18.お迎えに上がりました、お姫様
各教科のテスト結果が続々と返って来て、通常授業が淡々と戻って来た、1日の終わり。
教室の外には仁と一成がいた。
にこにこ手を振ってくれる2人を見て、今朝のことを想い出した。
柾先輩が仰ってた、「放課後至急」俺も連れて「3大勢力召集します」っていう件でしょうか。
「お疲れ〜はるる〜!帰ろ〜」
「行こうぜ〜あー喉乾いた腹減った〜」
いつも通りの2人に囲まれて、クラスの皆さんやすれ違う皆さんに挨拶しながら、往く当ても知らず歩いた。
どこへ向かってどうなるのか、俺にはなんにもわからないけれど、仁と一成があまりにもいつも通りだったから不安はなかった。
「はるる〜テスト、どーだった〜?」
一成に話しかけられて、想い出した!
「そう!テスト!!仁や一成、皆さまの温かいご支援のお陰で想像以上にいい結果を得ることができました…!誠に、誠にありがとうございます!!」
「はると、選挙運動みてぇになってる!けど、良かったな〜」
仁に頭をわしゃわしゃされて、へらりと笑いつつ。
「でも俺、失礼かも知れないけれどもびっくりしちゃったー!皆さま揃って50番以内に入ってらっしゃるんだもの!道理で充実した勉強会だったはずだーって、1人で納得してたんだー」
そうなんだ。
朝の密会?の後、寮へ戻って仕度して学校へ向かったら、掲示板にどーん!と各学年の成績優秀者のお名前が、50番以内まで貼り出されていた。
武士道も生徒会さんも風紀委員会さんも、親衛隊の富田先輩も織部先輩も、宮成先輩も所古先輩も十左近先輩も、クラスで仲良くしてくださっている皆さんも、見事な上位ランクイン。
もちろん、成績順位だけが人間のすべてではない。
俺たちは高校生だから勉学が優先されるところだけれども、50番以内に入らなかったからって、優れた人間じゃないってことではない。
それにこれはあくまで総合得点数だから、各教科あるいは試験外の科目でも抜きん出た才能をお持ちの御方はいらっしゃるだろう。
それを前提に、知っている方々が見事な成績を修めていることに、ただすごいなぁと想った。
特に武士道の皆、ひーちゃん…皆のやんちゃな姿を見て来たからかな…なんだかとっても誇らしい気持ちで胸がいっぱいなんです。
俺もこのままキープして行くぞー!
「あっは、掲示板見たんだ〜?イイ曝し者だよね〜アレ、今週いっぱい貼り続けられるんだよ〜酷くない〜?」
「マジウゼェよな〜成績なんかどーでもいーっつーの。……一成、明日にでもジャックしようぜ〜」
「アイアイサ〜」
「こらっ!ジャックって、まさか掲示板ジャックの話?!いけませんよ、公共物を勝手に触っては!」
「「はぁい!」」
妙に素直で怪しい笑顔つきの返事…これは釘を差さねばと意気込んだら、ぼそっと仁が呟いた。
「…ま、ど〜せ明日には新聞報道部にヤラれてんだろ〜けどな〜」
「それもそっか〜『嵐ちゃん』効果でね〜仁、冴えてる〜」
「一成は俺をバカにし過ぎ」
「仁は俺を見くびり過ぎ」
「何だとゴラ」
「ヤんのかゴラ」
「「……って、アレ?止めてくんねぇの?」」
いつものノリで今にも額をぶつけそうだった2人が、くるっと俺を振り返った。
俺は笑うしかなかった。
「も、もー、2人共、いけませんよ!こんな所で暴れたら皆さんの迷惑ですよっ」
やっぱり、知ってるんだ。
2人は、今朝十八さんから初めて聞いた話を、もう知っている。
俺は誰にも話していない。
と言うことは、十八さんか柾先輩から聞いたと言うこと。
2人も「例の件」に関わっているらしい、なにか抱えているらしいのはわかっていたけれど、こうはっきり確信すると緊張した。
きょとりと俺を見ていた仁と一成は、ふと表情を緩めて、左右からぽんぽんっと俺の肩に触れた。
「「大丈夫!」」
なにも言えずに、頷いた。
俺などがほんとうに関わっていいことなのだろうか、今更の不安が薄れる言葉だった。
「噂は〜全学年にうっすら流れてるよ〜何せ明日のコトだし〜?こんな変な時期のテンコウセイだしね〜」
「テスト後で目立つ事件もなけりゃ、学園中が飛びつくのも無理はねぇよな〜まったく厄介だぜ」
いつも通りの2人が、どんどん歩き続ける。
校舎の数々を過ぎ、寮も通り過ぎてどんどんと、このまま武士道のいる「ホーム」へ向かうのだと言わんばかりに。
「そう言えば話は戻るけれども…柾先輩、1位だったね」
他愛ない話で気を紛らせようとしたら、2人が顔を顰め、勢いよく言い放った。
「「アイツはバケモンだ!」」
舌打ちまで混じっている様子に、あれれ?と想った。
「はるる、昴の点数見た〜?」
「へ?点数表示されてたっけ…?俺、皆さんのお名前を追うのに必死で…」
「はるとらしいな〜別に見なくて良いんだけどさ」
「アイツ、全教科ほぼ満点よ〜?キモチワルいっしょ〜?」
「ずっと首位キープしてやがんの。アイツがウザイのはテスト科目外でも優秀って所だな」
「「マジ可愛気ないわぁ〜」」
なんとまぁ…!
「……ほんとうに、同じ人間なのかな…?」
「「アハハ!言えてる〜!」」
怖いです、柾先輩。
そうこう言いながら歩き続ける内に、随分外れまでやって来た。
門へ向かうか、後は広大な森が広がるばかり、っていう地点。
「一成、背後OK?」
「オッケ〜誰にも尾けられてませんぜ〜」
「よし!前方左右問題なし、じゃ、はると」
仁と一成が、さわやかな笑顔で親指を立てた。
「「走るぞ〜!」」
「へっ?!」
いきなり左右からがっしり手を掴まれて、気づいたら森の中、2人に引っ張られるように走っていた。
2011-03-17 22:42筆[ 273/761 ][*prev] [next#]
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