62.武士道ロック(1)by 頓田
あー、こちら旧・理事長棟、こちら旧・理事長棟。
感度良好、オッケーカモンベイベ!
GPS、神…!!
総長、副総長、お母さんの学園内の足跡を追いつつ、椿堂(ちんどう)、苅田(かんだ)、吉河(よしこ)に親指を立て、ウィンクして見せた。
その瞬間、奴らから一斉に「キモイ!」と足蹴にされた。
すぐさま、言い返してやった。
「そんな悪い言葉使って暴力振るってたら、お母さんに怒られちゃうんだからね…!」
その途端、全員オロオロと口を閉じた。
額に青筋は浮かんでたけど。
やっぱ、俺らのお母さんはすげぇっす!
そんなノリで、十八学園における俺らの「ホーム」…入り組んだ裏庭に程近い、旧・理事長棟の旧・理事長室へ直行。
今は使われていない、古くせぇ2階建ての建物だ。
何十年も前の話、裏庭の草木が当初の予定より生い茂り繁殖、薄気味悪い陰気な場所と化し、当時の理事長が建て替えさせたんだとか…
んで、使われなくなったここは、素行不良な生徒がたむろし、不良素行する為の名所となり、代々の「不良組」の管理下(もちろん無許可)へ置かれることとなった。
今は俺ら、武士道のテリトリー。
外のガチ「ホーム」の様にはいかないが、元が理事長棟と言うこともあり、モダンっつーの?小洒落た造りの建物で、なかなかの棲み心地だぜ。
俺らのまったり利用の他、「裏・喧嘩道」、もしくは反抗期な生徒サンのちょっとしたお仕置き場所、もしくは2階を簡易ラブホ(武士道以外には、良心的お値段設定で「ご休憩」「ご宿泊」「土日祝日プラン」も承ってるよ!なかなか良い商売だぜー予約、結構埋まってるし)として、大いに活用中!
ああ、けど。
これから、変わる。
外のガチ「ホーム」に、負けない程。
今日からここは、十八学園の武士道の、マジ「ホーム」だ。
おっ、待機組、言った通りちゃーんと全部の窓、全開にしてくれてんじゃん?
えらいえらい!
お母さんのことだから、ここへ呼んだら全チェック入るだろーし…
建物全体、男くせぇわ煙草くせぇわ、2階なんてイカくせぇし…んなの、お母さんを哀しませるだけだ。
しんみりしながら、部屋へ入った。
戻って来た俺らを、全員、ガン見。
おぉ?!
全員、禁煙状態で待機か?!
副長メール来てすぐ、全員で大騒ぎしたっけなぁ…ああ、ついさっきのことなのに、懐かしいぜ…
待機組全員、微動だにせず、俺らをガン見している。
俺ら4人、顔を見合わせ、笑った。
笑って、GPSが稼動したままの携帯を、印籠の様に掲げた。
「「「「喜べ!外部生は間違いなく俺らのお母さんだった」」」」
言い終わらない内に、どっから出して来たのか、クラッカーや爆竹が鳴り響き、口笛、指笛、大歓声、拍手の大音響。
夢じゃねぇかと、隣同士で殴り合いすら始まる始末。
その勢い、築100年のこの建物が、全壊するんじゃねーかって。
無理もねぇ!
しばらく会えなかった、お母さん。
いつ会えるかわからなかった、お母さん。
総長も副長もイラってたぐらいだ。
連中の笑顔とバカ騒ぎ、いつまでも鳴り止まない歓喜の嵐を、俺らはしばらく見守った後。
「喜ぶのは早ぇ!取り敢えず今、お母さんは総長、副長と一緒に居らっしゃるが、同室は知っての通り美山樹…ヤロー共、『赤狼』に油断すんじゃねーぞ!?」って、椿堂。
「尚かつ、お母さんは問題児の寄せ集め、1年A組在籍!更に食堂では、生徒会、風紀、寮監や放送部にも会った!ヤロー共、各親衛隊共々、毎日気ぃ抜くんじゃねーぞ!!」って、苅田。
「ヤロー共、お母さんに会いたけりゃ、掃除を徹底しねぇとなぁ…?良いか、キッチン、2階を重点的に、徹底的にクリーンにしろっ!ラブホは廃業、裏庭の管理も怠るなっ!!」って、吉河。
いちいち雄叫びを上げて応じ、お母さんへの忠誠を誓うかわいーヤツらへ、締めは俺。
「いいか…?第2のガチ『ホーム』を作るんだ…十八に、お母さんと俺らの『ホーム』を!!」
――うおおおぉおおっ!!――
合戦の火蓋は切って落とされた!
俺らの退屈な日々が、マジで変わる!
3大勢力なんかクソ喰らえ!!
美山がなんだ!!
腐れ生徒会がどうした?!
メガネ風紀なんざ知るか!!
先ずは、部屋の大掃除だ〜〜!!!!!
2010-08-11 22:49筆[ 114/761 ][*prev] [next#]
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