電波にのって







狭い部屋に1人。電気も付けず携帯を握りしめ連絡を待つ。あの人は『明日の夜連絡するから待ってて』って言った。だから待ってんだ。制服すら着替えずベッドに座っていつでも出られるように、ひたすら。




21時、
22時


ひたすら待つ


23時、
0時



ひたすら、

1時
2時―


ひたすら待ってるけど一向に連絡が来る気配なし。おいおいこっちは明日も学校なんだぞふざけんな。つーかちょっと待て、これは忘れられてるパターンじゃないのか。


待ちきれなくなった俺は、アドレス帳を開く。



おりはら


折原臨也
090-****-****




ピッ




プルルルル
プルルルル
プルルルル
プルルルル

プツ―、



『―ただいま電話に出ることが、できます。』


「できんのかよ」



電話越しに聞こえるふざけた声。それに思わずツッコミ。つーか何だよそのボケは。小学生か。


『あっはは、ナイスツッコミ。って、何怒ってんの?』


何怒ってるだと?こんなに待たせといて何怒ってるって・・・。
みっともなく怒鳴り散らして喚き散らして理不尽な罵倒を浴びせて困らしてやろうか。いや、そんなことしても臨也さんならサラッと笑って交わして終わりだ、ジエンド。

電話の向こうから微かにキーボードを叩く音が聞こえる。まだ仕事中か。電話しながらパソコンって、さすが臨也さんというか、器用すぎ。



『もしもーし?』

「あ?怒ってません。」

『あ?って、怒ってんじゃん。』

「怒ってない!!」

『ほら怒ったー。』



臨也さんの笑い声。
イラつく。イラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつく!!


こっちはずっと待ってたのに、俺の気持ちもしらないでふざけやがって。

ギリッ―
思わず歯ぎしり。



『・・・ごめんって、どーせ待ってたんでしょ俺から連絡くるの。ほんと俺のこと好きだね正臣くん。』


歯ぎしりの音が聞こえたんだろうか、素直に謝ってくる臨也さんが気持ち悪い。

『あ、今気持ち悪いとか思ったろ。刺すよ?』

「刺せるもんなら、」


刺してみろばーか。

そう呟いた声が微かに震えていたことに驚いた。
そんな些細な変化に敏感な電話越しの相手がふっと笑った。



『・・・もう寂しいの?早いね、』

「うるさい」

『まだ1週間じゃない。』

「うるさい」

『なるべく早く帰るからさぁ』

「うるさい」

『正臣くん、』

「うるさい」

『・・・正臣』

「―っ!」

『好きだよ、正臣』



愛してる





さっきまで怒りで頭に血がのぼっていたが、今度は違う意味で血がのぼりそうだ。不覚にも甘い甘い言葉に溺れそうになる自分がいる。それはまるで隣に臨也さんがいて、耳元で囁かれてる感覚。まさに聴覚から犯されていくような、感覚

もうキーボードを叩く音は聞こえてこない。





『あ、もしかして感じちゃった?』

「―っ!!?」

『・・・あれ?冗談だったんだけど、もしかして図星?あ、何ならこのままTELセックスでもす「死ね変態!!」




ピッ―



せっかく繋がった唯一の連絡手段を自ら断ってしまった。俺の馬鹿。

ちょっといい雰囲気だったのに、最後のあれで台無しだ。おかげでいい損ねたじゃないか。


「お、俺だって愛してる!」




狭い部屋。
呟いた声に返事はない。当たり前だけど虚しい。そのまま携帯を放り投げてブラックアウト。





目覚めた次の日の朝。

規則正しい寝息をたてて俺を抱きしめている黒髪の人物に、俺は思わず悲鳴に近い叫び声を上げてしまうのである。













――――――――――


恋人設定。
臨也さんが仕事で何日間か新宿を離れている間の正臣。プチ遠恋的な\(^^)/ここの正臣くんは寂しがりやです。つーかTelセックスってエロいですよね(黙←






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