その3




いつの間にかお互い顔から笑みが消えており、無表情で向き合う姿はある意味幽霊や殺人鬼なんかよりも怖い。
その場が凍りついたような感覚。
何コレ、新手のいじめですか。

その空気を壊したのは、意外にも帝人だった。


「ふっ、その程度で。甘いですね臨也さん」


無表情から一転して笑顔になった帝人。
しかし目が笑ってない。しかも笑顔が黒い。

「…どういうことかな、帝人くん。」

「俺は正臣の幼馴染ですよ?小さいときはほぼ毎日一緒にいたんです。体操着くらい痛くも痒くもないです」

「…ふーん」

「そうだなー、よく一緒にお泊りとかしたよね?寝顔可愛かったなぁ。あ、あとはお風呂とかもよく一緒に「あああああああああ!!!黙ろうか!ね!帝人くん!!ていうか黙って!!!」

真っ黒笑顔で大暴走し始めた幼馴染を全力で止める。こいつ、何を口走る気だ。よりにもよってこのドSに!!
しかし、時すでに遅し。


「今のは聞き捨てならないなぁ。所詮は昔話だろ?俺は今の正臣くんのことなら何でも知ってるんだよ。たとえばパジャマの柄とか使ってる歯ブラシは固めだとか」

「ちょ、お前なんで知ってるんだよ!!しかも歯ブラシとかマニアック!!」

「気持ち悪いですね臨也さん。それもどうせ不法侵入とかで仕入れた情報でしょう?俺は正臣の幼馴染だから不法侵入なんてしなくても、行きたいときに正臣が出迎えてくれるんですよ?」

「別に合鍵持ってるからいいよ。」

「俺だって持ってます。」


何よ合鍵って、俺渡したことないよ?



「帝人くん、君とはゆっくり話したいな。放課後とかに。」

「奇遇ですね、臨也さん。俺もです。」



目の前で理解しがたい言葉を吐き続ける二人の会話を呆然と聞き続ける俺。
つーか、俺のプライバシーとか皆無じゃない?


「ま、とりあえずわかってることは、正臣君は帝人くんなんかより俺のほうが好きだってことだよね?」

「は?何言っちゃってんですか臨也さん。正臣は俺のことが大好きなんですよ、ね?正臣?」



「…つーか、2人とも、持ってる合鍵返せえぇえええぇええ!!!」



俺の悲痛な雄叫びは全教室に響き渡っており、この後うるさいと先生に怒られてしまうのであった。

何で俺だけ!!?




→NEXTおまけ^^




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