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「お待たせしました、帝です。」


にっこり笑った彼は何と言うか真面目そうだった。
こういうホストもいるんだなーと、ぼんやり考えながら喋ってみると何と同い年!まじかよー…。なんかショック。
そんな他愛ない話で盛り上がってきた俺たちが安いシャンパンを数本あけたころだった。


「ねえ、うちみたいなところに来るって事は、正臣くんってバイとかゲイってやつ?」

「ぶふっ!」

「うわっ」

急に何を言われたのかわからず、動揺した俺は持っていたグラスを落としかけた上に飲んでいた酒を噴出した。

「げほっげほ」

「あああ、大丈夫?!タオル持って来るね」


あ、焦った。何故か急に焦った。勿論俺に男の趣味はない。が、やはりこんな所にいる時点でそういう目で見られるのは当たり前。わかっていた、わかってはいたんだけどどうしようもなく恥ずかしくなってしまった。ちらりと横の友達を見れば楽しそうに盛り上がっている。…俺が知らないだけでこいつらそっちの気あるんじゃないのか?そう思ってチラと会話を聞いていたけれど、同級生と喋っているような内容だったので少し安心した。

しかし時計を見ればもうすぐ1時近い。そろそろ帰らないと明日も大学だ。そう声をかけようと横の友達を小突いた時だった。


「こんばんわ」


聞きなれない声が頭上から響いたと思ったらすぐ横に人の気配。ハッとして見ると先ほどの帝ではなく黒髪の男が座っていて手にはタオル。そんな姿からでもわかるくらいイケメンが滲み出ている。
男の俺から見てもかっこいい。正直自分が惨めになるからあんまり横にいてほしくない。何なのだコイツは。帝を出せ。
酒のせいもあったんだろう、俺は完全にそいつを敵視していた。しかしそんな俺に気付いているのかいないのか、そいつはニッコリ笑って小首をかしげた。


「ふふ、怖い顔して。さっきは大丈夫だった?タオル、どうぞ?」

「ああこれはどうもご丁寧に」


何て間の抜けた返事だろうか。










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