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テンションが上昇し続ける俺と、笑い地獄から復活し、もう澄ました面持ちの柾先輩の肩を、業田先生がうんうん…と頷きながら抱き寄せて、口を開きかけたのだけれど。
「おいコラ、そこの漫画同好会…漫画の話なんざ日を改めな。
てめぇらの為の集いじゃねぇんだ、今日はよ…時間が押してる…今はさっさとメシ食って宇宙人対策立てんのが最優先だろうが…ああ゛?!」
「「「はい!」」」
低〜い声に、飛び上がりそうになって、揃って返事をした。
俺が何よりも驚いたのは、この言葉がうかつ先生から出たものではなくて。
「うふっ!わかってくれたなら嬉しー!じゃ、とっとと進めましょうねぇ。うかっちゃん、取り敢えず陽大クンにアタシ達の事、教えてあげてよぉ」
まかべ先生から発っされたものだったから、尚更緊張した。
「「……多重人格オトコオンナ…」」
ぼそっと呟いた柾先輩と業田先生に、にこにこしたまま、まかべ先生の手元からすさまじい早さでピンセットが飛んで来た。
この御方…デキる…!!
かろうじて避けられた御2方は「「怖っ…」」と青ざめていらっしゃる。
まかべ先生、一体何者なんですか!
ふーっと、うかつ先生が実に渋いお顔で、渋いため息を吐かれた。
「前、見ての通りだ」
「は、い……???」
見ての通り???
「俺達は10年前…十八学園高等部・第90期『3大勢力』だった。業田が当時の生徒会長、俺が副会長、真賀部が不良組総長、細田が風紀委員長」
えっ?!
「静ちゃん、何度も言うけど見ての通りだっつっても誰も納得行かねえよ…どー見ても静ちゃんが総長っしょ」
柾先輩が眉を顰めていらっしゃる。
た、確かに…!!
まかべ先生のキラキラっぷりだったら、副会長さまとか、「副」が付く役職がお似合いと言いますか何と言いますか…
「うふふっ当時はねぇ、アタシ中々強かったのよん!今でこそおしとやかな乙女になっちゃったけどね…もう無いけど、『一期一会』っつーチーム組んでたの。あの頃は楽しかったなぁ…皆どうしてるかしら…」
「「「いやいやいや、今でも十分強いし」」」
「黙れ下衆共〜(はぁと)陽大クンに誤解されちゃうじゃないっ!」
「「「………(手遅れだろ…)」」」
なんとまあ…人に歴史ありですね。
「『一期一会』さん…武士道のOBにお話聞いたことがあります…」
「あら!そうか、陽大クンは武士道と仲が良いんだっけ。うふふっ、広田(ひろた)元気?」
「はい!最近会ってないですが…」
「そぉ。ま、今は広田の事なんかどーでもいーんだけどぉ。またゆっくり話しましょうね。ゴメンネ、うかっちゃん。続きをどうぞ」
うかつ先生はまたも、どこか遠い眼差しで、渋い渋いため息を吐かれた。
「悪いな、前。話を戻すぞ。
通常、十八学園を巣立った者…特に『3大勢力』の任に就いていた者が、学園に戻って来る事はない。この学園の特色だな、既にそれぞれの生家で進路が決められているのに、わざわざ教職の道を選びはしない。まして『3大勢力』は、学園の裏の顔を知っている。在籍中はずっと重責を負い、やっと卒業して自由になったというのに、戻って来る意味等ない。学園側からも良い顔はされない。
それでも俺達が、生家から僅かな余暇を貰って此所へ帰って来たのは、第100期…今の『3大勢力』だな、柾達が俺達が成し得なかった悲願を成就出来そうだからに他ならない。それを見届ける為に揃って教職に就き、母校へ戻って来た」
2011-04-22 22:10筆[ 304/761 ][*prev] [next#]
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