59.親衛隊員日記/心春日和vol.2
「――皆、揃ったね…?では、これより、新年度親衛隊コンベンションを行いたい所だけど…その前に、入学式が終わって早々、食堂にてひと騒動起こった件について、知っている隊員、居合わせた隊員は前へ出て」
っち…やっぱり耳に入ってるか…!
知らないワケないよね!
ええ、ええ、わかってましたけど?ふんだ!
あのクソ広い食堂、お昼のピーク時間…そして、この各親衛隊合同(但し隊員数20名超え+親衛対象者に公認の条件有り)コンベンションに参加できるのは、各隊の幹部、過去に実績ある者だけに限られてはいるけど…
僕を始め、半数の隊員が前へ出た。
これだけあの場にいたのか…!
内心、舌打ちの嵐だ。
このコンベンションを取り仕切る役目は、学園の頂点に立たれる生徒会長の親衛隊長が歴任する事になっている。
近い未来に僕のものとなることが決まっている、部屋の中央窓側、アンティークのソファーにゆったり足を組み、頬杖をついているのは3年の富田先輩。
相変わらず、不自然にカワイコぶったメイクですこと…!
ねぇ、ギャルの真似?!
姫ギャル意識しちゃってる?!
目も睫毛も明らか人工だって、何にも知らねー男だってわかるっつーの!!
ラメラメ、デコデコ、センスなさ過ぎておっかしーのー!!
どーせヤるなら、ナチュラルに完璧に化けろってーの!!
柾様に失礼じゃない?!
しっかし、スッピンがどれだけお粗末なものか、想像するだけで肩が震えるわ…くっくっく…!
柾様の笑いの為には良いかもしれないけど?
なーんてことを想いつつ。
この通り、センパイのメイクっぷりに、笑えて笑えて仕方がない故の肩の震えなんだけど。
実際は殊勝な表情を一生懸命作って、俯きがちに視線を彷徨わせ(実際は目の前のメイクオバケを見たくないだけ)、「僕…これから何を聞かれるのか不安です…」ってプルプルしているフリを装っていた。
勿体ぶってねーで、さっさと進めろっつーの!!
マジで噴き出して笑い死にそうなんだってばー!!
「心春、君がその場に居たなら話は早い。と言うか、そもそも諸悪の根源と同じクラスらしいじゃない…?他はどうだか知らないけど、柾様親衛隊の隊規を忘れたワケ?進級試験に夢中で、ちいさな頭のちいさな脳みそ、更にカラッポになっちゃった…?」
こんの…どこの鬼姑だ…!!
クスクスクス…
遠慮がちな嘲笑も、そこらから聞こえる。
何よりも、メイクオバケが可愛くもないっつーのに、気色悪く小指を立ててクスクス笑ってるのが許せんっ!!
今笑ったヤツ、全員覚えてろ…
僕はね、1度抱いた恨みは晴らすまで、晴らした後もずうっと覚えているんだからね!!
なーんてことを想いつつ。
瞬間的に僕は、かわいいかわいい子ウサギちゃんに変身っ!!
「富田せんぱぁい…僕、僕……ちゃんと、言ったんですぅ…『柾様に近付いたらダメ』って、式前に牽制したんですけどぉ……」
ふはははっ!
ザマーミロ!!
メイクオバケも笑った連中も笑わなかった連中も、部屋中皆、僕の子ウサギっぷりに首ったけ。
今にも泣き出しそうに、大粒の涙でいっぱいになった、こちとら天然ものの大きなウルウル瞳。
もともとバラ色の頬は、更に紅く染まって、熟れたてのりんごの様にツヤツヤしている(ハズ)、その様子は扇情的(なハズ)だ。
ハの字に歪んだ、情けない眉毛は、庇護欲を掻き立てる(ハズ)。
ぷるぷる震える、小柄で華奢な肩(実際は笑いと怒りを堪えているだけですけど、何か?)。
トドメは、きゅるんきゅるんボイス!
縋る様に必死で、真実を一生懸命伝えようという熱が隠った、ブレスをたっぷり仕込みつつ、尚かつスイートな甘ぁい声で決まり!
どうだ!
参ったか!!
男なら、タチだろうとネコだろうと、ハートにずどどどーんっ!
案の定、全員、動揺して、急にソワソワし始めた。
メイクオバケも、例外に非ず。
顔を赤くして、ソワソワしている。
「じゃ、じゃあっ、心春がちゃんと言ったんだろうってことはわかったけどっ…!それにも関わらず、何故、外部生が皆様と逆ハーレム状態で食事を召し上がる様な事態が…?!しかも、柾様がお隣だったとか言うじゃない…?」
っち…!!
そこまでバレてんのか…侮れねぇな、メイクオバケ!
これは上手く立ち回らないと…。
2010-08-08 23:52筆[ 111/761 ][*prev] [next#]
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