32.お母さんと7匹の子狼
では!
「始めます」
キッチンに集合した皆を前に、おごそかに一礼した。
「「「「「「おおー…!」」」」」」
パチパチと拍手が集まり、顔を上げたら、美山さんも拍手してくださっていたので、照れてしまった。
「じゃ、皆はもう具材を煮始めてて。俺は鶏つくねとポテサラ作って持って行くから。一成、手伝ってね」
「アイアイサ〜!」
「「「「「アイアイサー!固いものから煮ます!」」」」」
「そう!皆、ちゃあんと覚えてて偉いなぁ…!白菜の固いところからね」
誉めたら皆、線目になって口笛を吹きながら、仁を先頭にリビングへ去って行った。
さて、ちゃっちゃと副菜作りを…と、一成を振り返ったら。
所在なさそうに立っている美山さんと、視線が合った。
「……何か、手伝うか?」
おおー…!
美山さんったらできる人!!
自らお手伝いを申し出てくださるとは…美山さんも武士道と同じく、見た目を裏切らない将来有望な男子なんだなぁ…
3日目にして、すこし距離が縮まったようでうれしい。
やっぱり食事を共にすることって、とっても大切だなぁ。
人と人を結びつける、胃が親しくなれば、ほっと安心できる。
「ありがとうございます!美山さんもよかったら、武士道の皆と鍋チェックして来てください」
「……わかった」
「俺たちもすぐ行きますねー」
「あぁ…」
なんだか美山さんにちょっと違和感を感じて、リビングへ向かう後ろ姿を眺めていたら、くいっと腕を引かれた。
「はるる〜俺がつくね担当〜?えのき、入れるヤツだよね〜?」
「あ、そうそう!さすが一成!よく覚えてる〜ひゅーひゅー!」
「ふっふん、まぁね〜つかはるる、テンション高いね〜」
「お腹空いてるからね!!」
「じゃ、急ごうぜ〜」
「お〜!」
というわけで、ちゃっちゃと作業スタート!
あらかじめ茹でておいてくれた人参を、5センチぐらいの長さに千切りする。
続いて、荒くつぶしたじゃがいも(細かくつぶすのもすきだけど、今日はほっこり茹であがってたから形が残るぐらい)の中へ、切った人参を入れて、1度ざっくり混ぜる。
味つけは、マヨネーズ、塩、ホワイトペッパーと、シンプルに。
味を馴染ませたところで、刻んだ生パセリを入れ、ざっくり混ぜる。
レタスをしいた器(レタスでくるんで食べられるため)に盛って、みじん切りしてカリッカリに揚げ焼いた、うっすらガーリック風味のオニオンを上にぱらり、で、ポテトサラダの完成!
他に、コーンや薄く切ったきゅうり、オニオンスライス、ハムを混ぜたり、オニオンと一緒に揚げ焼きしたベーコンをトッピングしてもおいしい。
今日はシンプルに!
あったかい鍋のお供に、ひやっこい副菜があったら、ますますお箸が進むんだよねぇ。
「はるる〜?」
「ん〜?」
それぞれの作業をしながら、ふと、一成が呟くように言った。
「はるるは〜俺ら武士道のお母さんだよね〜?いつまでも、ガッコ卒業してもさ〜」
「うん…?俺は皆と、ずうううううっと仲よくしていきたいなぁって想ってるよーそれこそ、おじいちゃんになってもさー」
「ぶっ…ジイさんになってもって〜…あはは、はるるらし〜飛躍っぷり!」
「え〜?だって、それぐらい長くお付き合いできたらすごくない?」
「そうだね〜それぐらい先を見通してくれてんだったら〜安心〜」
「???どうかした、一成?何かあった…?」
「な〜んも!よっしゃ、ミンチなった〜」
そんなことを話している間に、一成が包丁で叩いてつぶしてくれた、鶏もも肉のミンチができた。
お店で挽いてもらうのもいいんだけれど…今日みたいにハンバーグ並にメインで使ったりしない時は、包丁でミンチにするのがおいしくって好きだ。
できたてミンチに、1センチぐらいの長さに切ったエノキを入れ、ざっくり混ぜる。
卵、片栗粉、酒、塩、醤油、七味を各少々入れ、今度はしっかりと混ぜ合わせる。
鶏つくねの完成!
えのきの歯ごたえがおいしいんだ、武士道の皆も大好物なんだよねぇ…
「「できた〜!!」」
「「「「「おぉ…!」」」」」
キッチンを簡単に片付けてから一成とリビングへ向かった。
タイミングよく、鍋の具材も煮え頃だった。
手早く人数分のつくねを落とし入れ、豆腐も入れて、ごくりと喉を鳴らす皆に着席を促した。
「いただきますの前に、諸注意を!其の1、煮汁を飲み過ぎない!なぜなら後で雑炊が待ってるから!」
「「「「「「其の1、煮汁を飲み過ぎない!」」」」」」
「其の2、つくねと手羽元を仲間の分まで奪わない!」
「「「「「「其の2、仲間の分まで奪わない!」」」」」」
「其の3、とにかく集中、湯気ごとたっぷり頂く!」」」」」」
「「「「「「其の3、とにかく集中!」」」」」」
「美山さんも!わかりましたね?!」
「…あ、あぁ…」
「よぅし……では、いざ!!」
いただきまーす!!
2010-10-01 23:14筆[ 159/761 ][*prev] [next#]
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