68.川の字でショッピングー!
目が覚めたら、仁も一成もすやすや寝ていた。
窓の外、日がだいぶ翳ってきている。
2人を起こさないように気をつけて起床、う〜んと伸びをした。
変な体勢ながら、結構眠っていたみたい…
なんだかスッキリ!!
気持ちのいい目覚めを自覚した途端、働きだす頭の中は、夕食の献立のことでいっぱい。
寮の近くにあるらしい、食料品含め日用品が揃う施設?へ行くのも楽しみだ。
上着は脱いでいたものの、うっかり制服のまま寝ちゃったなあ…
黒のボーダーTシャツとグレーのパーカーにジーンズといつもの鉄板、ラフな服装にちゃっちゃと着替え、机に向かい、せっせとお買いものリストを書き上げた。
そうしている内に、2人共、起き上がって来た。
「ふぁ……あ〜…よく寝た…」
「ん〜…久し振りによく寝た〜…」
揃ってぼんやりと腕を伸ばし、頭を振り、覚醒した途端にすぐさま近寄って来た。
「おはよう!2人共相変わらず寝起き良いね」
「はるとには負けるぜ…いつの間に着替えて何してんの?」
「あはは、はるる、寝癖〜何してんの〜?」
「夕ごはんの買いものリスト!これから買いもの行かないと〜2人共、どうする?」
「当然、一緒に行く」
「けど、俺らも着替える〜」
かくして、10分後。
あっと言う間に着替えて戻って来た2人、ラフながら俺とは全然違う、相変わらず格好いい。
仁は筆で描いたような、勇猛な龍が左胸から裾まで豪快に描かれている白Tシャツに黒Tシャツを重ね、緩いシルエットのカーゴパンツを腰で履いてる。
一成は生成りのヘンリーネックシャツに淡いピンクのカーディガンを袖まくり、黒いサルエル調の9分丈パンツを履き、髪は料理を手伝ってくれるつもりなんだろう、高い位置でラフに結んでいた。
2人共、寮テリトリー内はこれが1番だと、革のサンダルを引っかけている。
「こりゃ、両手に花ですなあ…」
ゆる〜い格好なのに華やかな2人と一緒に寮を出て、手を繋いで歩く石畳の道。
うっかり呟いたら、両方から頭を撫でられた。
「「こっちのセリフ!」」
「なんのこっちゃ!」
笑う俺の頭を更に撫で、目を細める2人は、夕暮れのこの街並(学校内だけど)にぴったりの格好よさだと、しみじみ想った。
長く伸びた影法師を見つめつつ、3人で好きな食べものしりとりし、ゆっくり歩き続けること更に10分。
「お、着いた」
「到着〜はるる、ここだよ〜」
え…?
「…トンネルを抜けると、そこは街だった…」
「トンネル抜けてねぇし、無いし」
「外にも出てないしね〜はるる、まだ学園内だよ〜こっから街へ下りようと想ったら、最短で30分はかかるよ〜」
え、でも…
でもでも!!
ここは紛うことなき、ショッピングモールですよね…?
「最新のお洒落スポット!」「若者達に話題のショップ満載!」「流行発信源!」とか、そういった情報雑誌の煽りが簡単に想い浮かぶような…
「ショッピングから食事まで…デートの定番!知らなきゃ損!」みたいな…
ここは、あの、代官山さまじゃないんですか?
そうなんでしょう?
こっそり学校と繋がってるってやつでしょう?
学校7不思議の1つ、みたいな?
パニックのあまり、呆然と立ち竦む俺の手を左右から引いて、まるでご老人を労るかのように丁重な姿勢で2人が歩き始めた。
レンガ造りの5階建て、お洒落なショッピングモールへと。
「下界レベルじゃないけど〜一応ココで何でも揃うよ〜建前上、外出不可だしね〜」
「ほら、十八はいろんな家柄が揃ってっから。そういう兼ね合いもあるみてぇ」
「食堂あるのにさ〜フレンチ、イタリアン、中華、和食、創作料理のレストランまであるよ〜1回ぐらい食いに来ようね〜」
「後は本屋、文具、雑貨、インテリア…服はカジュアルからフォーマルまで、簡易薬局、簡易スーパーと簡易コンビニもどき…ぐらいかね」
「学園内だから、どこもお堅い品揃えだけどね〜」
「閉まんの早ぇしなぁ。けど、緊急の時とか結構助かるよな〜」
2人の説明が、俺を更なるパニックへ導いて行く。
今日、こちらの敷地内に入ってから、想像を超える様々な在り様に驚いてばかりだった。
だからきっと、お買いもの施設だって半端なくすごいだろうなと、想ってはいたけれど。
十八さん…
ここは「十八学園」じゃない…
十八町だったんですね…!!
2010-08-16 23:06筆[ 120/761 ][*prev] [next#]
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