱり生が良いっ!!ああ、今年の柾様のご衣装は?!ねぇ、前陽大はどう想うっ?!心春は吸血鬼な柾様も捨て難いぃ〜!!」
ばしばしと、意外に力強い心春さんに肩を小突かれつつ、大介さんと苦笑を浮かべ合った。
「ま、コスプレもだけど…柾会長って、幼等部の頃からあらゆるイベント事で負け知らず、必ず自クラスを優勝へ導いて来た御方だからー…なかなか大変、かもなー」
………はぁ。
2011-09-26 22:51筆[ 404/761 ][*prev] [next#]
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