どうしてこうなった




※突発小説・子正臣くん!




なぁんでこうなっちゃうかなー

新宿にある高級マンション最上階。内装はシンプルでスタイリッシュ、仕事場も兼用しているが全く狭さを感じさせない。まさに出来る男の部屋、って感じなのだが、そこに不釣合いな幼い子供の声が響く。



「ほら、我侭言わないでよ正臣くん」

「やだぁ!遊んでよぅ!」

「俺まだ仕事があるんだって…」

「うぅ…っ、いけずぅ!」



全く…、波江は何処行ったんだ。


ことの発端は言うまでもなく彼女、矢霧波江だろう。

彼女は俺の助手として働いてくれている。仕事の飲み込みも速いし使える女なのだが、たまに実験だなんだと言ってこういうどうしようもないことを仕出かしてくれるのだ。うん、ほんと迷惑だよ。


しかし今回はどういう経緯だろうか。
どうしてこうなった。



目の前には一回りも二回りも小さくなってしまった正臣くんが、ぐずぐずと駄々を捏ねている。俺には期日のせまった仕事がどっさり残っているというのに、この状況はかなり困った。いや、ある意味美味しいのだが、こういうことするならもうちょっとTPOを考えてほしい。

幼児正臣くんはどうしても俺に遊んでほしいらしい。何を言っても「遊んで!」の一点張りだ。全くほんとどうしてこうなったよ畜生、波江め。こんな状況放り出してどこ行ってんだ子守りしろバカやろう。


どんなに心の中で悪態をついても、彼女は帰ってこない。しょうがない、自分で何とかこの状況を打破しよう。

何とか解決の糸口を見つけようと腕を組み必死で考え出したその時、服の袖をちょいちょいと引っ張られて目線を下げる。

そこには瞳をうるうるさせてこちらを見上げる正臣君の姿。





…え、ちょ、可愛っ!えっ、何それ反則でしょ?!何その上目遣い!!誘ってんの!?って俺、幼児相手に何考えてんだっ!!え、実はショタコンだったのか自分。えええええショック


1人悶々としていると、正臣君が不安げに小首を傾げる。


ぐっ、可愛すぎでしょ何この生き物犯罪でしょもうこれ食べていいですか




「いざやさんは、おれのこときらいなの?」

「え、」

「きらいだからあそんでくれないの?」

「いや、そういうわけじゃ」

「おれ、いざやさんのことだいすきなのに…」

「なっ!!?」

「いざやさんはおれのこときらいなんだっ!だからあそんでくれないんだぁ!う、うわ〜ん…」


「いや、ち、違うんだよ正臣君、俺だって君の事大好き。もう今すぐ担いでベッドまで駆け抜けたいんだけどね、どうしてもどーしても今日中にやらなきゃならないお仕事があるんだ。それ終わったらいっぱい遊んであげるから、いっぱい弄ってあんあん言わせてあげるからむしろ嫌だって言ってもやめてやらな」


「…幼児相手に何言ってんの、ついにショタコンに目覚めたのかしら、ああ気持ち悪い」

「………波江」

「あ!なみえおねーちゃんだぁ!ねえあそんでよぅ!」

「はーい、おねえちゃんがいっぱい遊んであげますからねー。いい?もうあんな変態に近寄ったらダメよ?」

「うん!わかったぁ!」

「いい子。じゃあまずご飯にしましょうね」

「わぁい!ごはんなにー?!」

「オムライスよ」

「やったぁ!たのしみだなぁ!」



買い物袋を持って入ってきた波江にさらっと蔑まれ、それまで俺に纏わりついて離れなかった正臣くんは、波江が帰ってきた途端あっさりと彼女の元へ走り去ってしまった。え、俺のこと大好きだとか言ってたじゃん。何でそんなあっさりなの。お兄さん泣いちゃうよ?

まあこれでやっと仕事が出来るのだが、何か、何か納得できない。


それから正臣くんは1日中波江と一緒に遊んでいたらしく、俺が仕事を片付けた頃には元の姿に戻っており、何故か疲労だけが増えた1日になってしまった。その後、波江にもう1度正臣君を幼児正臣君にしてくれと頼み込んだのはここだけの話。もちろんあっさり断られてしまったが。




「…幼児正臣君とあんなことやこんなことして遊ぼうと、頑張って早く仕事終わらせたのに何このオチ!!ひどい!!泣けるんですけど」

「臨也さん、気持ち悪いです。死んでください。」




―おしまい―




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