36.チャラチャラツイートby 天谷悠(2)


 「「「「終わった…」」」」
 「……た。」

 皆のため息が部屋中に響いてる。
 俺だって、ため息吐きたい。
 俺だって、こーちゃんみたいにん〜って腕を伸ばしたい。
 俺だって、りっちゃんみたいになんか飲みたい。
 俺だって、ゆーとみーみたいにお菓子食べたい。
 俺だって、そーすけみたいにケータイ見たい。
 暴れまくって意思表示したら、やっと皆の視線が俺へ向けられた。

 「んー?悠の分も終わってんじゃん。偉いでちゅね〜ご褒美にこれ、剥がしてあげまちょうね〜」
 笑ってるのに虚ろな眼差しで、ガチでソッチ系のヤバい人なんじゃねーのっていう悪どい雰囲気のこーちゃん、俺の手元を覗き込むなり無表情に感心し、べりぃっ!
 口に×印で貼られてた、ガムテープ。
 容赦なく剥がすなり、せせら嘲笑った。
 「ぶはっ……はーはー……ヒドいよ!!何で俺だけこんな拘束されてんの?!拉致監禁拘束虐待なんてどんだけ!!戦時中の拷問かっつーのぉ〜!!」
 マジ泣けてクルし!!
 けど、こーちゃんの虚ろな笑顔は変わらず、ゆらりと俺の顔に影を落とした。

 「ふ―――――ん…?どの口がんなご大層な事を言えるのかねえ、悠…?戦時中の拷問かって…?んなもんじゃねえんだよ、この泰平の世の中では考えられねえけどよ…お望みなら俺の知識で把握してる限りの現代アレンジ版・本格派拷問、てめえの身で試してみるか…?あ゛ぁ?!」
 何なの、このヒト!!
 知ってたけど、知ってるけど、エグイよ!!
 扱い辛いよ、面倒くせーよ、怖いよ!!
 助けてくれるべき他の4人は、これまた悪どい顔で笑ってやがるし!!
 何で俺ばっかり、こんな目に?!

 「ヒドいヒドい…!!はるちゃんに言いつけてやるぅ〜!!はるちゃん、怒ったら怖いんだからねっ!!」
 「「「出た、前陽大依存」」」
 「……出た。」
 「てめえは同じ事しか言えねえのかっつの…クソガキが。好きなだけ言いつけてみやがれ、誰がどっからどう見たって俺らのが正しいっつの」
 「はるちゃんは、はるちゃんは…俺の事が大好きなんだからねっ!!」
 「「「「はいはい、はいはい、はいはい」」」」
 「……はい。」
 ムッカつくぅ〜〜!!
 こんな…こんな…椅子に縄でグルグルされてなきゃ、こーちゃんにだって遠慮なく殴りかかってやるのにぃ〜!!

 俺の不穏な視線に気づいたのか。
 こーちゃんの凶悪な眼差しが俺をガン見するなり、胸倉を掴まれた。
 バカ力の所為で、椅子ごと身体が浮いた。
 「…誰に向かって勝負挑む気だ、コラ…本気で戦りてえならいっくらでも相手してやるぜ…?今日の俺は機嫌が良い」
 「「「嘘つき」」」
 「……つき。」
 超!超!超!機嫌悪いクセにぃ〜!!
 しっかし、イカレ気味でも機嫌悪くても良くても「俺様生徒会長」演じてても、どアップでもイケメンって、こーちゃんってマジ気持ちワルっ!
 寝ててもイケメン、気持ちワルっ!!
 
 いーってしたら、舌打ちして手を離された。
 がしゃんっと椅子が音を立てる。
 「昴、生徒会の備品だ。壊さない様に」
 りっちゃん、俺は?!
 俺はどうでも良いの?!
 こーちゃんははいはい言いながら、気怠そうに欠伸してる。
 欠伸してもイケメンとか、マジパねぇ…気持ちワルっ!
 と、想ってたら。

 「ま…悠も今日ばっかりは仕事したし…いい加減、てめえの病的・前陽大依存聞くのも鬱陶しい。あいつの所、行きたきゃ行けば?但し、てめえの親衛隊は無論、他の生徒に悟られんじゃねえぞ。ミスったら悠、明日からてめえの居場所は此所に無え」

 …神がココに居た…!!

 「マジでっ?!マジでマジでマジで!!あぁん、こーちゃん、マジでイケメンンン〜!!!好き好きっ、チョー愛してるっ!!俺だってタチだけど、こーちゃんなら抱かれても良いぃ〜!!」
 「気色悪っ!!誰がてめえみてえなクソガキ相手にするか!!んなに飢えてねえっつの!!うっわ…マジ鳥肌立った…今年最強に気分悪ぃ…」
 「「「こーちゃん×バカ悠……吐きそう…」」」
 「……おえ。」
 何さ〜!!
 こっちだって本気じゃないもん〜!!
 いや、けど、こーちゃんとヤったらイロイロ勉強になりそぉだけど〜?
 宮成センパイも、こーちゃんとの後、急に巧くなったとか聞くしぃ〜?
 
 「お前、もうマジ早く出て行って。今日はカレーだってよ、早く行け。ほら早く行け行け、行ってくれ」
 カレー!!
 「やったぁ〜はるちゃんカレ〜〜!!」
 「「いいなぁ〜ゆーもみーも行きたい」」
 「……いい、な。」
 「あーはいはい、ゆーもみーも宗佑も行って来い。つか、悠を見とけ。このガキ、ぜってー俺が言った事わかってねえ」
 「「やったぁ…!!ちゃんと見とく!」」
 「……ちゃんと。OK。」
 っち、ゆー&みーと宗佑付きかぁ〜…
 ま、いっかぁ!!

 こーちゃんの気が変わらない内に、素早く椅子抜けの術で拘束を解いた。
 3人で「着替えてから行く〜?!」とか盛り上がって、テンション急上昇!! 
 何でこーちゃんが、今日のはるちゃんごはん知ってんのかって、疑問にも想わなかった。

 「オラ、皆まとめて行って来い。俺だってたまには育児から解放されてえ…」
 「基本的に苦労性だからな、昴」
 「莉人は?お前も興味あるんだろ。行って来いよ」
 「親衛隊に動きがある様だ」
 「…そっか…あー、遭遇したの見られてたかもな…」
 「お前も気を付けるべきだな。しかし、毎回ショッピングモール方面に何の用だ」
 「運動」
 「…お前も、本当に色々気を付けるべきだな」

 「は?悠と一緒にすんなよ。純粋な運動だっての」
 「はいはい」
 「莉人…やーらし〜…何を考えてるんですか、プリンス様〜」 
 「「「りっちゃん、ヤラしいの?ヤーラシ〜」
 「……ヤーラシ〜。」
 「……それなりに?」
 「「「「きゃー!認めたっ!!」」」」
 「……きゃっ。」

 はるちゃんに会えるの、すげぇ嬉し〜!!
 けど、こーちゃん達と一緒にいるのも、もうずっと当たり前になってて楽し〜んだよね。
 なんだかんだ面倒くせーコト多いけど、生徒会は楽し〜もんだ。


 ――それが、そう遠くない未来にぶっ壊れるなんて、今の俺にはまったく想像もできなかったけど。



 2010-11-23 09:36筆


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