73.州の字でいただきまーす!


 おとなりさんとかどなしさんの姿に驚く美山さんを、全員で洗面所へ押しこんで、手洗い・うがいして頂き、終わった瞬間にリビングへまた押しこんだ。
 ただただ唖然として、されるがままの美山さん、帰って来たばかりで非常に申し訳ないけれど…
 「では!姿勢を正して!手を合わせて!今日もごはんを食べられることに感謝をこめて、いただきます!」
 「「「「いただきます…!」」」」
 「いただき。ます。」
 
 高速で、いただきます!!
 この高速展開に、美山さんは呆然としつつ、しっかり手を合わせてついて来てくださった。
 有り難い!
 箸を持ち上げつつ、ソワソワしている5人のために、手早くお味噌汁とごはんをよそい、煮物を取り分け各自へお渡しした。
 さてさて、お味は…

 「うっまーい!何コレ、何コレ、とっろとろ〜!煮物うまー!」
 先ず、おとなりさんが煮物を一口、歓喜の声を上げてくださった。
 「あー…いいわ〜…やっぱはるるの味噌汁、超イイ〜…出汁の香りと味と味噌の風味が…最高〜…身に染みる〜…」
 続いて、お味噌汁を啜った一成の、しみじみとした感想。
 「メシの炊き加減がまた絶妙なんだよな〜…米が立ってる…」
 箸で掴んだ白米を、うっとりと見つめる仁の呟き。
 「…お魚、うま。キャベツも、はっぱも、すごくうま。」
 黙々とそれぞれを食べ、目を丸くしているかどなしさん。

 「……あったけぇ……」
 ふわふわと立ちのぼる湯気と、きっと、2人用のテーブルにぎゅうぎゅうと6人すし詰め状態で床に座りこんだ、その雰囲気に対してもじゃないかな、美山さんのため息。
 「「「「ご飯が進む…」」」」
 「…進む。」
 皆に手伝ってもらいながら、できあがった晩ごはん。
 軽快なリズムでお皿に取り分けられては、モリモリと豪快に、おいしそうに食べられていく。
 明日の皆さんを作る栄養の数々は、どうやら、おいしく受け入れられて頂けたようだ。
 わいわいと、あれがおいしい、これもおいしい、もっと食べたいと主張しながら、箸を止めない皆さんの様子に、俺は自然に目を細め、頬を緩ませていた。

 「おかわりあるから、たくさん召し上がれ!」

 うれしくて、うれしくて。
 昨日は美山さんと2人っきりの晩餐。
 それが、今日は大勢で、テーブルを賑やかに囲んでいる。
 俺の作ったものを、おいしいと、食べてくれている。
 ああ、しあわせだなあ…
 やっぱり、俺はお料理が大好きだ。
 お料理を通して、人に喜んでもらえることが、ほんとうにうれしい。
 今、真面目な顔をしろと言われたって、絶対に無理。
 笑えて仕方がないんだ。

 皆に食べてもらえることが、すごくしあわせなんだ。

 「はるるの笑顔で食欲倍増〜ってね〜」
 「言い得て妙だな、一成」
 「ホントは夜、あんまり食わないんだけどーまだ食える!」
 「…はると、おれ、いっぱい、食べる!」
 「……っち…てめぇは……はぁ」
 へらへらしてる俺に、皆さんそれぞれの反応ながら。
 5本の腕が空の飯碗を手に、同時に伸びて来て。

 「「「「「おかわり!」」」」」

 うれしいねえ…!
 料理する側にとって、なによりうれしい言葉のひとつだ。
 「はい!でも、しっかり噛んで食べてくださいね?焦らなくても、ごはんもおかずもまだたっぷりありますから!」
 「「「「「はい」」」」」
 時間だって、たっぷりある。
 皆さんから学校の話などを聞きながら、ゆっくり時間をかけて、食事を楽しんだのであった。



 2010-08-21 23:20筆


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