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 『まさかお前、好きなヤツができたとか言うんじゃねーだろーな…?』


 同調して、損しました。
 「何言ってんの、秀平……なんでそんな発想になるの?シリアスぶってふざけてるんでしょ、いつもみたいに…」
 『俺はいつだって(陽大の事に関してのみ)真剣だ』
 「はぁ…ははは、そうですかー」
 『陽大』
 「はいはい…いつもいつも心配してくれてる秀平だもんね…でもなんかベクトル違うって言うか…別次元って言うか…いつも的外れって言うか…うん、もう良いよ。礼央は?皆一緒に居るんでしょ。替わって」
 『誰が替わるか。惚れた腫れたの話じゃねーなら良い、話せよ。何かあったんだろ』
 やれやれ、まったく。

 「じゃあ、話すけど。俺、週明けから中学の時みたいに、皆さんとお弁当生活始まるんだー!なんか、嬉しくって!入学早々皆さん、優しくて親切な方ばかりでね、俺の作ったお弁当を食べてくださることになって…ぶっちゃけ、学業方面がかなり不安なんだけど…料理する環境は整いまくってるし、いろいろ勉強になりそうなんだ〜ああ、中学の時みたいだな、懐かしいなって想ったら、秀平と話したくなったわけですが、秀平がよくわからないことを言い出したので、ちょっと後悔している次第の昨今であります」
 『後悔すんなよ。……ふーん…中学ん時みたいにねぇ…悠も参加するんだよな?武士道とか、こ…じゃねぇ、何つーの、ソッチで目立ってるヤツらも参加すんのか?』
 「そうそう、武士道のいる3大勢力さん、ね。ちょっと緊張するけど、学校中にちゃんと公表して、大体の方々が応援して下さってるんだー楽しそうでしょ?俺、いろいろ頑張ろうと想って」
 『ふーん…』
 
 秀平が、ふと、息を吐いた。
 どうしたのって聞いたら、なんでもないって苦笑みたいな声が返って来た。
 『良かったな、陽大。お前が楽しそうで良かった。あんま根詰め過ぎずに程々に頑張れ。応援してる』
 「うん!ありがとー!ここで料理の腕を磨くよ!」
 『ああ…十八なら益々上達しそうだな。ブログ、ちゃんと書けよ。皆で楽しみにしてるし』
 「うん!いつも見てくれてありがとうね。お弁当ブログもアップするからね」
 『ああ』
 夢を知ってくれていて、いつも応援してくれる。
 話を聞いてくれる。
 やっぱり(かなり変な人だけど)、気心知れた秀平に電話してよかったなぁ…
 

 『次に会えんのは、夏休みか……』


 しみじみ想っていたら、秀平のちいさな呟きがあんまり聞こえなくて、慌てて聞き返したら、何でもないと言われた。
 首を傾げていたら、玄関でチャイムが鳴る音が聞こえた。
 あれ?!
 皆、もう来てくれたのかな。

 「ごめん秀平、誰か来たみたい。こっちからかけておいて申し訳ないけど、また連絡するね」
 『ああ。……陽大、俺らはさ、いつでも待ってる、お前の事。用事があろうとなかろうと、楽しくやってようと悩んでようと、お前はいつでも気にせず俺らをもっと頼れ。武士道とこ…じゃねー、武士道が居るなら心強いけど。お前が望むなら、俺らが十八に編入しても良いし?』
 「秀平さん……」
 『はは、怖い声出すなよ、お母さん。じゃあな、電話サンキュー。元気な声が聞けて良かった。奴等にも言っとく』
 「うん…急に電話してごめんね」
 『謝んな』

 「はいはい。じゃあ、またね。春先でも寒いから、秀平も皆も風邪引き易いんだし、ちゃんとあったかい格好しなさいね?ビタミンも睡眠もしっかり摂って、あんまりやんちゃし過ぎないように!」
 『へいへい』
 「返事は?!」
 『はい!』
 「よし!」
 ちょっと慌ただしくなっちゃったけれど、バイバイ言って、通話を切った。

 しみじみする間もなく、また鳴ったチャイムの音に「はいはい、ただ今!」と返事をしながら、どこか軽やかな気持ちで腰を上げた。



 2011-01-14 22:51筆


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