60.輝け!第1回弁当シフトの発表!
『前陽大の弁当シフト
・月曜日 1年A組
・火曜日 武士道
・水曜日 風紀委員会
・木曜日 生徒会
・金曜日 食堂orフリー
・土日祝日 フリー
<注意事項>
・弁当シフト実行に当たり、様々に生じる事柄の責任は、各代表が負うものとする
・前陽大の負担となる場合は、理由の如何に問わず、この弁当シフトは即刻廃止するものとする
・前陽大の学業や生活の妨げにならぬ様、あくまで前陽大の意思を尊重し、各自で配慮する
・前陽大本人より、弁当シフトの廃止或いは休止を求められた際、我々は理由を問わず応じるものとする
・各自の親衛隊(或いはそれに該当する生徒達)の理解を得ておく(理解が得られなかった者の参加は不可とする)
<各自の心構えについて>
・食物アレルギー、体調不良等、明確な理由無く弁当を食べ残さない、拒否しない事(深刻なアレルギーがある場合、各自であらかじめ申請しておく事)
・手伝える者は順次手伝う事
・食材費を現金で授与しない、学園全体や各家庭等を巻き込んだ騒動へ発展させない事
・弁当に必要な食材は前陽大と打ち合わせの上、現品で直接手渡す事(学園内外の手配については、各自の良識の範囲で行う事)
・昼休み内に食事を終わらせる事(各自の特権で前陽大を振り回さない事)
・早弁不可(見つけ次第、1ヵ月間弁当シフトから除外対象とする)
・前陽大に対し、各役職への強引な勧誘、入会禁止(本人の意思なく決裁した場合、全体の責任と見なし、永久に弁当シフトから除籍する)
※ルール違反には「3大勢力ペナルティー」も加算
※上記外で問題が発生した場合、その都度「3大勢力」で話し合い、早期解決を目指す(順次新ルール追加)
生徒会代表/柾 昴
風紀委員会代表/日和佐 誉
武士道代表/加々野井 仁』
渡されたA4判の、コピー紙よりも分厚い数枚の上質紙には、見やすい書式で細かなことが綴られていた。
わいわいとお手伝いしてくれている皆を視界に入れつつ、ていねいに一読させて頂いた。
なんだか、すごいことになっているなぁ…
俺の感想はそれに尽きる。
お弁当を皆さんとご一緒する。
一見ごく単純なこと、お昼を一緒に食べるなんて、学生らしい行為だと想うのだけれど。
まあ、料理に携わる仕事を夢見る、料理好きな俺はちょっと変わってるかも知れない。
でも、中学校の時はもっと、気軽な感じだった。
始まりは確か、たくさん作って来たから食べる?とか、小学校から付き合いのある友だちが多くて、俺がちいさい頃から台所に立っていることを知っている子が多かったからとか、そんな理由だった。
高校に上がって、やっぱり同じように、皆さんとお昼をご一緒する機会を持てたわけだけれども、なんだか規模が違う。
それは、ここが十八学園だからだろうか。
それとも、高校に上がったから、特別に細やかな配慮が必要になって来た…?
いや、十八学園だから、生徒さんのトップに立たれる方々と、たまたま知り合うことができたから、だろう。
それにしても、すごいなぁ…
「はるる、どぉ〜?パっと見、おかしかったら言って〜また後日でも良いけど、気になる所があったら何でも言って〜」
「ソレ、はるとのOK待ちの原案だから」
う?
「お、俺待ち…?」
「そ。俺らは勿論手伝うけど〜メインははるるじゃん〜?」
「あくまではるとの意見を尊重するスタイルなワケ」
なんとまぁ…
「なんだか恐縮だなぁ…いろいろ気遣って頂いて、大変有り難いですと皆さんにお伝えしてくれる?気を遣わせちゃって、却って申し訳ない想いでいっぱいだけど…」
想っていたよりも大事で、わーって感じなんだけれども。
実は、わくわくする気持ちが大きかったりする。
高校でもまた、誰かに俺の作ったものを食べてもらえるなんて。
こんなにも早く、いろんな御方と知り合って、いろんな御方に食べて頂ける機会があるなんて。
しかも、十八学園という、舌が肥えていらっしゃいそうな皆さんの集まり!
あんな立派な、大・大・大尊敬の山本春明料理人も関わっていらっしゃる食堂が皆さんの胃袋である、十八学園だよ?
こみ上げて来た笑いを堪える為に、俯いた俺を見て、仁と一成が心配そうに近寄って来てくれた。
「…ふふ……ふふふふふ……」
どうにも堪え切れずに笑ってしまった。
「はると…?」
「はるる〜…?」
「仁…!一成…!俺、どうしよう…!!」
「「どうした!?」」
本格的に心配そうな2人に、想わずタックルしてしまった。
「俺…めっちゃくちゃ楽しみ…!!お弁当シフト、すっごくすっごく楽しみ…!!どうしよう…!!何を作ろうかなって、いろんなおかずや季節のお弁当テーマが頭をよぎりまくってるよ、今!!わーわー…どうしようどうしよう!!来週からだよね?!来週からだよね?!あー、早く来週にならないかな!皆さん、何がお好きかな、何を気に入ってくれるかなぁ?武士道の皆も楽しみにしていてね!皆には『ホーム』で披露できなかった、傑作・名作・絶品お弁当の数々で攻めまくるから!!」
浮かれる俺に、仁も一成も笑って、いつの間にか様子を窺っていたらしい、武士道の皆も笑った。
「はるとならそう言うと想ったぜ!」
「あは〜はるるらし〜好き〜」
「「「「流石、俺らのお母さん!」」」」
皆で親指を立て合って、笑いに笑った夜だった。
2010-12-30 23:20筆[ 223/761 ][*prev] [next#]
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