42.天使バルサンが奏でる狂想曲(3)


 オレという親友がありながら、何も言わず出て行ったミキ。
 許さねーぞっ!!
 オレ、転校して来たばっかなのに…!!
 そりゃ、はるとと友達になれそうだけどさ、まだ親友になるまで時間かかりそうだし、はるとは十八のアイドルらしいし、だからオレが頼れるのはミキだけなのに!!
 ミキのヤツ、はるとのことがキライなのかな?!
 クラスのヤツらとも上手くいってないみたいだし…
 オレがいるから、もう大丈夫だけどさ!!
 ガツンと言って、ガツンと一発殴ってやる!!

 ひとりぼっちだからって、拗ねてんじゃねーよ!!って。

 ミキはだいぶ捻くれてるみたいだけどさ。
 オレがクラスのヤツらとの架け橋になってやるから!!
 はるとだって、すっげえ良いヤツっつかお母さんなんだから、ミキだって絶対仲良くなれると思う!!
 つか、はるともちゃんとミキに接してやったら良いのに…
 お母さんなら、他のヤツらばっかじゃなくて、ミキの面倒も見てやれよな!!
 忙しいのかも知れないけどさあ。
 オレに話してくれたみたいに、ミキにもゆっくり話しかけてやれば、あの捻くれ者だって聞くハズだ。
 ミキがひとりぼっちで猫と遊んだり、猫なんかに話しかけてる寂しいヤツだって、はるとは知らないのかな?!

 あ!!
 やっぱり、オレはミキの親友だから、特別な秘密を知ってて当然だし?
 はるとも、オレだから、ああやって優しく話しかけてくれたのかも知れない。
 そりゃ、誰にだって特別扱いしてらんないよな…
 とにかく、ミキの親友はオレだけど、友達はいっぱい居たほうがいーもんなっ!!
 待ってろミキ!!
 もうお前を1人になんかさせない!!
 オレがお前とクラスのヤツら、ちゃーんと和解させて、仲良くさせてみせるからなっ!

 すぐ追いかけたハズなのに、ミキは超!早足みたいだ、どっかへ隠れてしまった。
 なんだよ!!
 逃げなくてもいーじゃん!!
 …恥ずかしがってんのかな…?!
 オレは親友なんだから、ミキがどんなに恥ずかしいコトしたって、全然ノープロブレム、受け入れてやれんのに。
 って、うっわ、チャイム鳴ってんだけど!!
 転校早々サボりたくなかったのに〜…!!
 十八さんのガッコだから…おじい様もいるみたいだし、マジメに通うつもりだったのに〜!!

 でも、仕方ないか。
 親友のピンチだもんな。
 そんなの放っておけない、オレはミキを見つけてちゃんと殴るまで、絶対に探し続けるから!!
 しっかし、マジ広いガッコ…
 道も建物もグネグネグネグネ入り組んでて、意味わかんねー。
 どんだけ森があんの?!
 どんだけ花壇や庭があんの?!
 こんなに自然要らなくね?
 こんなにバカスカいろんな建物も要らなくね?
 あっちこちに道がある、標識みたいなのもあるけど、意味わかんねー。
 ガッコつか、巨大迷路?!

 「ミキー?!ミキー!!オレだよ、オレオレ!!怖くないから…殴ったりしないから、出て来いよ〜」
 ミキに呼びかけながら、オレは一生懸命あちこちを探し歩いた。
 今日どんだけ歩かされてるコトか…マジ有り得ねー!!
 いつか絶対、敷地面積縮小してやるっ!!
 そうして歩く内に、入り込んだ薄暗い庭で、泣いているヤツに出会った。
 えっらくキレーな、キラキラした男だった…!!
 白馬の生徒会とかもキラキラしてたけど、りひとも2番目に会ったヤツもミキも、クラスのヤツらもそうだけど、白馬と比較にならないぐらい、ここは皆すっげー!
 それが当たり前、みたいにキラキラしてる。

 皆が皆キラキラしてるから、はるとみたいなぼーっとしたカンジのがウケて、アイドルとかになっちゃうのかな?
 そうとしか思えない。
 十八は世間一般と価値観が違い過ぎるんだな、きっと。
 じゃないと、はるとがアイドルなんて有り得ないもんな。
 だって、目の前で泣いてるヤツのが、はるとなんかよりよっぽどキレーだし、オーラあるしアイドルに相応しいもん。

 ひとりぼっちで泣いてる姿が、ミキみたいに寂しそうで、放っておけなくて話をした。
 絵本を読んで泣いてたって…こんなキレーなのに、すっげぇピュアなイイヤツなんだ…!!
 正直、ガキくせーとかちょっと思ったけど、キラキラ流れる涙はキレーで、涙でいっぱいの瞳がまたキレーで。
 たどたどしい話し方でも、オレはわかるし好感を持った。
 それからすぐ友達になって、いろいろ話した。
 そーすけっていうらしい、そーすけはホントはもっと男らしくなりたいとか言いながらも、このままの自分を認めて欲しがっていた。
 それなのに、そーすけはひとりぼっちではないらしーけど、周りに居るヤツらは、変わったほうがいいって何かと口うるさく言ってくるらしい。

 そんなの許せない!!


 「自分の正義を他人に勝手に押しつけるとか、オレが許さねーよ!!」


 そう言ったら、そーすけはものすごく嬉しそうに、こくりと頷いて笑った。
 ありがとうって言って、にっこり笑った。
 「そーすけはこのままで良いに決まってる、だってこれがそーすけなんだから!!」
 それなのに周りが都合の良いように操作しようとするなんて、そんなの理不尽だ!!
 大丈夫だ、そーすけ!!
 今日からオレがついてる。
 オレはそーすけが全部話さなくても、不思議なぐらい、そーすけの思ってることがよーくわかる。
 だから、そーすけはこのままで良い。
 このままで良いんだ。

 言い切ったら、そーすけはまた、ポロポロとキレーな涙を流した。
 よしよしとサラサラの髪を撫でながら、オレは、そーすけとも親友になる決意をした。
 これからはオレが居る。
 そーすけの周りのヤツらが、どんなヤツか知らねーけど?
 オレが来たからには、もう好き勝手言わせないしさせないっ!!
 今度そーすけに何か言ってみろ、親友のピンチにはオレが黙ってないんだからな!!



 2011-04-16 22:37筆


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