58.チャラチャラツイート(7)by 天谷悠


 なぁんかねぇ〜面白くねぇわぁ〜ムカつくわぁ〜。
 にこやか〜に話してる、りっちゃんとりっちゃん親衛隊の隊長を視界に入れながら、その辺に置いてあった(アルコール抜きっつーつまんねージュースに等しい)シャンパンを呷った。
 「悠様ぁ〜今度は僕とお写真撮ってくださぁい〜」
 「あん、次こそ僕とぉ〜!」
 「でも流石、悠様ですぅ〜!新歓デビューにして無傷を守り通したんですもの〜!」
 ちやほやしてくれる、好きな時に好きなだけヤラせてくれる、俺の親衛隊ちゃんはカワイ子ちゃん達ばっかだけどぉ。

 ちょっとガサツにグラス置いただけで、全員びくっと震える、そんな弱々しい所も気に入ってるんだけどぉ。
 「…ちょおっと静かにしててくれるかなぁ〜…?考え事してんだよ、邪魔すんな」 
 途端にシーンと静かになって、目をウルウルさせて怯えてる。
 俺の機嫌を損ねちゃったかなぁって、どうしよぉって一生懸命考えてる。
 素直で従順で、可愛い可愛いお人形ちゃん達。
 何でも俺の想い通りに出来る親衛隊は、この不自由な学園ライフで必要な存在なんだけどぉ。

 俺が欲しいのは、お人形さんだけじゃない。
 いつかはお人形さんになって欲しい、今はそのまま自由で良いと想える存在。
 そんなの、はるちゃんだけだから。

 仕方ないんだよねぇ〜幼馴染みだけにわかってるんだけど。
 はるちゃんは誰にでも平等、優しくって礼儀正しくて、所謂大らかってヤツだから、皆に注目されて皆に好かれる。
 ガキの頃からずうっとそうだったもんねぇ〜俺がどんだけゴネてもはるちゃんは皆に優しい、皆のもの。
 それは十八に来ても変わんない。
 どんだけ年を重ねても、ずっと変わんないんだろぉけど。
 そんなはるちゃんの事も、好きなんだけどぉ。

 ケータイ見ても、やっぱりメールは返って来てないどころか、はるちゃんから進んで俺にメールして来る事もない。
 新歓だよぉ?
 フツーのまともなガッコのイベントじゃないんだよぉ?
 ガキの頃と変わらず、学校中から注目浴びてるはるちゃんは、この新歓で相当数の輩から狙われてた。
 無事に済んだのが奇跡、ってヤツ。
 それなのに、はるちゃんが俺に助けを求める事はなかった。

 曲がりなりにも生徒会、それなりの権力あって、幼馴染みっていう最強の冠まで持ってる俺に、全然頼って来ない。
 はるちゃんらしく遠慮してんのかも知んないけどぉ〜それにしても、ねぇ?
 ちょっとは親衛隊ちゃんみたいに怯えて不安がって、昔とは違う、成長した俺に甘えて来たって良いんじゃないのぉ?
 秀平達が居ないだけ、マシだって想ってたけどぉ。
 あの鬱陶しい連中よりも、武士道とかクラスメイツとかその他諸々のが、遥かに鬱陶しいかも知んない。

 成勢センパイは当てつけかっつーぐらい、あからさまなお願いゴトしてやがったしぃ…
 美山が消えんのは嬉しーけどぉ、いつも裏でコソコソしてる人が、堂々と表舞台に上がって来るのは気に入らね〜よぉ。
 この立食パーリィーはほぼ自由参加の自由解散だけどぉ、こーちゃんが居ない、はるちゃんも居ないってどういう事よ。
 そう、俺が1番ムカつくのは、こーちゃんとはるちゃんの妙な接近なんだよねぇ〜別に今頃、2人で会ってるワケじゃないだろぉけど?
 そんな理不尽な事、この学園で許されるワケないから、2人共わきまえてんだろぉけど。
 同じタイミングで居ないっつーのが、なぁんか引っかかる、癪に触る。


 ねぇ、また同じ事を繰り返すしかないのかな、はるちゃん?


 はるちゃんはやっぱり、独りにならないと俺の存在に振り向かないワケ?
 独りになってやっと、俺を信頼できるの。
 それなら俺は、昔より動きやすいこの学園、秀平達の居ない世界で、はるちゃんを――…

 「………悠様、どうされました?随分愉しそうですが」
 名前は知らないけど、俺の親衛隊の中で多分トップ張ってる子に、声をかけられた。
 この子は不思議と、いつだって俺の神経を逆立てない。
 かわいくって美人で、アッチも飛び抜けて悦くって、中等部の頃からずっとお気にいりだ。
 「ん〜?まぁねぇ〜。ふふ…あ、ねぇねぇ〜これから抜け出さない…?」
 「僕で良ければ。愉しい事は共有しませんとね…?」
 「もちろん〜」

 はるちゃんも、こーちゃんも。
 俺を信頼しないで放っておくから、痛い目見るんだよ。
 悠には関係ない、悠には無理だからって、優しく優しく俺を除け者にするから。
 
 俺は、こんなに………なのに。



 2011-09-18 10:27筆


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