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衝撃の発言を受けて固まる俺をよそに、何事もなかったように別の話を始める目の前のホスト。

え?あれ?

今コイツ俺に惚れたとか言わなかった?

空耳?


「ん?何固まってんの?料理美味しくない?」

「え!?や、美味しい、です」

「そう、ならよかった。まだまだあるからいっぱい食べなよ」




そうして食事を勧めるもんだから、俺は勧められるままにどんどん食べて飲んだ。そりゃあもうたらふく。さっき言われたことを忘れるくらいに。

それからべろんべろんに酔っ払った俺は結局1人で帰れなくなって、わざわざ部屋に運んでくれた彼は、何も言わずにベッドまで連れていってくれたらしい。朝起きた時、そばの机には律儀に水とハンカチが置いてあった。





×




それからというもの、彼は毎日メールやら電話をしてくるようになった。

半ばうんざりしながらも俺は貰ったメールにはちゃんと返事を返さなきゃ悪いと思って返信したし、電話だってかかってきたら出た。


その度に遊ぼうだとか、お店においでよだとか、言ってくるアイツ。勿論最初は断っていた。でも断っても断ってもしつこく誘ってくるから、まあご飯奢ってもらえるしいいかというくらいの軽い考えで何回か出かけるようになった。その度にあまりに嬉しそうな顔をするから、俺も悪い気はしなくなっていった。しかし相変わらず好きだと言ってくる彼を正直面倒に思っていたし、適当にあしらう日々が続いていたのも事実。






そんなある日、友達と昼を食べている時だった。


〜♪


「おい、携帯鳴ってんぞ。」

「あー、いーのいーの。どーせまたアイツだよ」

「…お前、もしかしてあのホストとまだ会ってんの?」

「え、うん」

「何で?」

「…何でって、別に。深い意味はないよ。断ってもしつこく誘ってくるしご飯奢ってもらえるし別にいいかなと思って」


そう告げて携帯に目を落とす。
そこには案の定話題にあがったその人で。
“今日飲みに行かないか”といういつもの誘いのメール。特に今晩は予定もないし、今日もご飯代が浮くなぁくらいにしか考えていなかった俺は了承の旨を伝える文章を作成して送信ボタンを押した。


「紀田さ、それ相手は紀田のことどう思って誘ってきてんの?」

「?どういう意味?」

「だから、友達として誘ってきてんのかって事だよ。」


言われた意味をなんとなく理解して、そういえばと思い返す。会う度に必ず言われる“好き”

最初は動揺したけれど今では軽くあしらっている自分がいたのを思い出した。言うべきか言わないべきか迷ったけれど、友達がいつになく真剣だったので、おずおずと今までのことを話し出す。男に好かれてるだなんて言って引かれないかななんて思ったけれど、案外真剣に聞いてくれた。

そして俺の話が終わった後、目の前の彼は盛大にため息を吐いて俺を睨んだ。



「それで?お前は相手をどう思ってんの?」

「どうって、」

「どうも思ってないのに、会ったり連絡取ったりしてるわけ?」

「…うん」



俺が頷くと再び目の前の彼は深いため息を吐いた。
そして忠告だと言わんばかりに、少し低い声で彼はさらに続けた。


「紀田に気持ちがないんならやめときなそんな関係。向こうは絶対期待してるよ。で、いつか絶対痛い目見るよお前。」



いやに真剣な友人の忠告。
さすがに少し怯む。

そして確かに少し軽率だったかなと思い返す。

今度から、ちゃんと断ろう。



今日の夜、ちゃんと言おう。

そう心に決めて―





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