9.お母さん、双子の子猫と遊ぶ


 同盟にお仲間入りさせて頂いたところで、同盟会長さま、副会長さま共に、サブレを入れて来た缶の存在に気づかれた。
 「「甘いにおいがする〜」」
 くんくん、ふんふん、鼻をひくつかせる仕草、ああもう、ほんとう子猫みたいだ!
 しかし、「男のロマン」同盟者たるもの、その責任者さまに失言、暴言、NGワードは厳禁。
 礼儀を持って接っさねばなるまいて!
 「よろしければ召し上がられますか?桜サブレです」
 「「!!!食べるっ!!!」」

 かくして、恐縮ながら俺を真ん中にベンチへ座り、番茶を分け合い、サブレをかじりながらのんびりお茶タイムへ突入したのでありました。
 ほろほろとクズをこぼす御2方のお世話をさせて頂きながら、お花見兼日向ぼっこ。
 「さくさく〜」
 「しっと〜り」
 「「甘さひかえめ〜…」」
 目を細める子ね…御2方の様子に、俺の頬も綻びまくった。
 「お気に召して頂けたなら幸いですー」
 「「気に入った!」」
 「よかったですー」
 「「男のロマン同盟にピッタリお菓子…!これ、どこで売ってる?」」

 なんと、そんなにもお口に合ったのだろうか!
 「ありがとうございます!誠に僭越ながら、俺が作ったもので…」
 「「何ぃ?!」」
 子猫ならばきっと、目を丸くして耳をピン!と立て、背中も尻尾の毛も逆立った状態だろうか?
 驚くお姿にも線目になってしまう。
 「前陽大の手作り…!?」
 「前陽大って天才…!?」
 「わー…そんな風に驚いて頂けると、大変恐縮ですが…うれしいですー!でもサブレって、意外に簡単にできるものなんですよー」

 サブレをかじったまま、わなわな震える御2方。
 赤面する俺、しながらもサブレクズのお世話は忘れない。
 「「さすが、食堂部なだけある…!!よし、同盟とのかけもちを認めよう!!」」
 わぁ、七々原さまたちまで、食堂部のことを覚えていらっしゃる…!
 それほどに面妖な発言をしてしまったのだろう…
 覆水盆に返らず、しかし、恥ずかしい。
 せめて、アイドルさま方だけの記憶に留まっていることを願います。

 「…ええとですね、食堂部のことは生徒会長さまにもお話しましたが、うっかり口から飛び出た妄想でして…本気で食堂部を作ろうとか、今はあまり想っていないと言いますか…」


 「「せーとかいちょー…!!こーちゃん!!」」


 いきなり大声を出した御2方に、想いっきりびくっと驚いてしまった。
 驚きおののく俺に、七々原さまたちは困惑したお顔を向けられた。
 非常に言いにくそうに、ぼそぼそと交互に呟かれたその内容。
 俺は、目が点になった。

 「あのねぇ…前陽大…言いにくいんだけどねぇ…」
 「でも…前陽大のために、言っておくけどねぇ…」
 「ここ、こーちゃんのテリトリーなんだよ?」
 「ここ、こーちゃん以外は立ち入り禁止なの」
 「だから、こーちゃんの親衛隊も近づかない」
 「だから、僕たちだってめったに近づかない」
 「こーちゃんの秘密基地だから」
 「こーちゃんのオアシスだから」
 「ここにある桜も、こーちゃんの寄付」
 「ベンチも花壇も、こーちゃんの寄付」
 
 なんですってー…!!
 会長さま…!!
 やはり、油断ならぬ掴めない御方だー…!!



 2010-09-01 22:43筆


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