隣のあいつ
席替えをした新学期のある日。
隣になったのは、学園一最恐と恐れられている人でした。
―隣のあいつ―
俺が確保したのは1番後ろの窓際から2列目。あと1列ずれてれば完璧だったのにと思いつつも1番後ろを確保できただけまだいいだろう。
そう、思っていたのに。
「あ」
「あ゙?」
窓際の1番いい席―つまり俺の横の席に座っていたのは、紛れもない平和島静雄だった。
(ガン飛ばされた、最悪だ、こえー・・・!)
第一印象がまずコレ。最悪。
何故彼、平和島静雄が恐れられているのか。
何でも、喫煙・飲酒は当たり前で、喧嘩上等で、カツアゲだとかもやってて、挙げ句の果てには借金取りに追われててヤクザなんかとも繋がりがあるとかなんとか。目があったが最後ぶっ飛ばされて終わる―・・・らしい。
以上が俺が聞いた噂の内容。
所詮噂だからどこまでが本当かなんてわかんないんだけど。
触らぬ神に祟りなしってやつ。
まあそんなわけで、同じクラスになってしまったけれど今まで視界にいれないように学校生活を送っていたわけだ。
そう、今までは。
さて、そんな席替えが1ヶ月ほど前の話。現在に至るまでの1ヶ月俺は今まで通りほとんど隣の席を視界に入れることはなかった。これも全部平和な学校生活のため。
そんな俺が彼とファーストコンタクトをとったのは、忘れもしない体育祭の日だった。
×
「あつー・・・・」
ミンミンと耳障りな蝉の鳴き声。いかにも夏らしいがその鳴き声のせいで余計に暑く感じる。
ワーワーと生徒の歓声が嫌に遠く聞こえる。
そんな中、俺は保健室のベッドの上にいた。
組み方が悪かったのか、騎馬戦に出場した俺は開始早々あえなく落馬した。そしてあっけなく足首を捻挫した。情けないし最悪だ。
そんなわけで、仲間にここまで運んでもらってとりあえず応急処置。まあ湿布を貼ってもらって固定されたのだが、こんなんじゃもう体育祭には参加できない。外は暑いし俺は保健室に居座ることに決めた
のだが。
ガラ―
「「あ」」
誰も来やしないだろうと思っていたので、予想外に扉が開いたことにびっくりして。さらに入ってきた人物、平和島静雄を見てまたびっくり。
恐らく向こうも誰もいないと思って入ってきたのだろう。目を見開いて俺を見てきたが、すぐに平然を取り戻してあろうことかそのまま保健室に入ってきた。
「・・・何してんの」
「サボりに決まってんだろ」
「・・・ですよねー」
ちょっとした好奇心で喋りかけてみればぶっきらぼうに予想通りの言葉が返ってきて思わず口許が引きつる。
だよなだよな。天下の不良がきっちり体育祭なんかに出るわけないよなー。
なんてぼんやり考えて俺は視線を彼から外す。あんま関わっちゃいけないって怖いから。
そこでふと、彼の手元に目が入った。
正しく言えば、彼が持っていたジュースに、だ。
「・・・あれ、」
「なんだよ」
「それ、好きなの?」
「・・・悪いかよ」
いやいや悪くない悪くない
むしろ
「そっか、好きなんだ。俺も超好きなんだけどさ、誰もそのジュースの美味しさわかってくれなくてさー。いや、何かすっげー親近感!」
思わぬところで急に親近感なんぞ湧き出した俺はそれから弾丸でそのジュースについて熱く語ってしまった。多分ちょっと引かれてるんじゃないかな
今まで避けていたなんて嘘みたいに喋り続けて、気づくと向こうはキョトンとした顔でこっちを見ていた。いつもは眉間にシワがよっているのに、珍しいな。
俺の熱弁が終わると平和島静雄は苦笑をこぼして、こっちにジュースを投げた。それを華麗にキャッチすれば、彼は少し笑いながら
「やるよ」
そう言いながら保健室を出ていった。
残された俺はといえば、
「・・・何あれ超いい奴じゃん」
これが俺と彼のファーストコンタクトだ。
×
「いやー、しかしあれがなかったら俺多分ずっと静雄のこと怖がったまんま終わってたなー」
「人は見かけによらねえんだよバーカ」
「ひっでぇな。バカとはなんだよ」
懐かしい話をしながら昼御飯を口に運ぶ。今ではすっかり俺たちは意気投合して、休みの日も一緒に出掛けるほどになった。
「やー、ほんと。出会いなんて紙一重だよな・・・」
「結果的に出会えたんだからいいんじゃねえの」
「そうなんだけど、・・・んぅっ」
「・・・っ、細けえこと気にすんなよ。今こうなれたことに感謝しよーぜ」
「・・・そうですね」
・・・まあ、とりあえずあのジュースに感謝かな。
―end―
×××
ゆみる様リク
学パロでベタな展開
お待たせしました!
果たしてベタなのかなコレorz
すいませんほんと。゚(゚^O^゚)゚。