怪しい男




(※結構有名なお話のパロディです。)





その日は、委員会で遅くまで学校に残っていて帰宅したのはすっかり日も暮れた頃だった。俺が風紀委員なんて今でも周りはありえないと思っていそうだが、俺はいたって真面目だ。今日だって、来良指定の制服について熱く語ってしまって結局この時間。馬鹿馬鹿しいと思うかもしれない。しかしながら俺はいたって真面目。大事なことだから2回言った、うん。


若干疲れた足取りで自分の住むアパートの階段を登る。

部屋に鍵を差し込み、扉を開ければ散らかった部屋が視界に入る。若干うんざりしながらも散らかしたのは他でもない自分なので何とも言えない。持っていたカバンを放り投げて、とりあえず飯にしようと冷蔵庫を開けて、ため息―


「あー、何もないから今日帰りに買い物行こうと思ってたんだったー。クソ」


前からこういうしょうもないミスは多々あった。だから今日こそはと思っていたのに・・・

失態だ。最悪だ。畜生。


散々悪態をつき、カバンから財布を取り出して部屋を出る。


近所のスーパーで適当に食材を買おう。次からこういうことの無いようにちゃんと買いだめしておこうとも思うのだが、買いだめすると大概腐らせてしまうのでそれはそれで考えものだ。







買い物を終え、アパートまで戻ってくる。荷物が重い。しかし部屋に帰るには階段を登らなくてはならないので黙々と階段を上る、その時だった


「――っ!!」

「あっ、うわ!」



ドンっ


肩にそれなりの衝撃を受けて俺はよろめいた。予想していなかっただけに思わず買い物袋を落としそうになったが、そこはしっかり握り直す。

顔を上げればそこには帽子を深く被った人が立っていた。俯いていて顔は確認出来なかったが、体格からして男だろうと勝手に判断する。このアパートの住人だろうか。正直近所付き合いなんて全くしていない俺には、この男がここの住人なのかなんてわからなかった。




「す、すいません」

「・・・・」


とりあえずぶつかったことを謝る。うん、こういう場合はお互いさま、しょうがない。

しかし相手は俺の方を見ることもなく、そのまま階段をかけおりて言った。

何だよ、こっちが謝ってんだからおめーも謝罪しろよ!バーカ!


なぁんて悪態もそこそこにして、疲れていたしそのまま俺は部屋に戻った。









「あ?何だこれ」


それに気づいたのは手を洗うために洗面所に入った時だった。鏡に映った自分の肩に思わず手を当てる。


ぬるっ、という生々しい感触と手についた赤。恐る恐る匂いを嗅ぐとやはりこれは、

「・・・血?」


そう、俺の肩には赤い血がべとっと付いており、しかもそれはまだ新しいようだった。
一体いつ付いたのか、心当たりはさっきすれ違った男だ。あの時、ぶつかった時に付いたのか?どうでもいいが気持ち悪いものは気持ち悪い。俺は早々に着ている服を脱ぎ捨てそのまま風呂に入った。







- ナノ -