ストーカー



※都市伝説を元に書いてみました。高橋の文章が怖いかどうかは謎ですが、一応怖い話なので怖いの苦手な人はバック!読んでからの苦情は受け付けませんよ!

(あとがきは8/23のブログにて書いております!そこでいろいろと補足してますのでよろしければそちらもどうぞ!)













俺は今悩んでいる。



ここ何ヵ月かずっとストーカーに付き纏われているのだ。最初は学校やバイト帰りに後をつけてくる程度だったのだが、最近は遊びに行っても誰かの視線を感じるし、酷いときには部屋にいても視線を感じる程、日に日にストーカー行為は悪化していた。心当たりなんてさらさらないし、ましてや男である俺にストーカーなどするやつはいないと鷹をくくって甘く見ていたのが間違いだった。

警察に相談するべきだろうか、それとももう少し様子を見るべきか。
そんなことを考えながら悶々とした日々を送っていたある日、とうとう恐れていたことが起こった。






「…あれ?」


いつも通りバイトから帰ってきて部屋に一歩入るなり、違和感を感じ立ち止まる。途端に俺の背筋に流れる嫌な汗。よく見れば部屋のいろんな物の位置が微妙に変わっているのである。



「もしかして…、誰か、入ってきた?」


まさか、まさか、まさか。
とうとう部屋の中まで入ってきた?どうしようまじ怖いやばい


警察に連絡するべきか迷ったけど、確かめてみても何も取られていないようだ。しかし、さすがに気持ち悪くて今日はこの部屋で寝れない。そう思った俺は財布と携帯だけ引っつかんで部屋を出た。










部屋を出た後、何処にいこうか迷ったあげく、気づけば今終わったばかりのバイト先に足を運んでいた。俺のバイト先は居酒屋なので、遅くまで開いているのだ。とりあえずはそこで時間を潰してこれからどうするか考えよう。

中に入れば平日の夜中ということもあってか客はまばらだった。



「いらっしゃいませ、って紀田じゃねえか。」

「、静雄先輩。」

「どした、忘れもんか?…ってお前、何か顔色わりぃぞ」


見知った人の顔を見て今まで強張っていた体の力が抜けて、思わず崩れそうになる体を支える。そんな俺を見た静雄先輩も慌てて体を支えてくれ、とりあえずカウンター席にまで誘導してくれた。閉店時間も近くなって人がほとんどいなくなってから、俺は今まであった出来事をすべて静雄先輩に話した。
俺が話し終わるまで先輩は真剣に話を聞いてくれ、「とりあえず今日はうちに泊まれ」ということで今晩は先輩の部屋にお邪魔することになった。








「ほんとにすいません、急にお邪魔しちゃって」

「いや、それは別にかまわねえけどよ」



晩ご飯もご馳走になりお風呂まで貸してもらって、いくら先輩といえども何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。そんな俺を見て気にすんなよと言ってのける先輩は大物だと思う。というか本当に頼りになる。
それから、ゲームしたり雑談したりとしているうちに時刻はもう深夜2時をさしており、お互い明日も学校があるのでとりあえず寝ることになった。



「しかし、どうすんだお前」

「どうしましょうかね…ほんと」


先輩と過ごしているうちにすっかり忘れていたが、重大な問題が残っていることを思い出してどんよりする。どうしたものか…、やっぱり警察に届けるべきなんだろうか。


「…なぁ、ダメ元でよ、一回カメラ仕掛けてみたらどうだ?」

「カメラ?」

「そう、ビデオカメラ。部屋が全部写る位置に置いとくんだよ、まあ所謂監視カメラ代わりってわけよ。」

「なるほど…」

「いくらストーカーされてるからって警察に言ったところで証拠がないんじゃ、無駄だろ。第一男がストーカーされてるなんて言って相手にされるかどうかわかんねえじゃねえか。」



確かに先輩の言うとおりかも知れない。ただの証言だけではきっと捜査は難航するだろうし、こんな男1人に護衛なんてつけてくれるはずがない。もしかしたら軽くあしらわれるかも知れない。
もしカメラを設置して犯人が写っていればそれを証拠として警察に届ければ逮捕してもらえるかもしれないのだ。



