85.大きくて小さなワンコの遠吠え(2)
木曜日。
今日からずっと、木曜日、はるとは生徒会のもの。
おいしいお弁当ごと、生徒会のもの。
こーちゃんとりっちゃんに言われて、おつかい、ゆーとみーと3人ではるとのお迎え。
ひさしはウルサイし、ふらふらして目立つから、こーちゃんとりっちゃんとお留守番。
おれ、お留守番じゃなくてよかった。
おとなしく生徒会の仕事、やっててよかった。
『真面目にやってりゃちゃんと報われる』って、昔、こーちゃんの言ってたとおりだ。
ひさしは不真面目だから、せっかくはるとが居るのに、残念なかんじ。
それでも先週からずっと、今までに比べれば、おとなしかったけど。
はるとのお迎え、たのしかった。
おれとゆーとみーとはると、4人で、ほんとは秘密にしなきゃいけない通路を使って、生徒会室へ近道。
はるとは、探検や冒険がだいすきなんだって言った。
だから、こういうのすっごくたのしいって。
はるとの目は、キラキラ、きれい。
はるとの笑顔は、ピカピカ、あったかぁく光ってる。
ゆーとみーと、3人で安心。
ほんとは秘密の道だけど、きっと、こーちゃんもりっちゃんも怒らないはず。
生徒会室に着いたら、はるとはますます、キラキラ、ピカピカになった。
「あのぅ〜会長さま、皆さま…お弁当の前に、探検させて頂きたいのですがっ!」
お願いって、両手を握りしめたはるとの勢いに、みんなでポカーン。
すぐにこーちゃんが爆笑して、ぶっ倒れそうに笑いながら、「どうぞ…?お好きな様に」って言った。
ふつーの生徒は、こーちゃんが笑おうものなら…うーん?いいや、こーちゃんがなにかちょっと呟いたり、ちょっと動くだけで、ぽーっとなる。
それに、こーちゃんが、ニセものの笑顔(営業スマイルって、自分で言ってた)じゃないことは、すごく珍しい。
生徒会室で、おれたちしかいないから、気は抜いてるけど。
なにをしても、ギラギラ光るこーちゃんは、学園の憧れ…うーん?いいや、王様…それも黒い王様だ。
帝王?
魔王???
なんか、そういう黒くて、悪いかんじだ。
みんなの注目を浴びる存在なのに、はるとは、そんなこーちゃんが笑っているのに、ムカッとしたみたいだった。
はるとは、すごいな。
やっぱり、みんなと違う。
おれは、こーちゃんをすごいなって想ってるけど、はるとはこーちゃんにぽーってしない。
それが、いい。
おれたちにとって、初等部の頃から似たようなかんじの、ゴーカな生徒会室。
あたりまえの、いつもの部屋。
めんどうくさい、仕事をしなくちゃいけないところだから、あんまり好きじゃない部屋だ。
はるとは、ひとつひとつにキラキラ、ピカピカして、「すごいすごい…!」って、うれしそうに探検した。
じっくり見てまわって、すっごくたのしそうで、おれもなんか、うれしくなった。
はるとが、あんまりにもキラキラだから、これからはもっと、大切に使わなくちゃと想った。
こーちゃんは、ずっと面白そうに笑って、はるとを見てた。
いつもはなにも想わないのに、はるとみたいに、おれもムカッとした。
こーちゃん、笑いすぎです。
それから、みんなでお弁当を食べました。
たこのウィンナー、いっぱいで、りっちゃんがいっぱい食べてしまった。
ゆーもみーも、いつもはあんまり食べない野菜、ぱくぱく食べていた。
ひさしはわーわー、うるさかった。
いつもよりにぎやかな、いつもの生徒会室で、お昼ごはん。
はるとがいるだけで、いつもより、ずっとたのしい、お昼ごはん。
おれも、いっぱい、食べた。
おいしい、おいしいって、みんなで食べながら。
こーちゃんと、はるとが、いつも通りみんなの面倒を見ながら。
2人にしかわからないこと、話していた。
みんなは、気づいていたのかな。
どんどんお弁当がなくなっていった。
ぱくぱく食べながら、おれは、こーちゃんとはるとを時々、見ていた。
とっても、たのしそうに、見えた。
はるとは、こーちゃんにぽーってならない。
こーちゃんは、学園にトクベツな人を作らない。
だけど、たのしそうだった。
2人にしかわからない、話がたくさん。
おれも、はるとのお手伝いをいっぱいしたら、話せるようになる…?
おれも、はるとといっぱい、話したい。
こーちゃんには、敵わない。
勝てない、けど。
おれも、いっぱいがんばるから、おれのことも見て。
はるとのお弁当、おいしいのに。
お腹いっぱいなのに、寂しくなるのはなんでだろう?
2011-02-11 11:54筆[ 248/761 ][*prev] [next#]
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