7.腹がふくれたら出陣じゃー!
無事にお弁当完成!!
美山さんがとっても器用な御方だったから、すっごく助かった〜…
うん、厚焼き卵も1本目と3本目、すこしばかりこんがりだけれど、なんのおいしそうにできている。
美山さんにお疲れさまでしたとありがとうございますを告げて、時計を見たら、7時半に差しかかろうとしていた。
おっと危ない、危ない!
手を洗って、いそいそとリビングへ移動、できたての朝ごはんに手を合わせた。
「すげー……つくね味噌汁、美味い……」
「なかなか合うでしょ〜?お味噌汁って、具だくさんにしてもシンプルにしてもおいしいから、バリエーション幅広くていいんですよね〜美山さん、納豆はだいじょうぶですか」
「あぁ…この梅干しすげー…納豆と合う…」
「母が漬けた自家製なんですよ〜お気に召して頂けたなら幸いです。美山さんがなんでも食べられる方でほっとしました」
「このドレッシング、すげー…」
「俺特製、自慢のオニオン和風ドレッシングなんです。いろんな料理に合うんですよ〜」
ひとつひとつに感心しながら、パクパク食べてくださる美山さん。
そのお姿がとっても微笑ましくて、入寮初日より打ち解けられたようでうれしい。
俺まで、いつもの何てことのないごはんを、とびきりおいしく感じてしまう。
誰かといっしょの食卓は、ほんとうにいいものだ。
いっしょに食事してくださる御方に恵まれて、よかったぁ〜…
しかし、たのしい食事の時間を、のんびりまったり満喫しているワケには行かない。
朝ごはんを食べ終わった後、あったかい番茶と桜サブレで軽〜く一服。
その後は、怒濤の後片づけ!
美山さんが洗いものも覚えたいと仰った、自発的に動ける優秀な生徒さんだ。
やる気の芽は育ててみせます!
かくして、食器洗いを伝授。
油やソース類の汚れはウエス…要らない衣類等、布類をカットしたもの…で拭き取り、ウエスはゴミ箱へ。
ウチのスポンジは特別泡立ちがよく、食器をピカピカに仕上げる繊維でできているから、洗剤は控え目に。
お皿や調理器具の種類に因って、取り扱いに気をつけること。
自然乾燥させるもの、すぐ水気を拭いたほうがいいものの区別。
手短かにお伝えしながら、美山さんが洗いものしてくださっている隣で、お弁当を包んだ。
今日は重箱5段重ね!
漆風のシンプルなお重箱…いつか、本物の漆塗りお重箱を手にするのが夢です…これはこれでたっぷり入るから、気に入っているんだ。
1の重には、昨日のポテトサラダを筆頭に、五目きんぴら、ひじきと大豆煮、いろいろ野菜のピクルス、菜の花のお浸し、空き時間で作ったたこさんウィンナーなんかが、ぎゅうぎゅう入っている。
2の重には、美山さん作・厚焼き卵がぎっしり!
3と4の重には、唐揚げずっしり(ひとつは武士道にあげる予定だ)!
5の重には、おにぎりの山どっしり(具はツナマヨネーズ、おかかチーズ、昆布、梅干し、塩むすび、海苔は塩むすび以外は後巻き)!
しっかりと、お気にいりの黒白ストライプが潔い風呂敷でくるみ込んで、お重用に使っている大きな帆布のトートバッグに入れた。
さて、最後は自分の準備!
それぞれの部屋へ駆けこんで、制服を身に着け、姿見でさらっとチェック。
しかし…ほんとう、七五三みたいだなぁ……
いつか、この制服がしっくり似合う日が来るんだろうか…俺も3年生になったら、着こなせているのかな…
哀愁を感じながら、用意を整えた。
初日だから荷物が重いっ!
この重みがますます、初日だ!!って心身引き締まりますなぁ…うんうん。
今日はなんとか、自分でネクタイを結べた。
もっと練習しないとねぇ…武士道の皆を練習台にさせてもらおう、背中から結べるようになったら自分のも上手くできるようになる筈だ。
指定鞄は肩がけして、お弁当トートは大切に抱えこんだ。
「……すげー荷物……」
そう仰った美山さんは、なんだか身軽なご様子だ。
なぜだろう、スマートなお荷物まとめ術でもあるのかな?
謎に想いつつ、時計が8時を過ぎているのを見て、美山さんを急かした。
「では、行きましょうか!!」
「押忍」
心優しい美山さんに、またもカードキーの施錠を譲って頂けた。
なんて心の広い御方だろう…ご恩返しに、お昼になったら、唐揚げを多めに召し上がって頂こう。
さあ!
いよいよ、高校1年生最初の1学期初日…!!
わー、ドキドキする!!
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