HAPPYBIRTHDAY!
piririri―
「んっ…、」
真夜中、携帯の着信で目を覚ます。寝ぼけ眼でディスプレイを確認すると電話の相手は帝人だった。
「、もしもし?」
『あ、正臣?って寝てた?』
「おう、完璧に夢の中だったぜ。」
『そ、そうだったんだ。ごめん!』
「や、別にいいけどよ。どした?こんな時間に。」
部屋の時計を確認すればもう午前2時。俺よりも健全な筈の彼が起きているなんて珍しい。何かあったのだろうか。急用でなければ明日も学校で会うのだからわざわざこんな時間に電話してくるのもおかしい。
とりあえず、帝人の答えを待つ。
『あ、あのさ、今からちょっと出てこれない?』
「今から?別にかまわないけど、なんで―」
『ほんと?!よかった!じゃあロシア寿司の前で待ってるね、あ、ゆっくりでいいから!じゃあまた!』
ブツ―
「え、ちょ、帝人?」
アイツは人の話を最後まで聞けないのか。もそりと布団から這い出てその辺にあった服を着る。財布とケータイを後ろポケットに突っ込んで俺は家を出た。
まだちらほらと人は歩いているものの真夜中の池袋は昼間と違って静かだ。たまにはこんな雰囲気も悪くない。
歩くこと数分、ロシア寿司が見えてきて店の前にはキョロキョロと挙動不審な幼馴染みがケータイ片手に立っていた。
「みーかど!」
「あ、正臣!よかった!来てくれて」
声をかけた途端、嬉しそうに顔を綻ばせる帝人に、俺の方もなんだか嬉しくなってしまう。
「で!どうしたんだ?こんな真夜中に、ひょっとして恋のお悩み相談かー?」
「ち、違うよ!うん、とりあえず中入ろう!みんなもう来てるし」
「は?中ってお前、普通に閉まってんだろ。つかみんなって何―」
「ささっ、今日は正臣が主役なんだからね!入って入って!」
「主役?ちょ、え、どゆこと??」
何がなんだかわからぬまま、真っ暗なロシア寿司の中に押し込められる。何で入り口開いてんのよ、サイモン無用心すぎだって。
とにもかくにも真っ暗すぎて何にも見えん。帝人が何処にいるのかすらもわからないまま、俺は呆然と突っ立っていた。
「みかどくーん?これは一体なんなのかな、」
「「「「せーの!」」」」
俺が再び同じ質問を問いかけた時だ、急に何人かの声が聞こえて思わずビクッとしてしまった。そしてパチッと電気のつく音、続けざまにパーン!というクラッカーの弾ける音が店内に響く。
一瞬、アレ?何か撃たれた?と思ったのも無理からぬ話だろう。というか、さっきから俺の話流され過ぎ!泣いてもいいですか。
そんなしょうもないことが頭の中をぐるぐる回っていて状況把握に時間がかかってしまった。が、何とか落ち着いて辺りを見回す。
そこにはクラッカーを持ってニヤニヤしている遊馬崎さんと狩沢さん、後ろの方でため息をついている門田さん、スマートに佇むセルティさん、その横には新羅さん、側の座敷に座って寿司食ってる静雄さんとトムさんと渡草さん、恥ずかしそうにしかし嬉しそうに笑う杏里と帝人、カウンターの向こうでニコヤかに寿司を握るサイモン・・・
「・・・えーっと、皆さんお揃いで」
どんなに考えてもこの状況が理解できず、開口一番、そんなセリフしか出ない俺はやっぱり落ち着けていなかった。
「ま、正臣!」
「え、あ、はい」
「誕生日、おめでと!」
誕生日?
そうか、そういえば日付変わって今日は6/19。言われて思い出すとは何だかまぬけだな俺。
「せっかくの誕生日だし、みんなで祝おうと思ってさ」
「紀田君おめでと〜」
「紀田君おめでとっす!」
照れくさそうに笑いながらそう言った帝人に少なからず感動していると、その背後から、にゅっと出てきてハイっと大きい包みをニヤニヤしながら差し出す遊馬崎さんと狩沢さん。
あれよあれよと渡されたものを怪訝な顔をして見ていると、その後ろからまたにゅっと出てきた臨也さんに腕を掴まれる。
「じゃ、行こうか」
「え、は?」
言われるがままにロシア寿司を出る。
今来たばっかなのに!
前を歩く黒い背中に文句を言えば、彼は振り返って俺の手の中にある大きな包みを開けるように指示する。
言われるがままに中を確認すれば、部屋のカギのようなものと…、
「な、なんでメイド服…?」
所謂コスプレ衣装で、意味がわからず俺は首をかしげる。
途端に目の前の彼はニヤリと笑って―
「ハッピーバースデー正臣くん。今日はたっぷり君に俺の愛をあげるからね」
そのセリフにこれから起こるであろう事を想像して顔が引きつった。
―END―
土下座もの。
これしかも去年書いてて間に合わなかったやつにちょっと付け足しただけっていうね。笑
紀田君ごめん!笑
はっぴーばーすでー!