拍手お礼文
どんな成り行きでこうなったのかは、正直覚えていない。ただ、覚えているのは視界いっぱいに広がった黒い塊だった。
それを視界に捕らえたのは一瞬で、そして次の瞬間には俺の意識はブラックアウトしていた。
「んっ…」
ぼんやりと目を開けると目の前には見覚えのない天井。
「どこだ、ここ。」
俺どうしたんだっけ。
ぼんやりする頭で必死に考える。
ええっと、確か学校が終わっていつも通り杏里と帝人と帰ってたんだ。ああそうだ、そこまでは覚えてる。んで、そっから…どうしたんだっけ?
「っ、いってぇ…!!」
何にせよ現状把握は大事だ。とりあえず起きよう、そう思って体を起こせば全身に走る鈍い痛み。思わず呻いてしまった。
「あ、起きたんだね?どう具合は?」
ふいに声をかけられて勢いよく振り返る。そこには見知らぬ白衣を着た男。
「えっと…、誰っすか?」
「開口一番それはひどいなぁ。まあ無理もないけどね、俺は岸谷新羅。」
はじめまして、そういってニッコリ笑う彼に、ますます俺の頭は混乱を極めていく。どうしてこんな状況に?
新羅さんが言うには、ここは新羅さんの家で、俺は2時間近く眠っていたらしい。
どうしてそうなったのかを聞きたかったのだが、それを聞く前に彼は部屋を出て行ってしまった。
どうなってんだ、全く。
一人悶々と悩み始めた頃、バタバタと廊下を走る音がして―
「正臣っ、め、目が覚めたって!?大丈夫??!」
「大丈夫ですか!!紀田くん!!」
開いたドアからは、今にも泣きそうな顔した杏里と死にそうな顔をした帝人が勢いよく入ってきた。
「帝人に杏里?お前ら、何て顔して…ってうおっ!?」
勢いよく入ってきたかと思えば2人して抱きついてきたもんだから、完全に想定外な2人を受け止めきれず3人でベットに倒れこむ。少し体が痛んだが、それよりも今はこの2人をどうするかだ。
「って、どうしたんだよ?つかさ、何で俺こんなことに…」
「…紀田くん、覚えてないの?」
「うん、あんまり。お前らと一緒に帰ってたとこまでは覚えてんだけどなぁ…。」
そういって黙り込んでしまった俺を不安げに見上げる2人。
ちょ、何だその捨てられた子犬のような目はっ。不覚にも可愛いと思ってしまったじゃないか。
そんな暢気なことを考えているときだ。
「あんまりにも衝撃がでか過ぎて、記憶飛んじゃったんじゃないの?まあ無理もないよねえ、あのしずちゃんの投げた物にぶち当たったんだから。」
「イザヤてめぇ…!!」
開けっ放しのドアから1番聞きたくない奴(等)の声が聞こえてきた。