2.早速、王子さまと出会う
そうしてのんびり歩き続ける内、前方に門柱発見!
「ナントカ宮殿」みたいになにやら豪華な門構えだ、とっても高い、俺の身長の2倍はあるだろうか。
ほへ〜っと見上げてから、瀟洒なプレートに「十八(とわ)学園高等部」の文字が刻まれていることに気づいた。
うん、間違いないですぞー!
うれしくなって、若干小走りで門へ向かったら。
かすかに開いた門の前には、辺りの景色や建物を凌駕する、それは壮麗なオーラを放つ人が、優雅な立ち姿で腕時計を眺めていらっしゃった。
ここの関係者さんだろうけれど。
大人?
それとも、俺と同じ、子供?
すごーく落ち着いた雰囲気の男の人だ。
俺の気配に気づかれたのか、ふと腕時計から顔を上げこちらを見た、その整ったお顔立ちに息を呑んだ。
…近年、整ったお顔立ちに若干の免疫はついてきたものの…
この御方はまた違った種類の、眉目秀麗さを誇っていらっしゃる。
涼しげで穏やかな瞳は、薄いきれいな茶色。
瞳を守るように縁どる睫毛は、しっかり濃くて長い。
それらを隠す、というより彩るように、銀色の細いフレームがついた眼鏡をかけておられる。
薄い唇はきりっと引き締まっていて、意思の強さを感じさせた。
亜麻色の肩についた長めの髪が、やわらかく風に揺らいでいる。
どんなに頑張っても背が伸びない俺とは違って(いえ、諦めませんけれどもね!)、余裕で百七十超えしてるであろうそのスタイルは、腰の位置が高く、手足も長い。
スラリと細身だけれど、スポーツかなにかで鍛えて引き締まっている、っていう印象だ。
俺を見て、次に俺の荷物へと視線を移して、僅かに目を見張りながら、その御方はふわりと微笑った。
黙して立っているお姿からは、隙のないどこか厳しい印象だったけれど、微笑ったお顔を拝見して驚いた。
なんて軽やかでやわらかい微笑だろう。
すこし緊張していた空気が、瞬間でふわっとやわらかくなって、急に明るくなったように感じる。
なんだろう。
この日本人離れした美形さんっぷり、このスタイルっぷり、極めつけはこの笑顔…まさに絵本に出てくる、幾多の試練を軽々と乗り越え堂々と勝利を収める王子さまじゃありませんか!
はっ!
王子さまが尊い笑顔のまま、口を開こうとなさっておられる。
俺、英語はまったくダメなんですが…!
「やあ。君が今日から入寮する、外部新入生の前陽大(すすめ・はると)君かな」
よ、よかったぁ〜…王子さまは日本語が流暢なご様子です。
なるほど、王子さまともなると、各国の言語に精通しておられるのでしょう。
ほっとして、失礼にならないよう距離感を保ちながら、おそるおそる近寄らせていただいた。
「は、はい…本日付けでこちらにお世話になります、前陽大と申します。あの…あなたさまは…」
何故、俺の名などを?
笑顔の絶えない王子さまは、俺の?マークをすんなり吹き飛ばしてくださった。
「これは失礼…僕は理事長から君の送迎を言付かった、十八学園高等部生徒会副会長、この春から二年に進級する日景館莉人(ひかげだて・りひと)です」
わぁ…!
王子さまは、ほんとうに日本語ペラペラだ。
スマートな自己紹介に、あわあわとお辞儀を返すのが精一杯の俺を、王子さまは尚のことキラキラ光り輝く笑顔で、善きかな善きかなと言わんばかりに見守ってくださって。
「前君、十八学園へようこそ!」
2010-03-24筆[ 16/761 ][*prev] [next#]
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