27.銀いろ狼ちゃんの計算(3)
晩ゴハンの用意しながら、はるるはずっと上の空だった。
上の空なのに、ちゃっちゃか手を動かしてゴハンを作っちゃえる、流石はお母さん。
ん〜…
ホントは、優しく優しく慰めてあげたいトコロなんだけど。
敢えて、俺は静観する。
そうっと見守るに留める。
はるるの興味が逸れるまで、俺からミキティーの話題は出さない。
しっかしミキティーめ、クソガキ狼の分際で、クソガキらしー反抗示して来やがって、ウゼェな〜マジでウゼェな〜!
俺らの秘密基地こと「温室」では、建前上合わせたけど〜俺の本音は、あんなクソガキ狼、武士道に入れるなんざ考えらんないね。
はるるを意識しちゃってんの、バレバレだっつの。
はるるが居なかったら、あのクソガキ狼があそこまで意識してなかったら、とっとと言い包めて担ぎ上げて、ハイ世代交代サヨナラ〜で済むんだけど。
話はそう簡単に行かない。
あ〜あ、ヒトの気持ちって、マジ面倒くさ〜!
これまたイヤんなる程、すぐ周りが読めるから、余計に面倒くさ〜!
更にこれから、事態がややこしくなりそうだ。
ソツなくはるるのお手伝いをこなしながら、頭を働かせる。
仁は今の段階では、はるるを弟みたいに見てるし、武士道の仲をより強固にしてくれたって感謝してる。
トンチンカン達含め下の奴らは、あくまで家庭的な憧れと癒しを求めてるだけ。
風紀も親衛隊も1年A組も3年の先輩方も、まだ白かな〜?
はるるの個性に惹かれてるっちゃー惹かれてるけど、それは友愛的な意味合いだ。
となると、やっぱ問題はミキティーと生徒会か〜面倒くさ〜!
莉人はビー・クールだからな〜強いて言うなら、タコウィンナーに惚れてる?
双子は常に面白いコト…おもちゃを探してるだけだし、はるるパワーで簡単に手懐けられるっしょ。
厄介なのは、歩くチャラチャラ下半身男と大型ワンワン君、コイツらミキティーと同じガキくせぇ危うさがあるんだよね〜。
ガキの手綱捌きは、昴の得意分野だけど。
最も厄介で読めないのがアイツ、昴と来たもんだ。
今回どう出て来るか…いつの間にか「陽大」呼びしてるし、っとに油断ならねぇ男だわ〜。
昴次第で生徒会の動向は変わる。
「俺ら」の動向も変わる。
つまり、学園の流れそのものも変わる。
このままはるるを弄って面白がってるだけなら、何の障害にもならないんだけど。
「十八で色恋沙汰は有り得ねえ」ってハッキリ言ってたから、外に婚約者だか許嫁だか居るのかも知れない。
昴の背景は怪し過ぎる、長い付き合いながらあんまり関与したくなかったんだけど〜そうやって放置してたから、今、さてこれからどうなるでしょうって事態なんだよね〜今更聞けないしな〜。
ああ、面倒くさい。
ちらっと、憂いを帯びた瞳を鍋に向けている、素朴な横顔を見た。
はるるが、もっと簡単なコだったら。
いっくらでもストレートに愛の言葉を囁いて、誰よりも素早く捕まえて、絶対に離さないのに。
俺の、唯一。
この世界で生きられる、唯一の希望。
…ほんとうは、はるるに逢う前に強烈な光を見た、生きる力を与えられたけど。
どんなに頑張っても、会えないままだから。
俺は、はるるに出逢えたから、もうそれで良い。
はるるに、生きる力を貰ってるから。
遠くて会えない存在よりは、近くに居るはるるが大事なのは当然だ。
近い。
手を伸ばせば、すぐ触れる位置に居る。
俺の側で、はるるは息づいている。
確かに近い筈なのに、十八に来てから遠くなった様にも感じる。
皆に惜しみなく与えられるはるるの明るさ、平等な優しさが、いつになく歯痒い…イライラする。
そう、ものすげーイラつく。
平等なものなのに、誰かに特別に向けているものじゃないのに、勘違いしてんだかガキ特有の独占欲なんだか、浮かれて舞い上がって自分のものだと錯覚する、あまつさえ守ってやんなきゃとか想い上がった美山や、生徒会のガキ共が、すげーイラつく。
誰だって簡単に近付ける。
簡単に、懐に入り込める。
それだけだ。
それ以上には、なかなかたどり着けない。
ランクアップはない。
はるるは偏見こそしないけど超ノーマルだし、何よりも将来の夢を大切にして全力前進中だから。
特別な存在になんか、誰も成れない。
どんなに愛を囁いたトコロで、このコは簡単に笑って、「俺も好きだよ」と親愛の情を示して来るだけだ。
もっと、簡単なら良いのに。
……ま、難解なほうが燃えるけどね〜え?
複雑でややこしいほうが、結局俺も好きなんだからどうしようもねぇわな〜。
頭脳労働、ばっち来い!
とにかく、現状ただでさえ多数の人間が関わって、こんがらがり始めてるはるとを巡る矢印の行方が、明日来るとか言う嵐・天使バルサンに因って、余計に厄介になりそうな予感がビシバシするんだよね〜。
一舎っつー厄介者も居る事だし、武士道副長として気張らにゃ〜!
最後に笑うのは、俺だって。
暖かく触れた手に、誓った。
次に会った時は、俺、絶対変わるって。
与えてもらった光に恥じない様に、強くなるって決めた。
生きろと言ってくれた、強い手の温もりを忘れた事はない。
誰も知らない、知らなくて良い、くだらなくてダセー俺。
それをいつか、はるるには聞いて欲しいって想ってる。
2011-03-29 23:52筆[ 282/761 ][*prev] [next#]
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