23.Are you ready?
お友だちさん方と、「「「いよいよ柾様が登場される…!」」」と盛り上がっていらっしゃる姿を、ぼんやりと見つめた。
合原さん…
合原さんには何かと気遣って頂いて、貴重なアドバイスを頂いたりと、ほんとうにお世話になっている。
気づいたらいつも、いちばんに心配してくださっていて、気をつけてって言ってくださる合原さんのほうが、とっても不安そうで。
元気で明るくてハキハキしていて、恋に燃えていて、すごくお可愛らしい御方だけれど、そういう時に見せるどこか陰りのある表情も、ほんとうの合原さんなのだろう。
どうしたらお礼できるかな。
合原さんがいっぱい笑顔になれる、とびきり好きなもの、とびきりおいしいものって、なんだろう?
このイベントが終わったら、聞いてみよう。
そうだ、もっといろいろとお話もしてみたい。
合原さんのこと、知りたいなぁって想う。
甘いものとか、ふわふわしたものがお好きそうだなぁ…
ふっわふわのシフォンケーキ、たっぷりクリームとフルーツ付きでお茶タイムとか、どうでしょうか。
武士道大好きおやつベスト3の、自慢のふんわりドーナッツに、チョコとかいろいろトッピングするのもいいですなぁ。
うん、楽しそう!
もちろんもちろん、俺だけ楽しくても仕方がありません。
あくまで合原さんのご意志を尊重の上、ちょっと計画してみようっと!
1学期最大イベント、体育祭前がチャンスだ。
お世話になっているお礼をできるように、すこしでもリラックスして笑って頂けるように、頑張っちゃうぞー!
オー!
「はるとっ!!ナニ1人でニヤニヤしながらガッツポーズしてんだよ?!気持ち悪いぞ!!」
オー???
おおきな声が聞こえて、ぐるぐる周囲を見渡してみたら、すこし離れた場所に九さんと…美山さんがいらっしゃった。
「九さん、美山さん…すみません、お見苦しいところをお見せしてしまいました。ちょっとテンションの上がる出来事があったものですから、つい…公衆の面前ですのに大変失礼致しました」
見られていたことが恥ずかしくなって、ぺこりと頭を下げたら、九さんはなぜかお顔を真っ赤にされた。
「べっ別にっ…そんなんじゃないしっ…!!別に、はるとなんかに見とれてるわけじゃないしっ!!けど、謝られたらオレが悪いみたいじゃん!!お前、あんまり人前でヘラヘラしない方が良いんじゃねっ?!ドキドキするっつか…!!つか、アイドルなんだからもっと自覚持てよなっ!!」
………???
後半がよくわからなかったのだけれど。
「申し訳ありません。お気遣いありがとうございます。笑い顔が地顔でして、なかなか凛々しくなれないのが悩みの種ですが、改善できるように努めます」
ぺこりと再び一礼して、顔を上げた時、九さんの胸にも俺と同じ、紫がかった白バラが飾られているのを発見した。
バラの色は多種多様で、1つとして同じブローチはないように見えるけれど、主流はやはり赤いバラ、ピンクのバラ。
その中で、白いバラは割と目を引く。
お揃いだなぁと想った。
「穂、もう良いだろ。始まる」
「わぁ、ミキっ!!止めろよっ、オレはもっとはるとと話すんだー!!」
九さんを背中から抱きしめるようにその場から去ろうとしておられる、美山さんは薄紫色のバラを腕につけていた。
「は、離せよっ!!人が見てんだろっ?!ミキ、お前マジで甘え過ぎ、」
あわあわと慌てて暴れる九さんに、のんびりした声がかけられた。
「はいはい、穂〜ちょーっと静かにして、舞台上に注目ー!もーすぐ生徒会長サマ御一行が登場するぞー」
「えっ、コ、コウ達がっ?!」
音成さんだ。
音成さんの胸にも、美山さんと同じ、薄紫色のバラ。
ざっくばらんに手渡しで配られているように見えた、豪華なブローチだけれど、この色の配分ってもしかして何か意味がある…?
考え過ぎかな。
目が合った音成さんからにこっと爽やかウィンクされて、俺もなんだかよくわからないながらウィンクを返しておいた(作者注:陽大はウィンクができないので単に両目瞑っただけです)。
「「「お母さん、始まるよ!」」」
「「「『来る』よー!耳栓の準備して!」」」
周囲のクラスメイトさんから言われて、俺も舞台上に注目することにした。
「来る」って、やっぱり「来る」んですね。
一見落ち着いた雰囲気の講堂だけれど。
そりゃそうだよね、いつもの週イチ朝礼であの賑やかさなのだから、待ちに待ったイベントともなると…
「一同、静粛に!これより、第90回新入生歓迎会を開始致します。くれぐれも静粛に!!では、生徒会より開会の挨拶」
十左近先輩のアナウンスが流れた刹那、辺りは一瞬、シーンと静まり返って。
「「「「「ぎゃあああああっ!!!!!」」」」」
2011-08-05 23:23筆[ 361/761 ][*prev] [next#]
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