70.川の字でクッキングー!


 さて、と!
 材料は揃った。
 となると、早く作りたくてしょうがなくて、仁と一成を追い立てるように寮へ戻った。
 行きは10分かかった道のりが、帰りは脅威の5分強…!
 人間、やればできる!!
 部屋へ着いた途端、荷物を置くなり洗面所へ流れこんで、3人でぎゅうぎゅうになりながら、時間をかけてていねいに手洗い、うがい。
 それから今度は、台所へ流れこんだ。
 時刻は16時半、ごはんを作って美山さんが帰って来るまでに、十分間に合う。
 ようし…!!

 「90分間クッキングのお時間です。本日もはると先生をお迎えしてお送りします」
 「提供は、『平穏な暮らしにスパイスを…華麗なる武士道』です〜はるる先生、本日もよろしくお願いします〜」
 「はい!よろしくお願いします!」
 「先生、本日の献立は何でしょうか?」
 「それはでき上がるまでお答えできません!」
 「わかりました〜それでは本日もミステリークッキング、スタート〜」
 仁と一成のいつものノリに合わせて、調理開始!

 2人がいる時にお料理すると、いろいろなものが手早く作れて楽しいから好きだ。
 揃って俺のアシストに徹し、空気を読んで動いてくれるから、ほんとうに助かる。
 2人共、初めこそお料理初心者で、覚束ない手付きだったけれど、元々器用だからすぐに習得してくれて…総長、副総長が率先して手伝うものだから、他の皆も我も我もとよく手伝ってくれたっけ。
 よく「ホーム」で、わいわいと皆でごはん作って楽しく食べたなあ…
 十八でも「ホーム」を作るとか言ってたっけ…楽しみだなあ。
 そんなことを想いつつ、どんどん作業を進めて行った。

 美山さんも仁も一成もよく食べるし、明日の休日は部屋づくりに徹したいから、俺のお昼ごはん分とストック分までまとめて作ってしまいましょう!

 先ずはお米を研いで、研ぎ汁の一部は鍋に張り、ザルに上げてから吸水。
 研ぎ汁で半月切りにした大根を下茹で。
 一方では鮭の切り身を食べやすいサイズにカット、酒と薄口しょうゆとレモンの絞り汁とレモンの輪切りで作ったタレに絡め、しばらく漬けておき、その間にオーブンを温める。
 だし汁を鍋いっぱい、たっぷり沸かして用意しておく。
 ごぼうの皮は旨味の元だから俺は剥かない、ていねいに洗って4センチ程に切り、水に数分さらしておく。
 人参もかぶも新鮮そのものだ、皮はやはり剥かずに人参は輪切り、かぶは縦4等分にする。
 しいたけは石づきを落として、かさに格子状の切れ目を入れておく。
 下準備の終わった野菜は、まとめてバットへ。

 鶏もも肉を一口サイズにカットして、片栗粉をまぶしておく。
 かぶの葉はお浸しにしようかな…塩を入れたお水を沸かして、さっと茹でてザルに上げておく。
 昨日の新キャベツの残りとピーマン、赤たまねぎは薄い千切りに、まとめてボウルに入れて塩を振る。
 りんごは薄いいちょう切りにして、塩水に漬ける。
 きのこ類は洗うと旨味が逃げるから、濡れ布巾で拭くだけにし、まいたけやしめじはばらして、エリンギは適当に切る。。
 乾燥わかめを水で戻して、適当に切る。
 おっとっと…あさつきはたっぷり用意しておかないと!
 ていねいに細かく切っておく。
 
 3人で手分けして、下ごしらえはばっちり!
 器用な2人に因る、誠心誠意のお手伝いのお陰で、食材はすべてきれいな形にカットされた。
 では、いよいよ、味つけを…
 

 ――…リンゴーン…――


 う?
 玄関方面から、なにやら軽快な音が…???
 途端に、真剣な面持ちで作業していた仁と一成が、ばっと顔を上げた。
 その眉間には、まるで美山さんの如きシワが寄っている。
 「なんの音だろ…?」
 疑問を口に出したら。
 「「呼び鈴の音デ〜ス」」
 絶妙にハモった2人の答え。
 呼び鈴?!
 まるで外国のアパルトマンみたいな寮は、やっぱり外国のアパルトマンみたいな呼び鈴の音なんですか…!
 感動する俺を後目に、2人で勝手に役割を決めて。

 「俺〜見て来るから〜はるるは仁と続きしといて〜」
 「頼んだぞ、一成。さ、はると、次はどうしたら良い?」
 「え?え?あの…もしかして美山さんに来客とか、美山さんがカード忘れたとか」
 「「ないない。絶対ないから」」
 そうなのかな!
 この部屋の住人じゃない、しかも2年生の一成が応対したら、どなた様かわからないけれどびっくりなさるんじゃないだろうか。
 首を傾げつつ、仁に次の作業を伝えながら、調理を進めていたら。

 「どちらさまですか〜」
 「……んだよ、お前らか……」
 「……はぁ?ふ〜ん……はるるは〜大変お忙しゅうございます〜ミステリークッキングの邪魔しないでね〜?」
 「あ?んだと、コラ…」
 「あ゛ぁ?!」
  なにやら物騒な物言いが玄関から聞こえて来た。
 インターホン越しに会話している気配…もちろん、一成の声しか聞こえてこないけれど、ちょっと怒ってる?!
 相手は誰だろう…

 「……っち…じゃぁ、見てみろや。納得したら帰れよ」

 んん?!


 「よっ、前!食堂ぶり〜!!うっへ〜いーニオイ!」
 「はると……!」


 急に賑やかになったと想ったら。
 おとなりさんと、アイドル会計さまのかどなしさん、ご登場!



 2010-08-18 23:32筆


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