27.お母さんは宿屋が大好き
洗面所、バスルーム、キッチン、玄関…
リビングには美山樹さんがいらっしゃるから遠慮して…と、各部屋を詳細に探検して回った。
どこもかしこも、雑誌に載ってるデザイナーズホテルの世界そのもので、見ても見ても飽きなかった!
しかし、焦るな俺!!
まだ、初日だ。
一日目だ。
これから一年間、俺はこの部屋で暮らすんだ。
初日から飛ばして各部を制覇するなど、愚の骨頂。
これから各部を使っていく度に、じっくりと知っていけばいい。
焦るな、俺!!
だいじょうぶ、落ち着いて…
あぁ、でもたぎる…!!!!!
白と黒が基調の、モダンな洗面所&トイレとか。
あ、あ、憧れの猫脚バスタブがどん!と置いてある、立派なバスルームとか。
二口の電磁調理器が備えてあった、明るい白がメインで、ビタミングリーンが差し色の広いキッチンとか。
廊下から部屋へと違和感なく繋がっているのがわかる、玄関には、二人分の荷物を入れるに十分なお洒落キャビネットがついていたり。
あぁ、たぎる…!!
たぎってたぎって、しょうがない!!
でも、堪えろ俺よ!!
初日から暴走し過ぎはよくない。
まだ始まったばかりだ、落ち着け、落ち着くんだ!!
興奮をどうにか抑えながら。
ようやく、家から送った段ボールが積み上がった、扉の前へ。
この扉の向こうが、今日から俺の楽園だ。
生まれて初めて、完全にひとり。
ひとり暮らしではない、共同生活だけれど。
親元を離れて生活していく、果たしてこの先にどんな楽園か?!
扉の前で深呼吸すること、数回。
各自の部屋にも鍵がかかるようになっているらしい、把手の横には玄関で見たのと同じ、カードリーダーの存在。
十八さんにいただいたカードを、すかさず構えた。
いざ、参らん!!
ぐっと喉に力を入れ、きっとカードリーダを見据え、さっとカードを通した。
ピピっと、軽快な電子音と共に、かちゃっと鍵が開く音。
続けて俺は、また、カードを通し、鍵をかけた。
あぁ、緊張する!!
再び閉じられた鍵、未だ開いていない扉を前に、また深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けた。
果たして、どんな楽園か…?!
どくんどくんと、大きく鼓動を打つ心臓の存在を感じながら、俺はまたカードをカードリーダーへ滑らせた。
ピピッと、軽快な電子音、ほぼ同時にかちゃっと鍵が開く音。
カードをポケットへ慎重に入れる。
服の裾で何回か拭った手を、金色の把手に恐る恐るかけて。
いざ…開けゴマ…!!!!!
2010-04-23 23:59筆[ 41/761 ][*prev] [next#]
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