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 淡々と始まった。

 「天使バルサン…転校生な、早くも莉人、美山、音成、無門、天谷、七々原ツインズと接触したみてぇだ。実を言うと、昼休みの終わり頃、俺ら武士道もちらっと遭遇したけどな。ま、ウチは白馬と違うから、バルサンハーレムはんか有り得ねー。莉人は早速拒絶反応出したし、俺らももう会いたくねーし。音成はナニ考えてんのかよくわかんねーけど、アイツは頭良いから放置してて問題ない。生徒会1年生組はちょっとした好奇心で動いてるだけだろーし。今の段階でヤツに好意的なのは、美山だけってとこだ。さっき入った情報に因ると、昼、食堂に美山と音成と一緒に現れたらしい」

 美山さん…
 転校生さんと、ほんとうに仲よくなられたんだな。
 それはとてもいいことだ。
 入寮当初からお世話になっている美山さんに、親しい友人さんが増えることは、とてもいいこと。
 笑って現実を受け入れ、温かく見守るのが、同室者としてあるべき姿だろう。
 だけどもう、いっしょにごはんを作って食べたり、朝いっしょに登校したりできないのだろうか。
 例えば、転校生さんもいっしょに、とか。
 こんなふうに、寂しく感じてしまう自分の器量の狭さが、とても嫌だ。
 子供だけれど、俺ってほんとうに子供っぽいなぁ…
 自分にガッカリする。

 「仁さ〜堅苦しく話さないでよね〜んな大した問題じゃねーし〜」
 落ち込んで行く思考を止めてくれるかのように、肩にポン!っと一成の手が軽く触れた。
 「はぁ?別にんなつもりねーし!」
 「雰囲気が硬いんだっつの〜!ねーはるる〜何にも難しく考える必要はないからね〜?美山とバルサンにナニがあったか知んないけど〜つまり、はるるは今まで通り、ちょ〜っと周りに気をつけながら、俺らと一緒に居れば良いってだけだから〜ヤツらは取り敢えず、様子見って感じ〜」
 「様子見…」
 「そ〜今すっげー校内新聞の話題独占だし〜親衛隊も騒然としてるけど、ま、富田センパイ達が抑えてくれてっしね〜『まだ』取り立ててデカい問題は起きてねーから、俺らは遠目から経過観察する事になってんの〜だからはるるは同クラだけどさ、はるるらしく過ごしてくれてたらいーよ〜ヤバくなったらすぐ連絡するしね」

 そっか…新聞が出ちゃってるんだ。
 「そうそ!んで美山は当分、その騒ぎの種と一緒に行動するだろーから、はるとは俺らと一緒、此所で暫く共同生活な!『ホーム』でもいーんだけどさ、あそこは校舎から離れ過ぎてて不便だから」
 「要望あったら何でも言ってね、はるる様〜明日さ、はるるの荷物取りに行こうね〜」
 ここ、一成の部屋で、3人で共同生活!
 有り難いけれど、そんなのいいのだろうか。
 2人共、それでいいんだろうか、2人の時間を邪魔していないだろうか。
 どう聞いたらいいかもわからず、おろおろと2人の顔を見比べていたら、仁がふと苦笑した。


 「美山とバルサンの事もあるけどさ。はると、宮成…センパイ?と何度か昼一緒してただろ?昴が圧力掛けて抑えたけど、それもちっちぇ記事になってんだわ」


 そうだ。
 会長さまからもそのようなことを言われて、それで2人が来てくれたんだ。
 ちっちゃい記事になった、って…俺はまた校内新聞に載る程、学校を騒がせてしまったんだ。
 「だ〜か〜ら〜仁、何か辛気くせーっつの。はるる、大した事じゃないからね〜?はるるに他意がないのは俺らよくわかってるし。ただ、ヤツの親衛隊がちょおっとウルサイ所で、凌と別れたばっかでピリピリしてるし〜ホントなら本人と話さなきゃなんない事を、八つ当たりではるるに言って来るかも知んねーから〜いろいろ落ち着くまで、俺らと一緒に居てね〜」
 俺は、ほんとうに、なんにもわかっていない。
 気遣ってくれる一成と仁に、返せる言葉も持っていない。
 「噂で宮成本人が親衛隊とケジメつけるって話もあるけどな。まー落ち着こうが落ち着かまいが、俺らと一緒に居ような〜はると」
 「そうそ〜楽しく暮らしましょ〜」

 ただ俺は曖昧に笑って、頷くことしかできなかった。



 2011-06-26 23:55筆


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