8.お母さん、双子の子猫を拾う


 なんてお可愛らしい…!!
 お揃いの格好、ヘアスタイルが、お2人のルックスにハマって、ほんとうによく似合っていらっしゃる。
 まさに兄弟子猫そのものの愛らしさ…!
 つい先程、生徒会長さまという巨大な存在感の見目麗しい御方…言ってみればアクが強いと言うか、刺激が強いと言うか…がいらっしゃっただけに、殊更このお可愛らしさに癒される…
 想わず線目になる俺でした。

 俺の不用意な叫びに、七々原さまたちはびくっと肩を震わせ、もしかしたら立ち去ってしまわれるかなと想っていたら。

 繋いだ手をぶらぶらさせながら、頬を染め、もじもじとブーツの爪先で地面を蹴っていらっしゃる
 
 お可愛らしい…!!
 また叫びそうになったけれども、なんとか堪えました。

 「かわいい、だって〜…どう想う?ゆー」
 「かわいい、だって〜…本当かな?みー」
 地面をぐりぐりしつつ、七々原さまたちは顔を突き合わせて、わざとのように唇を尖らせている。
 「「僕らだって、男だから」」
 「「かわいいなんて言われる筋合いない」」
 「「ホントは男らしくカッコ良いって言われたい」」
 「「かわいいなんて嬉しくない」」
 「「こーちゃんみたいに、大人の男っぽくなりたい」」
 こくり、こくりと頷き合って、くるりとこちらを振り向かれた。

 「「だから前陽大、お前にそんなこと言われても、僕らはちっとも嬉しくなんかない」」

 あぁ…なるほど〜…
 俺は頷いて、苦笑した。
 「不用意な発言をしてしまい大変失礼致しました。すみませんでした」
 「「ふんっ」」
 「不躾ながら、七々原さまたちのお気持ちがよくわかります」
 「「……はぁ?」」
 「俺も男ですから…もっと身長が欲しいとか、がっしりした体型になりたいとか…なにぶん、周りが背の高い御方ばかりで、頭を撫でられることが多いんです。弟みたいにかわいがられるのはうれしいけれど、実は内心複雑だったり…まだ成長期ですから、希望は捨てませんけれど。
 あ、俺は七々原さまたちのように、容姿が整っていないものですから、『かわいい』と言われることはないんですよ。だから、余計にコンプレックスだらけと言うか…」

 もそもそとコンプレックスを吐露したところで、七々原さまたちがすぐ側まですっ飛んで来られた。
 まさに猫のように俊敏な動きだ。
 両隣から、大きなキャッツアイに、ひたと見つめられた。
 「前陽大も、背ぇ伸びたい?」
 「はい、それはもう!せめて170は超えたいです」
 「前陽大も、がっしり体型になりたい?」
 「はい、それはもう!実はひっそり腹筋したり…割れた腹筋が憧れです」
 「「前陽大も、男っぽい、カッコ良いって言われたい?」」
 「はい、それはもう!男の夢ですよね…俺ときたら、『お母さん』としか言われなくって…」

 がしいっ、がしいっと、双方向から手を握られた。
 「「仲間…!!」」
 「へ?」
 「「前陽大、よくわかってる…!!」」
 「そうですか…?」
 「「偉い…!!男のロマンをよくわかってて、偉い!!」」
 「そ、そうですかね…えへへ…」
 熱の隠った4つの瞳で見つめられて、誉められて。


 「「今日から仲間だ!!『男のロマン同盟』へようこそ!!」」


 男のロマン同盟…?!

 男のロマン…!!

 なんて素敵な響き…!!
 堅い握手を交わしながら、3人揃って身長が同じぐらいだということに気づき、ますます安心を深めながら。
 「あの…?一体、どういった同盟さまなんでしょうか…?」
 委員会&部活動のしおりには、何も記載されていなかったと想う。
 そんな素敵な名前があれば、俺が見逃す筈はない。
 恍惚となさっておられた、七々原さまたちは、得意気に目を細めてえっへんとばかりに答えてくださった。

 「ゆーが会長」
 「みーが副会長」
 「「前陽大が最高幹部の、秘密同盟」」
 秘密同盟…?!
 「男のロマンを追い求めて、日々研究を怠らない!」
 「自己鍛錬で効果があったものは、必ず報告する!」
 「現実の『男のロマン』を体現している人間をガン見!」
 「主な対象は、こーちゃん!ひたすらガン見しまくる!」
 「身長が170オーバーしたら卒業!」
 「腹筋割れて逞しくなったら卒業!」

 なんと素晴らしい、秘密同盟…!!

 「わかりました…!俺なんかでよろしければ、是非加入させてください!」
 「「おう!どんと来い!!」」
 再び、がっしぃっと握手を交わしながら。
 「けれども、それぞれの個性や存在は尊重してもいいですよね…?俺は七々原さまたちのお気持ちは十分にお察ししますが、その…御2人のお可愛らしさは、とても尊いものだと想います。将来はきっと男らしく成長為さることでしょうが、今は今で貴重なものかと…」
 
 七々原さまたちは、顔を見合わせて、再び地面を蹴り始めた。
 「「前陽大も、今のままでもいい…豆柴みたいで」」
 ぽそっと呟かれたデュエットに、俺は笑った。
 「ありがとうございます!けれどもお互い、男らしさを目指して奮闘しましょうね!」
 「「おう!!」」
 ぱあっと瞳を輝かせ、元気に拳を振り上げる御2人は、やっぱりかわいらしいなあとつい想ってしまった。



 2010-08-31 10:00筆


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