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反射的に電話を切って身構える。友達には明日謝ろう。


・・・明日を迎えられればの話だけど。


たかだかホストに何故ここまで身の危険を感じるのか。自分でも可笑しいと思うが、しかしこれは冗談抜きで俺の中の防衛本能が危険だと告げている。

例えるなら、そうだな―
ライオンに狙われたシマウマ?

・・・いや、そんなかっこいいもんじゃないな。何せ身構える俺は情けなくも完全にへっぴり腰だ。

蛇に睨まれた蛙。

うん、こっちの方がしっくりくる。悲しい。



そんなしょーもない現実逃避をする俺を見て苦笑を溢す彼の切れ長の目には、俺の思考回路全てを見透かされてるような気がして居心地が悪い。



「そんな警戒しなくても〜。取って食べたりしないよ」


口許は笑っているが、細めた目でそんなこと言われても説得力がない。



「・・・ナンバー1ホストがなにしてんすか?」



やっと絞り出した言葉の間抜けさに呆れる。もっと他に言うべきことがあるだろう!アホか俺!


しかし彼は大して気にした様子もなく、綺麗に笑う。


「正臣くんがバタバタ帰った後でさー、正臣くんが座ってたテーブルでこれ拾っちゃって。なかったら困るだろうなぁと思って持ってきたげたんだ。」

偉いでしょ?とでもいいたげな顔で小首を傾げられても、別にときめかないからやめてほしい。



「はぁ、何かすいません。つーか何で俺んちわかったんすか。」

「いや何か以外と綺麗なマンションに住んでるんだね〜、予想外」

「・・・ご迷惑かけてほんとすいませんでしたカギ返して下さい」

「えっ?せっかくカギ届けてくれたんだし、お茶でもどうぞって?いや悪いな〜、じゃあ遠慮なく。」

「待て待てどうしてそうなる。」


適当に謝って帰ってもらおうと思ったのに、会話のキャッチボールができないどうしよう。








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