「それ、試してみます。」

「おう。合宿さえなけりゃ俺が泊まりにいってその犯人ぶっ飛ばしてやれるんだが…」

「いえ、今日泊めて頂いただけで助かりました。ほんとありがとうございます。」


明日から先輩は大学のサークルの合宿があるらしく、2〜3日留守にするらしい。明日は先輩には頼れない。しかしこれは俺の問題だ、しっかりケリをつけなければ。
そんな密かな決意を胸に俺は先輩の隣で眠りについた。














朝、合宿に行く先輩を見送っていったん家に帰った。中に入ると昨日帰ってきた時とはまた微妙に物の位置が変わっていて思わず息をのむ。

…もしかして夜中にも入ってきてたのか。

昨日あのまま部屋で寝ていたらと考えると、怖すぎて体が震える。
震えを押し殺してビデオを構える。録画モードにして映っていることを確認し、部屋全体が映るように部屋の角に設置して、早々に家を出る。もちろん部屋の鍵をかけて。









大学の講義が終わり、さっさとバイトも終わらせ、帰る準備をする。帰るといっても今日は幼馴染の帝人の家に、だが。事情を説明して泊めてもらえないか頼んだところ、彼は快くOKしてくれた。かなり心配されてしまったが。


そんな帝人を思い浮かべて苦笑をもらしつつ、一応帝人にメールを送ってそのまま帝人の家に向かう。


途中、自宅のアパートの前を通り過ぎたとき、ふとビデオカメラのことを思い出した。



「…ほんとに、映ってんのかな。」


気づけば俺の足はほぼ無意識に自宅へ向かっていた。




恐る恐る鍵を開ける。中は真っ暗だ。電気をつけて真っ先にビデオの録画を止める。相変わらず部屋の中は所々物の位置が変わっている。どうやらビデオには気づかれなかったようだ。そのままその場に座り込んで巻き戻して再生ボタンを押す。

この時は恐怖よりも犯人に対しての苛立ちのほうが勝っていた。絶対犯人を突き止めてやる、そんな気持ちだったのだ。本当は怖いのに、帝人の家で見ればいいのに、何故か今見なければならないような気がして。


テープの最初には俺が映した部屋の中が映っており、その後に部屋の隅に設置される様子が録画してある。その後の何時間かは何も映っていない映像が続いた。

もしかして映っていないんだろうか


映っていないとなると警察に証拠を渡すこともできない、しかし映っていないことに少なからず安心している自分がおり、やはり怖かったんだなということを再確認した矢先だった。早送りして見ていると急にビデオ内に何かが映りこんだのだ。慌てて再生ボタンを押す。


そこに映っていたのは真っ黒のコートを着てフードを深くかぶった男だった。顔は見えない。息をのんでビデオに写るその光景を見ていると、その男は部屋をぐるぐると徘徊したり部屋のものを触ったりと、部屋の中を物色しているではないか。特に何かを取るわけでもなく、椅子に座ったり、ベッドに寝転んだり。

そんな光景が約3時間ほど記録されていた。

呆然と見ていると、ビデオの中で物音がして、フードの男が瞬時に玄関の方を振り返った。どうやら誰かが俺の部屋に尋ねてきたようだ。男は急いで押入れの中に身を潜めた。そして玄関の鍵が開いて―


「…え、」


入ってきたのは紛れもない自分だった。


「―…っ」


冷や汗が背中を伝う。
部屋に入ってきた自分は部屋の中を見回したあとずんずんカメラの方に近づいてきて、俺の指が、録画ボタンを止めた―






そこで映像は終わった。青い画面が表示され俺は動けずに画面を見続けたまま座り込んでいた。


どういうことだ

映像の中の男は押入れに入っていった

その後直ぐに俺が部屋に入ってきてビデオを止めた

そしてそのままその場でこの映像を見ている―



ということは・・・・




背後にある押入れ。



押入れのふすまが、ずずっと引かれる音が、聞こえた…






―エンド―








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