30.学園を席巻するニャンニャンミー号


 『●新聞報道部/掲示板ジャック第223号●

 【ありがとう、さようなら…!】
 〜宮成朝広×渡久山凌、遂に破局!!〜
 〜柾昴、奪取か?!〜

 元生徒会長・宮成朝広(17)と、現風紀副委員長・渡久山凌(16)が破局した。
 歴代3代勢力中、異色と見られていたこのカップル、出逢いは幼等部、交際は中等部からスタート。
 生徒会長職で多忙な宮成を、実直な性質の渡久山が支える形で、意外にも長く続いたカップルだったが昨日終幕を迎えた。
 特別な兆しはなかったと、2人に近い関係者は曖昧に口を濁したが…
 本日昼休みに開催された「喧嘩道」にて、謎は解明。
 どうやら先達て生徒会長に就任した、柾昴(16)に原因が在りそうだ。

 「喧嘩道」は、当時中等部生徒会長だった柾本人の考案に因り実現された、学園黙認イベントである。
 考案者、支持者の参加も可能で、柾も過去幾度か参戦し、その都度勝ち戦を披露して来た。

 その「喧嘩道」にて、何と柾から宮成へ勝負を挑み、1ラウンド3分で柾の圧勝。
 柾は事前に2人の破局を耳にし、日頃から折り合いが悪かった宮成に対し怒りを覚え、「喧嘩道」へ至った模様だ。
 問題はここからだ。
 勝敗を喫した後、地に伏した宮成へ、柾は不可解な行動を取っている。
 観覧者の情報に因ると、「ありがとうございました」と一礼したとの事。
 これは只の「喧嘩道を受けて下さってありがとうございました」という、先輩へ対する礼なのだろうか。
 記者はそうは思わない。

 「渡久山と別れて下さってありがとうございました。これからは俺が彼を幸せにします」
 そんな意味に取れないだろうか。

 柾と宮成が犬猿の仲である事は、学園中が周知の事実だ。
 同じ生徒会でありながら、相対する風紀委員、武士道と比べるべくもない不仲に、関係者一同頭を痛めて来た。
 互いの性質、能力差等から相容れないのだろうと、単に相性の問題だと誰もが考えていただろう。
 しかし、渡久山を巡って三角関係だったとすれば、あの仲の悪さも容易に納得出来ないだろうか。
 柾は2人の交際当初から、強く反対していたと聞く。
 渡久山に恋情があったからこそ、交際を反対していた、破局と同時に「喧嘩道」で勝負してケジメを付けたのではないか。

 以前から、柾の親衛隊内でもみ消されて来た渡久山問題だが、近日中に全てが明るみに出るかも知れない。
 尚、宮成本人は一切に関してノーコメント。
 渡久山からは「お騒がせして申し訳ありません。個人の問題ですからそっとしておいて下さい。柾は関係ありません」と、当HP宛てにコメントが寄せられた。
 言うまでもないが、読者もお察しの通り、柾は怖いので直接聞けません(情報求む!)。
 
 柾といえば、今朝発刊のニャンニャンニャン(222)号に、外部生・前陽大(15)を庇う自筆コメントを落書きした事が、記憶に新しい(本人の謝罪求む!)。
 外部生に気があるのかと思いきや、本命はやはり渡久山なのか?


 新学期を迎えて、1つの恋が動き始めた…!


 我々新聞報道部は、存在自体がスキャンダラスながら、浮いた噂どころかフィアンセの陰すら見えない、柾の恋愛模様を今後も追求して行くと此所に誓う!(請う情報!)
 覚悟していろ、柾昴!!
 (風紀委員も3大勢力も、ニャンニャンニャン号に落書きした事を謝罪して下さい)

 〜以下、宮成と渡久山の交際ヒストリー&柾の極上遊び人っぷり(全て噂の範囲です。あらかじめご了承下さい)ヒストリー掲載〜』 



 お昼休みが終わって、5限目が始まって終わって、その休憩時間にはもう、号外が配られていた。
 ざわざわと、学校中が慌ただしいまま、6限が始まった。
 6限中も、各学年共にそれぞれ授業中であるのに、学校全体に落ち着かない空気が流れているように感じた。
 すべての授業が終わってHRが始まり、業田先生から厳しく?注意された。
 「お前ら全員わかってるだろうが、新聞報道部は学園で超!黙認の非公式部活動だ。記事の内容にいちいち左右されないように!もう高1だからな、その辺はわかってるよな?…っと、前は外部生か…お前自身が記事にもされて、かなり面食らってっだろうが気にすんなよー!ったく…ガキんちょが色恋沙汰なんざ…青いねぇ…」

 その時、廊下から声がかかった。
 「「ごーちゃ〜ん!まだぁ〜?」」
 この声は…!! 
 廊下側に目をやると、窓に張りついている、仁と一成…!!
 「あぁ?何だ、武士道の頭が揃って…あー、前と知り合いだっけか…」
 「す、すみません…先生、皆さま!HRの邪魔をしてしまって…後でキツく叱っておきますから!」
 「お、はると〜!唐揚げサンキューな〜美味かった〜」
 「はるる〜!昨日ぶり〜!」
 居たたまれなくて想わず手を上げて立ち上がり、謝罪したところで、仁と一成が手をのんきに振って来たものだから。
 つい。

 「こらっ!!仮にも先輩ともあろう者が、後輩のHRの邪魔をして騒ぎ立て、皆さまに迷惑をかけるとはなにごとですか!!いけませんっ!!静かに待っていなさい!!大体、来るなら来るでメールなり電話なり、あらかじめ寄越すのが仁義でしょうが!!」
 「「はぁい…すみませんでした」」
 しょんぼりと姿を消す2人。
 くすくす、忍び笑いがあちこちから聞こえて来る教室内。
 「すすす、すみませんでした…!!俺こそ騒いで大変申し訳ありません…!!先生、どうか続きをお願い致します…」

 穴があったら喜んで入ります…
 そんな気持ちで着席したら、ぽかんとなさっていた業田先生が、大爆笑。
 「ぶあっははは…!前、記事通りっつか、記事以上に『お母さん』やってんだな…!!あ、あの2人が…武士道が…!素直に謝るって…前代未聞!!ははっ…腹痛いっ…!!」
 先生の大爆笑に合わせて、お昼をご一緒した皆さまも笑い声を上げられた。
 あわわ…!
 クラス中がひとしきり笑った後、先生は涙を拭いながら手を振った。
 「ほい、じゃー解散!ひー…マジ腹やべー…とっとと解散!!また明日なー!あ、お前等、記事であんまり盛り上がるなよ?お前らが浮かれてっと、俺が職員会議でどやされんだからなー」

 最後にまた注意?された後、先生に挨拶をして、HRは終了になった。
 合原さんは解散と同時に、どこか硬いお顔で足早に教室を出て行かれた。
 …お昼休みの時から、お顔色が優れない…大丈夫だろうか?
 音成さんは部活があるからって、楽しそうに出て行った。
 結局5限も6限も寝ていた美山さんは、用事があるから行くけど、晩には寮へ戻るってどこかへ去って行った。
 一舎さんのお姿を、今日は1度もお見かけしていない…初日からどうなさったのだろう?
 心配になりつつ、まだクスクス笑っておられる他の皆さんとも挨拶を交わしてから、待っている仁と一成の側へ向かった。

 俺が号外を読んだのは、その帰り道だった。



 2010-11-11 23:38筆


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