35.こうして夜は更けてゆきました


 はー…
 満喫・満足・満腹だ。
 おいしいごはんとおいしいおやつって、どうしてこうも、人をしあわせにさせるんでしょうねぇ…
 「ええと…現代国語、日本史、数学……あ、ノートノート!」
 すっかり満たされた現在、明日の準備に励んでおります。
 明日から授業が始まるからって、気を利かせてくれた武士道の皆は、とても素晴らしいバニラアイスを堪能後、人生ゲーム3回戦を終えて早々に去って行った。
 美山さんも、今日はずっと寝ていたそうだけど、まだ寝足りない、今日はもう寝るって眠そうに仰ったので、先にお風呂を譲った。

 美山さんが上がった後、俺もすぐ入浴。
 ブログを更新し、友達や武士道、家族とメールのやりとりをして、明日へ想いを馳せているのだけれど…
 「あ〜…もう…また〜…?」
 授業の準備は、いつまでも捗らなかった。
 メールだ。
 メールが、俺の手を止める。
 先程から延々と続くメールのやりとり…
 約1名とのメールの攻防に、神経が落ち着かない。
 他の皆とは、1回のやりとりで「おやすみ」まで終了したのに…
 何度「おやすみ」を書いても、すぐまた送られてくるメール。
 一体、何回目だろう?

 この怒濤のやりとり、懐かし過ぎて、遠い眼差しになってしまう。
 窓の外に滲んでいる、うっすらした月の姿を、ぼうっと眺めていたら。
 携帯が怒ったように、数10秒単位でメールを受信し始めた。

 この送信の早さ…
 過去、この子、ここまで早くなかったと想う。
 十八学園での生活の賜物なのだろうか?
 俺ははっきり言って、パソコンから打った方が早いぐらい、携帯メールには親しんでいないものだから、返信する間が掴めずおろおろしてしまう。
 メールを確認するのも気が引ける… 
 とにかく、明日の準備を完全に終わらせてしまおう!!
 だんだん瞼も重くなってきたことだし!
 申し訳ないけど、それまではマナーモードに設定して、スルーさせて頂きます!

 指定の学生鞄に教科書とノート、筆記具類を詰めて。
 えーと、ハンカチ、チリ紙…明日、渡久山先輩に会えるかなぁ…いつ会えるかわからないけれど、一応お借りしたハンカチも持って行きましょう。
 エチケットブラシ代わりの、ミニコロコロも持って行きましょうね!
 制服が格好いいだけに、ちょっと埃なんかがついただけでも台無しだから!
 あとは、いつものアイデアノート・メモ帳版もしっかり…これは、急に想いついたレシピやものごとなんかを書き留めるために使う、とても大事な持ち物の1つだ。
 学校が旧いだけに、乾燥した時用の自家製のど飴・春限定桜バージョンと…絆創膏、オロナイン、鎮痛剤などの応急セット、おおっと、ミニソーイングセットも忘れないようにね!
 まだ意外に冷えるから、カイロも持って行こう。
 大事な大事なカードはブレザーの内ポケット、生徒手帳は胸ポケットに入れてっと。
 
 うん、よしよし!
 こんなものじゃないでしょうか?
 ようし、明日も元気に楽しく過ごすぞー!!
 準備が終わったところで、もう寝よう!とベッドに近寄り、枕元に置いた携帯電話に視線を向けて。
 夢中で、すっかり忘れていた。
 
 あの子…ひーちゃんからのメール返信のこと。

 ベッドに腰かけ、恐る恐る開いた画面に浮かび上がる、「受信メール:44件」の文字…!
 眠い目をこすりながら、順番に見て行った。

 
 『この3日間、はるちゃんに全然会えてないよう〜(泣)』
 『寂しいよう〜(号泣)』
 『寂しくて死んじゃうっ!俺、前世ウサギだもん!!(;_;)』
 『会いたいよう〜(>///<)』
 『はるちゃんの作ったオムライスが食べたいよう〜(愛)』
 『卵の上にHISASHI☆って書いて欲し〜♪♪(愛)』
 『(愛)(愛)(*・ω・*)(愛)(愛)』
 『はるちゃ〜ん?』
 『あれ〜???もう寝た〜?』
 『ねえ、ねえ』
 『……もしかして、怒った……?(^^;;)』
 『まさか、美山にナンカされてたり?!』
 『も〜だから生徒会特権で部屋替えしようって言ってるじゃ〜ん!(>///<)ノシ』
 『俺の部屋に来てよ〜快適だよ〜ん☆』
 『つか、同棲しよ?』
 『おーい!お返事くださ〜い』
 『はるちゃ〜ん!』
 『アレ?』
 『なんなら俺、今なら生徒会のヤツらも居ねぇし、ソッチ行くよ〜ん☆(^ε^)(愛)』
 『行っちゃうよ〜ん!』
 『もう、着いちゃった』
 『(愛)(*=∀=*)(愛)』
 『なんちゃって〜!』
 『ウッソだよ〜ん!』
 『はるちゃんのOKない限り、行きませんニョ』
 『来て欲しかったぁ〜?(*^∀^*)』
 『なんちゃって〜!ネ☆』
 『冗談だからね〜!』
 『ねえねえ…』
 『ねえ、マジなんで返事してくんないの…』
 『怒ってる…?』
 『謝るからさぁ…(愛)(;o;)(愛)』
 『はるちゃん…?』
 『寂しい…』
 

 ………。
 ひーちゃん……
 あなたって子は……………。
 途中で読むのを断念し、俺はおおきな欠伸と、深いため息をひとつ。
 返信メールを作成して、送信し、電源を落とした状態で充電器へ設置、ベッドの中へ潜りこんだ。
 

 『件名:もう寝なさい

 朝晩冷えるから、あったかくして寝なさいね。
 明日も生徒会など高校生活、ひーちゃんらしく格好良く頑張ってね。
 格好良いひーちゃんの姿、朝礼で見られたらいいな。
 楽しみにしています。
 おやすみなさい。

 陽大』
 


 2010-10-06 22:47筆


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