今日は、友だちと会う最後の日。
 ほんとうは明日までお休みだけれど、明日の昼過ぎには寮へ戻るつもりだから、次に皆と会えるのは夏だ。
 皆、俺に気を遣ってくれて、秀平たちの「秘密基地」に集まれるだけ集まり、夕ごはん大会を開いてくれた。
 なんだか懐かしい空気と、明日からはまたそれぞれの場所へ戻ることに、しんみりしてしまうなぁ…
 どうにも気落ちしがちな俺に、皆は明るく接してくれて、せっせと手際よくお手伝いしてくれている。

 …年、なのかねぇ…
 年を取ると、どうしても涙腺が弱くなってねぇ…
 ちょっとしたことに感動してしまうと言うか…ってあれ、皆も同い年の筈なのにねぇ…
 ま、しょぼくれてる場合じゃない、そろそろ夕ごはんの仕上げに入らなくっちゃ!
 「何か陽大、じーさんみてーにしょぼしょぼしてんな」
 粗熱が取れた酢飯に布巾をかぶせていたら、横から秀平がゲラゲラ笑い出した。
 「じーさんみてー」ですって?!

 「失礼な!秀平は世のおじいさま方を愚弄するつもり?!お年寄りは敬い丁重に労って差し上げねば、次世代を担う若者の恥!生きた歴史そのものなのですよ?!しょぼしょぼしてるとか笑ってるヒマがあるなら、しょぼしょぼしてる俺に代わって料理の采配でも振るってごらんなさいな!!黙して惜しみなく親切を実行する、それでこそ男でしょうが」
 きっと見据えたら、「すみませんでした」と今度は秀平がしょぼしょぼしてしまった。
 まったく口程にもないんだから。

 …秀平なりに、気遣ってくれているんだろうけれど。
 今でこそすこしは改善したけれども、何かと落ちこみやすい俺に対して、いつもふざけて構って来ては、笑い出すまで付き合ってくれる。
 さり気なく側にいてくれる。
 秀平は、大事な大事な、昔馴染みの親友だ。
 そんな秀平を見ていて、ふと想い出した。

 「そういえば、秀平が武士道と知り合いだったなんて、俺びっくりしちゃったよ」
 「ん?あー…武士道とは何かと小競り…じゃなくて、まぁ、何となく」
 「???ふーん…十八学園にはさ、仁と一成と幹部組の他にも、メンバー大勢いるんだ〜秀平の知り合いばっかりかもね?不思議な縁だねぇ。皆で会えたら楽しいだろうなぁーあの子たちもたくさんお手伝いしてくれるから、皆でごはんとかさ〜」
 「……んなワケあるか……」

 またまた〜、照れちゃって!
 秀平って意外に人見知りしちゃうタイプだからなー。
 武士道と秀平たちのノリ、結構共通しているから、会ったら絶対楽しくなると想うのに。
 よしよし、ここは俺に任せておきなさいね。
 いずれ芸術的な程に見事なセッティングして見せますから!
 にこにこしていたら、秀平がポツリとなにごとか呟いた…?


 「……実は、昴とか、その周辺とかも知ってっけどな…」


 「えー?今何か言った?聞こえなかったよー」
 「別に。こっちの話。俺のトップシークレット」
 「なんじゃそりゃー」
 「なんでしょうそりゃー!」
 そりゃー!の声と同時に、いきなり奇襲をかけて来た!
 俺の頭をくしゃくしゃに撫でまくるのが、秀平の趣味だ。
 わーわー避けながら、こういうふざけ合いも懐かしいなぁ、今秀平たちとほんとうに一緒にいるんだなぁと想った。

 「何にせよ、陽大が変わらずお前らしく過ごせてる様で良かった」
 「なになに?上手く纏めようとしちゃってる?」
 「からかうな」
 秀平に乱された髪は、乱した本人から優しい手つきで直された。
 男らしい指が自分の髪を梳くのを、不思議な心地良さで眺めた。
 「……陽大」
 「なに?」
 秀平の瞳が、やわらかく細められた。


 「十八学園に染まんなよ。寧ろ逆に、あの異世界をお前の色で染めてやれ。
 次は夏か…今のままの陽大に会えるの、楽しみにしてるから」


 「うん…???ありがとう、秀平」
 よくわからないけれど、心配してくれているのはわかったから、心からお礼を言った。
 俺もまた皆に会える日を心待ちに、十八学園で楽しみながらしっかり生活してみせるからね!
 笑顔を交わしたところで、あちらこちらから声がかかった。
 「オカン〜、寿司用の野菜、茹でて切った〜」
 「おかーさん、おかーさん、こちら錦糸卵組。用意が整いましたので至急ご連絡下さい」
 「はるママ、人参も型抜きオッケーだぜ!」
 「前略母上様、魚の準備も万端で御座います」
 「オカンったら、オトンといつまでイチャついてんの!?揚げ野菜サラダの準備も万端なのにっ」
  
 振り返ったら、笑顔の皆がいる。
 お手伝いの成果に胸を張っている。
 卒業しても尚、俺を友だちだと言ってくれる、温かい皆。
 「はい!皆ありがとう。流石皆だね、どれもバッチリ、ちゃんとできてるー!じゃ、今から仕上げるね!」
 「「「「「はーい!」」」」」

 お休み最終日の夕ごはんは、具だくさんバラ寿司と、塩豚肉のソテーと揚げ野菜のサラダ、薬味たっぷりの冷や奴、鰯のつみれ汁。
 お腹ぺっこぺこ!
 それは皆も同じのようで、口々にお腹へったー!と言いながら、てきぱきと動いてくれた。
 お馴染みのメンツで、息を合わせて作った夕ごはんは、それはそれはおいしいものだった。



 2011-02-25 22:57筆


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