74.腹が膨れた後は戦、だけど


 「また〜?仁、子供産まれ過ぎ〜」
 「おー、もう車に乗んねぇんだけど…いっか、そこらに転がしとこ。おっし、オラ、祝儀寄越せやヤロー共」
 「「「「ご出産オメデトウゴザイマス」」」」
 「……マス。」
 「あぁ?こら、無門!俺の目をごまかせると想ってんのか…?足りねーだろうがよ、金額がよ」
 「…だって。だって、アイドル、給料少ない。」

 「あはは、君、ルーレット運、まるでないもんね〜!」
 「デカい数字来たら、アイドルって結構ボロいもんなー」
 「……っち。無門、うだうだ言ってねーで銀行行け」
 「仁、一成、おとなりさん、美山さん!かどなしさんをいじめない!大丈夫ですよかどなしさん、銀行はかどなしさんの味方です!」
 「……はると銀行さん……。貸して、ください。」
 「はい、どうぞ!いつでも御利用くださいね」
 「じゃ、次は俺ね〜…よっと!3・2・1…ん〜?やった、宝くじ大当たり〜!」

 というわけで、現在。
 
 お腹がふくれたところで、皆でわいわいと後片づけ。
 皆さん、よく動いてくださったから、ほんとうに助かった!
 食後のデザートは、冷た〜く冷やしたネーブル。
 それをつまみながら、なんとなく引き続きリビングで、観るともなくTVをつけ流しながらまったりしていた時。
 ふと、想い出した。
 持って来た荷物の中に、母さんが「これ、家じゃ使わないから、学校で捨…じゃなくて、お友達と遊んだら?」と強引に忍ばせて来たもの…
 
 「人生ゲーム」の存在を。

 特別やりたいわけじゃなかったけれど。
 なんとなく部屋から持ち出して見せたら、皆さん、このゲームの存在を知らなくてびっくりした。
 ゲームは、ハンディゲーム機かTVゲームかPCゲームかゲーセンか。
 こんなアナログゲームは知らないと、5人中5人揃って首を振ったものだから、想わず熱く語ってしまい、じゃあやってみよう!と今に至る。
 慣れている俺は、プレイヤー兼銀行の役目だ。

 現在、職業「医者」を当てた仁が、トップの座を走っております。
 一成は要所要所の博打や投資に強く、「サラリーマン」なのに地道に財産を増やしている。
 美山さんは「弁護士」で資産は多いのに、災難に遭ったり家を購入する羽目になって、結局手元の残金は少ない。
 おとなりさんは「先生」で、なんだかいちばん平穏で人間らしい生活を営んでいらっしゃる。
 かどなしさんは、現実同様「アイドル」と華やかなのに、給料をうまく捻出できず、借金手形を多く抱えていらっしゃる。
 
 久しぶりのゲームも、皆でやると面白い!
 現実と関係ないのに、指示が書かれてあるマス目に止まる度、皆で息を呑み一喜一憂してしまう。
 うっかりハマって、現在、白熱の3回戦目に突入!!
 3回目ともなると、本気度も違ってくる。
 目の色を変え、マス目を凝視する皆の様子が、なんだか微笑ましくて、ゲームなのに本気な所がお可愛らしいというか…
 ほのぼの、見守ってしまう。
 
 ほのぼの…

 ほのぼのと…
 
 「あ、やっべ!仁、時間だわ、ギリだわ〜」
 「んあ?げっ、もうこんな時間か…!やっべ、こりゃ勝負はまた次回だな!」
 ほのぼのと…
 「…はると…?寝てる…?」
 「前、大丈夫か?!」
 「前…?アンタら、何か知ってんスか…?」
 ほのぼの…


 「「9時半だ」」
 「「「は…?」」」 


 そうか、もうそんな時間なんだー…



 2010-08-22 22:56筆


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