67.天使バルサンが奏でる狂想曲(5)


 もうっ頭キタ!!
 超っムっカつく〜―――!!!!!
 「何なんだよ、アイツらっ!!ちょっと『武士道』だからって…ちょっと街で有名だからってさっ!!チョーシ乗り過ぎてんじゃねーのっ?!このオレにあんな暴力振るうなんて…許さねーっ!!ちょっとキレーな顔してキレーな髪だからって…オレは絶対に許さないからっ!!」
 時間が経てば経つ程、次から次へと怒りが沸いた。
 そもそも、このガッコ自体にオレは腹を立ててんだ!!
 オムライスは美味かったしっ、ミキやはると、そーすけにダイスケ、ヒサシっていう友達が早くも出来たけど!!

 あのクラス!!
 あの食堂!!
 そしてアイツら…武士道!!
 このオレを地面にへたらせて、上から見下して笑いやがった事、絶っっっっっ対に許さないっ!!
 ふと、背後があまりにも静かだったから、またミキのヤツ、勝手にどっか行っちゃったんじゃねーだろうなって慌てて振り向いた。
 なんか変な顔してるけど、良かった、ちゃんと居る。
 ちゃんとオレの後をついて来てる。

 それにしてもミキ、さっきから大人しいな!!
 オレがあんなヒドい目に遭って、こんなに怒ってるっていうのに、なんつーかずっと暗い。
 なんだろ…?!
 腐っても武士道、街で有名なデカいチームだ、このガッコでも相当デカいツラしてんだろ。
 副総長の「銀色」、かずなり?はミキの事知ってたっぽいし…ミキ、そんなに強くないしビビってんのかな?!
 怖いって思ってんのかな。
 オレが居るから、大丈夫なのに!!

 ミキがあんまりにも暗いから、心配になって、オレは歩くのを止めて振り返った。
 そのまま気づかずに歩き続けようとするミキの手首を、ぎゅっと強く掴んで引き止めた。
 「ミキ、大丈夫だからな!!ミキにはオレがついてるから…!!」
 「………穂……あ?いつの間にこんな所…」
 相当ショックだったのか。
 ミキは放心状態で歩いてたみたいだ。
 はっとオレを見て、きょろきょろ辺りを見渡して、呆然と瞬きをくり返してる。
 ミキ、もしかしてあの武士道に目ぇ付けられて、イジメられてんのかな?!
 だから今、こんなにキョドってんのかな?!
 
 思わず、掴んだ手首に更に力を入れてしまった。

 「ミキ…!!もう大丈夫だ!!オレが居るから!!オレが来たからには、もうミキを苦しめるものは何もないから!!オレが守ってやるからなっ!!大丈夫だからなっ!!オレ、オレ…言うつもりなかったけど、『阿修羅』の幹部なんだっ…!!今はワケ有りでこんなカッコしてるけどっ、オレはマジで強いから、『武士道』にだって負けやしねーんだ!!『金色』も『銀色』も揃ってるからって何だってんだ?!オレが居るからにはもうアイツらの好きな様にはさせねー!!十八にはちょっとだけど、『阿修羅』の仲間も居るって聞いてる!!だからオレ、ミキを守ってやれるんだ!!だってオレ達、親友だしなっ…!!
 だから、だから……もうミキは独りぼっちなんかじゃないから!!な…?!もう大丈夫だから、1人で悩んだりするなよ…!!」
 
 感極まって、涙が滲んで来た。
 グスグスしながら、ちょっと情けないけど、一生懸命にミキに訴えたら。
 やっぱり、一生懸命な思いは人に届く。
 ほら、オレはやっぱり間違っていない、いつだって正しいんだ。
 ミキが、ちゃんと、わかってくれた。
 「…穂…てめー、泣いてんのか…?俺の為に…?」
 「グズっ…泣いてなんかねーしっ!!オレは強いんだからなっ!!ミキより強いんだっ!!えぐっ…だからミキは、黙ってオレに守られてりゃいーんだっ!!!!!」
 言い切って、胸を張ったら、目を見張っていたミキがちょっとだけ微笑った。

 良かった、笑ってくれたと、オレもつられて笑っていたら。

 「サンキュ」

 「ふえっ…?!」

 ぬあっ?!
 ちゅ、って。
 ちゅ、って。
 今、今、今、オレの口に、ちゅ、って…!!!!!
 「っナニすんだっ!!!!!」
 オレの渾身の一撃を、ミキはなんと、さらっと交わして悪どく笑った。
 「そんなんで強いって言えんのかよ」
 「いい今のはっ、動揺してただけでっ…!!ミキが、オ、オレにっ…変な事するから悪いんだろっ?!」
 「変な事…?ただの挨拶だろーが…此所では珍しくねーし、外国行きゃ当たり前だろ」
 「そうだけどっ…!!」

 なんだよ、ミキのヤツ!!
 急に元気になりやがって!!
 …まぁ、ミキが元気になったなら良いけどさっ。
 2度目は絶っっっ対に有り得ないんだからなっ。
 しっかし、ちょっとばかり顔がいーヤツって、何でどいつもこいつも…
 「阿修羅」の連中も甘えたがりっつーか、スキンシップ過剰だったっつーか…
 飄々としてるミキを睨みつつ、オレはひそかに決意していた。
 「武士道」だって、話せばわかるハズだ。
 あっちが戦る気なら、先ずは拳で語り合って、そっからちゃんとどっちが上か教えてやったら、話できるハズだ。

 オレはさ、皆と仲良くなりたいんだ!!
 やっぱりガッコ中が仲良くって、皆友達なのが良いじゃん、楽しいじゃん!!

 『そうだね、穂はいつも正しくて良い子だから…ちゃあんと光を知っているもの』

 そうだよ。
 オレはいつだって間違っていない。
 光の世界を知ってるんだ。



 2011-05-24 23:13筆


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