遠慮せず飛び込んでくれてかまいませんよ
真冬の空の下。
今日は久しぶりのデート。
なのに俺達は何故か海に来ていた。
寒い
どうしようもなく寒い
何でこんなとこをデートスポットにチョイスしたのか俺はとなりのコイツに聞きたい。
ジトリ、と。
音が出そうなくらい横目で睨みつけてやれば、やつは至極嬉しそうに笑った。
「どうしたの正臣くん?そんな人肌恋しそうな顔して」
してない。断じて。
というか人肌は恋しくない。
早くあったかいところに移動したい、それだけ。
「しょうがないなぁ。ほら」
「…は?」
ほら、
そう言ってカバッと広げられた両腕。
何?まさか抱きしめあって暖をとろうなんて、そんなベタなことしないですよね?
「ほら、遠慮せず飛び込んできてくれていいんだよ?」
「何て単純なんだお前は」
単純というか、実は全部計算だったりして。
ありうる。
臨也さんだもんな、ありうるというか100%計算だな。
…まあ、久しぶりに会えたんだし。
今日は特別大サービスで、そのノリに乗っかってあげようじゃないか。
人っ子一人いない真冬の海岸で、広げられた腕目掛けて勢いよく俺は飛び込んだ。