65.お母さん節は止まることを知らない!


 レストランを出て、ほっと一息…
 おいしかったなぁ〜!
 改めてしみじみと感慨にふけりながら、昼下がりの日差しで光る桜並木を、のんびりと歩いた。
 食事の前後に、並木道を歩けるなんて、なんだかしあわせだ。
 皆さまはそれぞれの目的地へたどり着かれただろうか?

 おとなりさんは、初等部から在籍しておられるバスケ部の活動がいきなりあるらしい、バスケ部コートへ(各部ごとに体育館が異なると言っておられた…ほんとうにすごいな、十八さんの学校…)。
 あいはらさんは親衛隊の活動があるとか、他のクラスメイトの皆さまと、秘密の場所へ(親衛隊の拠点はトップシークレットらしい)。
 ひとつやさんは、自室へ戻ると言っておられた。
 ひーちゃん含め、アイドルの皆さまはアイドル部へ。
 風紀委員さまは、風紀の拠点地へ。
 じゅうさこん先輩と、いこま先輩は、そのままお食事。
 武士道幹部の皆は、ちょっと行ってくるってどこかへ。

 残った美山さんと仁と一成と俺は、寮へ戻るところだ。
 
 美山さんが、2歩ほど前を歩いていらっしゃる。
 そのうしろを、仁・俺・一成の順に並んで、手を繋いで追いかける形。
 「そう言えば、仁と一成の部屋は?」
 「「特寮の1人部屋」」
 「とくりょう…???」
 「ん〜チョットややこしい話だからね〜また改めて話すね〜」
 「それよりはると、初日っから疲れたろ〜?お疲れさん!」
 わ、仁にわしゃわしゃっと頭を撫でられてしまった。
 「へへー…確かに、ちょっと疲れたかなぁ…」

 なんせ、アイドルコンサートとか、レストランでの出来事とか…なかなかの充実した時間でございました。

 「はるる〜はるるの部屋で一緒に昼寝よーよ〜いつもみたいにさ、川の字になってさ〜」
 3人で川の字…!
 「ホーム」でよくやってたなぁ…
 途中で起きたら、大抵、他の皆も足元や頭らへんで丸まっていて、そのまま皆で寝て…
 そう遠くはない記憶、なのになんだか懐かしい。
 「それはいいけど…ベッド、シングルだよ?」
 「「横使いすりゃいいじゃん」」
 「なるほど〜それならイケるか!あ、でも、俺はよくても、仁も一成もかなり足がはみ出ない?」
 「「ノープロブレム!」」
 「じゃあ、よし…って、俺は1人部屋じゃないし…!美山さんに断りなく、そんな、」
 
 そう言った途端、手を繋いだまま、仁と一成が美山さんの前へ回り込んだ。

 「つーワケで、俺ら、はるとの部屋に上がるから」
 「ムダに防音完備の寮だし〜いいよね〜ミキティ…?」
 「「何の文句もねぇよな…?」」
 ちょっと…!
 2人共、それ、喧嘩の時のお顔でしょうが…!!
 物騒な笑顔と青筋を浮かべている2人の手を、慌てて引いた。
 入寮して2日目早々に、美山さんにご迷惑をおかけするわけには行かない。
 ところが美山さん、ちらっと俺を振り返って。
 「別に構わない…用事あるからすぐ出るし」

 美山さんもご用事があるのか、お気を遣って頂いているのか、その表情からは窺えない。
 けれど何故か、切ない雰囲気を感じるのは、どうしてだろう?
 「そうなんですか…俺に気兼ね為さらないでくださいね…?」
 「そんなんじゃねーよ」
 「それなら良いんですが…あの、美山さん、何時頃お戻りですか?」
 「あ…?俺に、何か用か?」
 「あの…教室まで案内して下さって、レストランで奢って下さったお礼に、またささやかながら夕食をごちそうさせて頂ければと想いまして…何かとお世話になっておきながら、大したことはできないのですが…もちろん、美山さんのご用事を優先させて下さいね!1年間同室ですから、またの機会でも…」

 なんだか、必死に言ってしまった。
 美山さんの雰囲気に、影響されてしまったのかも知れない。
 俺が勝手に感じたことだけれど。
 「てめぇ…こっちが昨日の礼したのに、また返す気か…」
 「え…?あ?す、すみません…!」
 ふっと、美山さんの口元が、わずかに緩んだ。
 一瞬、微笑った。
 すぐに元へ戻ったけれど。
 確かに、微笑った。
 「ったく……7時前には戻る」
 「わかりました…!ありがとうございます、用意して待ってますね!」
 「てめぇ……ありがとうってな……変な奴…」

 おお、もしかして2度目の美山さんスマイル発動か?!
 …と想いきや、両隣からぎゅっと手を引かれた。
 「今日こそ俺らもはるとのメシ食う」
 「ミキティのそんな顔、はじめて〜因って監視が必要〜はるるの独り占めは今日から許さ〜ん!」
 「「赤狼、何の文句もねぇよな…?」」
 この大きな子供たち…しかも、衝撃の先輩だった、仁と一成…どうしたものやら!
 2人揃って、ひーちゃんみたいに不思議な我が儘ちゃんになってない?
 またしても天誅が必要か…!
 しかし、大人な美山さんがやんわりと許可して下さった。

 「別に、構わねーっすよ。……あんたらの気持ち、わからんでもない…」
 「「あ゛ぁ…?」」
 「はいはい!いつまでもそんな変な顔しない!2人共、美山さんに感謝!大人気(おとなげ)ないよ?!それとも、ウルトラスーパーデラックスデコピンが欲しいの…?」
 「「要りません…ごめんなさいでした」」
 まったく!
 世話が焼けるな!!
 「前、てめぇ…強ぇな……」
 美山さんの呟きには、にっこりと笑って応じた。



 2010-08-13 22:46筆


[ 117/761 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[しおりを挟む]

- 戻る -
- 表紙へ戻る -




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -