H




結局―


試行錯誤の末、昨日は俺が地べたで寝た。ありえなくない?俺の家なのにほぼ初対面のイケメンにベットもぎ取られるとか可哀想すぎるだろ。まあ、いくらゆすっても殴っても耳元で爆音の音楽を流しても起きなかったアイツには軽く尊敬の意を表するよ。
神経図太すぎ。







〜♪


「ん…」



いつもセットしてある携帯のアラームが起床の時刻を告げる。徐に起き上がって寝ぼけ眼で携帯を見ればもう8時。

やべー寝坊だ。

1限サボるか、とぼんやり考えてから―

昨日の事を思いだしハッとして辺りを見回す。しかしそこにはいつも通りの自分の部屋が広がっている。勿論イケメンホストの姿は無く、俺はちゃんとベットに寝ていた。

昨日のことは全部夢だったのではないか、とすら思えるほどに。



しかしこの後俺は、すぐさま昨日あったことはすべて本当であったという現実に戻されることになる。事件は顔を洗いに洗面所に立った時に起きた。いや、実際事が起きたのは俺が寝ている間だろう、多分。




「えっ、えっ?・・・・・・・・ぎゃーーーー!」




思わず叫んだ。
だって、だって、だって!!!


「え、はっ?な、なんだよこれ!!?」



鏡に映る自分の首筋。
赤く鬱血した跡を震える手で押さえる。


なんだこれは。
いやまあ、これが何かくらい馬鹿な俺でもわかる。これは間違いなくキスマークというものであろう。だって虫刺されで済むような数じゃない。見えてるところだけで3箇所は鬱血痕がある。しかも服で見えてない場所にも何個か赤い点々が・・・


俺の頭をよぎるのはあのイケメンホストの憎たらしい笑顔。




勿論彼女なんているわけはないので、予想は確信に変わる。



「あんっの野郎!!!」










- ナノ -