11.嵐の前触れ
主に武士道の皆の協力で成り立った、土日の勉強会を挟んで迎えた中間試験。
それはもう、長い長い1週間だった!
中学の時よりずっと、苦しく辛い日々だった。
とにかく、精一杯頑張った。
手応えがあったんだかなかったんだか、それさえ記憶できない程、1教科1教科に集中してベストを尽くしました。
あとは野となれ、山となれ。
結果が出るのが恐ろしいけれども、頑張ったんだから悔いはない!
さあ、待ち焦がれていた台所仕事、2週間ぶりの解禁ですよ。
お弁当シフトも再開だ。
試験対策や勉強に付き合ってくださった、母の日を祝ってくださった…心優しい皆さまにお礼の意味をこめて、この休日はお弁当の仕込みとお菓子作りにたっぷり費やした。
皆さんにすこしでも喜んで頂けたらいいなぁ。
大好評のたこウィンナー、たこだけじゃなくてかにウィンナーも仕込んだ。
特別バージョン!
いつもはつけない顔やハチマキも用意した。
きっと驚いてくださるお顔を想像すると、今から嬉しくなってしまう。
久しぶりのキッチンで料理を満喫しながら、ちらっと視界の隅にある、花を見た。
母の日に頂いたお花たちは、二上さんのご厚意により、ロビーで預かって頂いている分も含め、どのこも元気いっぱい。
中でも、柾先輩がばさっと無造作にくださった、青いカーネーションたちはすごーく元気だ。
この間、なんとなくパソコンで検索してみた、品種改良で生み出されたムーンダスト。
だから、ふつうのお花たちより元気がなくなるのは早いかな、と心配だったんだけれど、なんのなんの、いちばん元気にしゃんと咲いている。
あんまりにもきれいで、たくさん頂いたものだから、台所にも数本飾っている。
花言葉に、びっくりしたんだよね…「永遠の幸福を願う」。
他の皆さんには丁重にお礼を伝えたのに、柾先輩にはちゃんと伝えられていない。
だってあの御方ときたら、急に渡してこられたし、淡々となさっておられたし…って、言い訳かなあ。
苦手、なんだよねえ…それも、かなり。
あの演じていらっしゃるらしい?よくわからない俺様っぷりとか、凄まじい男前っぷりとか、お弁当シフトの時のくだけっぷりとか、優月さんと満月さんのお相手をなさっておられる時の「休日の子供想いのお父さん」みたいな感じとか…
勿論、悪い御方ではない、掴みどころがないだけで。
何故か料理に詳しくて、打てば響くような反応に、もっとお聞きしたいことはあるのだけれど。
なにかとすぐ面白がられてはからかわれそうな気配と、生徒さんの頂点に君臨なさっておられる先輩ということに、すごく辟易してしまう。
でも、きれいなお花に罪はない、偶然にせよ俺は青色が大好きだし、頂いたことにはちゃんとお礼しなくっちゃね。
青色を見つめながら、息を吐いた。
『件名:はるくんへ
久し振り!元気にしてるかな?
試験明けに急で申し訳ない(>_<)
明日の早朝6時、なるべく誰にも見咎められない様に、こっそり理事長室へ来て欲しい。
大事な緊急のお話があります。
十八嘉之(・∀<)』
そんなメールが送られて来たのは、日曜の夕方のことだった。
「大事な緊急のお話」?
首を傾げてすぐ、顔面蒼白になった。
まさか俺、試験で大失態をやらかしたとか?!
目も当てられない程の欠点の嵐とか…?!
解放感に満たされていた、それがすべて緊張に変わったのは一瞬だった。
どうしよう…!
2011-03-08 09:30筆[ 266/761 ][*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]
- 戻る -
- 表紙へ戻る -